自分で行う認知行動療法 ①思考を変える


前回は認知行動療法とはなにか、大まかな全体像を解説しました。

前記事:認知行動療法とは?自動思考、スキーマ、認知の歪みって?

人間は自身のスキーマー(信念)によって時に現実的でない自動思考をしてしまうことがあります。それを「認知の歪み」といいました。認知が歪むと身体的、精神的に悪影響がさらに現実的でない自動思考がうまれる悪循環に陥ってしまいます。今回は自分の思考の歪みを客観的にあらいだし、今回は現実的な思考に転換するためのトレーニング方法を紹介します。

認知の歪みにはパターンがある

前回解説したように、人間は外部から刺激を認知というフィルターを通して頭で処理し、感情が生まれ、行動をします。認知には、刺激を受けてとっさに浮かぶ「自動思考」があります。自動思考は人間の心の深層にあるスキーマー(信念)によって形作られます。

スキーマーは人生のそれまでの体験などによって構成されており簡単に変えることは出来ません。人間は誰しも自己のスキーマーに縛られつつ外部の刺激に対して毎回パターン化された自動思考を生み出しています。

簡単な例をあげると「仕事に遅刻をする」という同僚の行為を見て、とっさに「あいつは不真面目な人だ」(自動思考)と怒りの反応する人には「社会人は常に規則正しい生活をしなければならない」というスキーマーがあるかもしれません。このスキーマーを持つ人が寝癖の直っていない別の同僚を見た時やはり「不真面目だ」という怒りの反応をするでしょう。

そのような人を実生活で目にすることは珍しく無い為、毎回この認知のパターンを持つ人は日常的に怒りの感情に支配されている状態にあります。真面目なことは決して悪いことではありませんが、度が過ぎれば精神的に疲労してしまいます。このような現実に不合理な認知の歪みのパターンを10個紹介します。

①白黒的思考

物事を白か黒、0か100で判断してしまうことです。「遅刻をする人は社会人失格だ」または「一つでも誤字があったら会議の資料は台無しだ」という考えが当てはまります。

②心の読みすぎ

「上司にあいさつをしたのに、返事がそっけなかった。上司は無能な自分を軽んじているに違いない」と際限なく人の心の中を推測してしまうパターンです。

③べき思考

「部下は上司の前で優秀であるべき」「社会人はつねに規則正しい生活をおくるべき」とあらゆる出来事を自分の価値観に当てはめてしまうパターンです。

④部分的焦点づけ

物事の悪い部分ばかりに目がつき、他の良い部分が見えなくなってしまうことです。例えば上司から挨拶をされなかった日の夜、他に良い体験をしたのにも関わらず今日は最悪な1日だったと思い込んでしまうことです。

⑤過度の一般化

「上司が返事をしてくれなかった、これからもずっと相手にしてくれないに違いない」などたった一度の体験なのに、あたかもそれがいつでも起ると思い込んでしまうパターン

⑥自己で実現してしまう予言

自分で悲観的な予想をして自分の行動を制限してしまい、本当に失敗すること「上司にあいさつされなかった。きっと自分を低い評価をしているに違いない」と思い込むことによって自らコミュニケーションすることを避けて、実際に評価を下げてしまうのです。

⑦自己関連付け

何か良くないことが起こった時、自分の責任がない場合でも自分の責任にしてしまうこと。上司から望んだような返事を得られなかったことは、自分が無能なせいだと決めつけてしまうことです。本当はたまたま昨夜寝不足であいさつに気が付かなかったかもしれないにもかかわらずです。

⑧結論の飛躍

「上司があいさつしなかった」→「自分が無能であるに違いない」等ささいなことで、極端な結論をだしてしまうパターンです

⑨誇大視と過小評価

自分の少しの失敗が人生を左右することのように大きく考えたり、逆に他人のささいな成功を大きくとらえて欠点に全く目を向けないといったようなことです。

⑩感情的きめつけ

まさに、自分の感情を真実の証明であるようにとらえてしまうことです。例えば「明日も上司に挨拶されない不安を感じている。だから明日も絶対無視される!」と、決めつけてしまいます。

コラム法

あなたが辛いと感じる時の認知のパターンは本当に現実的なものでしょうか。上記の10パターンの認知の歪みによって引き起こされているものならば、どのパターンに当てはまるのか見つけ出し、本当にそうであるか反証することにより現実的な思考と行動を探し出す必要があります。

その手法の一つにコラム法があります。自分の体験した状況や感じた気分等を紙に書き出し、より現実的で適応的な考えを見つけ出す方法です。下記の図のようにそれぞれの欄に「状況」「気分」「自動思考」「認知のゆがみ」「反証」「気分の変化」と見出しを立てその内容を書き込みます。準備するものはノートと筆記用具のみです。

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①状況:あなたが辛い・不快と感じた状況を書き込みます
②気分:その時の気分をパーセンテージで書き込みます
③自動思考:とっさに思い浮かんだ自動思考を書き込みます
④認知のゆがみ:先に上げた10パターンのうちどれ当てはまるか書き出してみましょう
⑤反証:その歪みに対してより客観的な事実で反証してみください
⑥適応的思考:より現実的な考え方を書き出してみてください
⑦気分の変化⑥が出来た時の気分の変化を書き込みます。

完璧な答えを導き出そうとせず、頭の体操程度にリラックスして取り組んでみてください。徐々に慣れてくれば、様々な反証や適応的思考が浮かんでくるはずです。

まとめ

人それぞれに考え方には癖があります。その考え方はある程度パターン化されているのです。ある不快な状況に遭遇したとき、自分がどんな思考パターンをしているのか書き出すことで、自分の普段の考え方を客観的な視点でみることができます。それによって別の現実的で楽な捉え方について考えることができるのです。

今回紹介したコラム法を続けることでその力が身につけられれば幸いです。次回はコラム法によって浮かんだ適応的思考に基づき、実際に適応的な行動を行う為のトレーニング方法をご紹介します。


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