ペットロスとは、字義通りに訳すると「ペットを失うこと」です。しかし、「あの人、どうもペットロスらしいよ」という時のペットロスには、ペットが死んで、「ひどく落ち込んでいる」という深い悲しみの気分が含まれています。
目次
ペットを失うことの負担は大きい
最近、ペットを飼う家庭が増えてきています。それも愛玩動物というより伴侶動物(アニマル・コンパニオン)として飼っています。つまり、ペットは生活を共にする家族同然の存在になっています。
それだけに、ペットと死別した時の悲しみも深く、大きなストレスとなり、心身に変調をきたす例も急増しています。
ペットロス症候群という状態になることも
ペットとの離別や死別による悲しみのストレスが原因となってあらわれる様々な症状が「ペットロス症候群」と呼ばれる症状です。会社に出かけ、パソコンを打っているときに、ペットのことを思いだすと、ツーッと涙が出てきてしまいます。
そうなると、集中力もなくなり、仕事に手がつかなくなります。死別ではなく、行方不明になって家に帰ってこないペットとの離別の場合、「もっと注意していれば・・・」という自責の念に苛まれます。
このような全体的な気分の落ち込みで、やる気が喪失し、日常の仕事にも差し障りがでた状態が、「ペットロス症候群」です。ペットロス症候群では、上記のような精神的症状と同時に身体的にも、だるい、眠れない、食欲不振といった症状があらわれてきます。
深刻になるとうつ病に
ペットロス症候群の気分の落ち込みの基底にあるのは、「飼っていた」というよりも「暮らしていた」という感覚です。ですから、死別したり、離別すると、家族を失ったように気分が落ち込んで、悲しみの感情に支配され、うつ病に似た症状があらわれるようになります。
しかし、だからといって、うつ病と決め込むのは間違いです。家族の伴侶ともなったペットを失えば、誰だって悲しみにくれ、気分が落ち込みますから、これらの症状は、正常な反応というべきでしょう。
ただし、このような症状が数か月続き、改善の方法が分からないまま、日常生活に支障をきたすようになれば、治療が必要になります。
「ペットロス症候群」の程度は人それぞれ
ペットロス症候群は、正確に定義された診断名(病名)ではなく、場合によってはうつ病に移行するリスクを内包した症状全般の俗称です。実際、一口にペットロス症候群といっても、人によって様々です。
そのまま、時間が経つうちに回復する人もいれば、ペットロス対策のカウンセリングを受けて立ち直る人もいれば、立ち直りの手がかりがないままうつ病に移行する人もいます。
もし、気分が落ち込んでいる状態が1ヶ月以上続くようなら、心療内科か精神科で受診されることをお勧めします。
「受けるショックの大きさ」は必ずしも「愛情の大きさ」と比例しない
ペットを失ったときのショックは、必ずしもペットに対する愛情と比例するわけではありません。むしろ、ショックに対するその人の耐性に比例すると言っていいでしょう。
耐性と言うのはその人の性格や環境によって左右されます。早く立ち直ったからといって、愛情が薄かったというわけでないのですから、ペットが与えてくれた喜びに恩返しする気になって、、早く立ち直るように工夫して欲しいものです。
ペットロスでの休みについて
ペットロス症候群は時に仕事を休むほどの負担になる
ペットロスに落ち込んだ気持ちというのは、ペットと共に暮らしていたという実感のない人にはなかなか理解できないかもしれません。悲しくて、やりきれなくて、とても仕事する気になれないほどです。
無理して会社に出かけても、集中力がとだえ、仕事が手につきません。ですから、肉親の死別に忌引きがあるように、ペットの死別の際にも忌引きを適用してもらいたいと思う人があっても、不思議はありません。
有休を使うのに理由は必要ない
ペットロスの忌引き休暇を実施している会社があります。ペット用品を扱っているユニ・チャームは、ペット忌引きの特別休暇を導入しています。
3日間のペット忌引きだけでなく、ペットと過ごすための有給扱いの「ペット休暇」(2日間)を導入しているのが、アイペット損害保険です。しかし、これはペット業界だからこそ導入している例外的な休暇で、一般企業では、多分、ペット忌引きはないのではないかと推測されます。
一般企業に勤めている人たちの多くは、有給休暇をとっているようです。有給休暇を使うのには、特別の理由は必要とされませんから、これを利用して忌引き休暇にあてることに問題はありません。
ただし、会社には時季変更権というのがあります。これは、決算期などの繁忙期に有休をとられたら業務が滞るという時に適用される会社の権利で、有給の日をずらすことができるのです。こうなると、繁忙期にペットがなくならないことを祈るほかありません。
欠勤だと査定に響いたりする
有給を消化してしまっている場合、欠勤すると、査定に響きます。欠勤は本来働くべき時間を自分の諸事情で働かなかったということですから、これは仕方がありません。
このような不利益をこうむらないために、ペットと暮らしている人は、いつの日か必ず訪れる日に備えて、有給をためておいて、その日に備えるようにしておくべきでしょう。
ペットロスで休むことを快く思わない人も
あるネットサイトの編集部がペットロスと忌引きに関して行ったアンケート調査があります。それによると、「ペットの死を理由に学校や仕事を休んだことのある人」は、11.1%、「ペットの死を理由に学校や仕事や済むことはあり得ない」と考える人が、23.8%となっています。
ペットロスの悲しみを理解する人は増えていても、忌引きに対してはためらう人が多く、厳しい見方をする人がかなりいるというのが現実のようです。
ペットロス症候群で病欠扱いは難しい
では、病欠ということで休むということはどうでしょうか。偽って休むことになるのでお勧めできませんし、現実問題として不可能です。というのも、病欠の場合は、多くの企業では医師の診断書を提出しなければなりません。
ところが、先にも述べたようにペットロス症候群は正式な病目ではありませんから、病欠扱いにはなりにくいからです。
うつ病で休職になることもある
ただし、ペットロス症候群から症状が悪化し、うつ病と診断されたら、れっきとした病気ですから、病欠(休職)の対象となります。しかし、このような病欠は、当の本人すら望みたくない病欠です。
このような病欠状態をさけるためにも、自分で「おかしい」と自覚できるくらいに気分が落ち込み、長期間続くようなら早めに治療に取り組むことをお勧めします。
ペットロスを癒す
ペットロスを癒す方法は、いろいろあります。ペット供養を行って、ペットの死を受け入れて、悲しみにケリをつける方法もありますし、ペットの記念アルバムを作って、思い出を整理する方法もあります。
また、新しいペットと暮らし始めるという選択肢もアリです。人それぞれの方法がありますが、最初のステップは、ペットの死を受け入れるということです。
休むなら有休をとったほうがいい
ペットロスを理由に仕事を休むというのは、正統な休暇とは認められていないというのが現状です。したがって、有給休暇を使ってペット忌引きにあてるというのが、許された対応策ということになります。
ペットと暮らしている人は、いつか必ず訪れる日に備えた有給休暇を用意しておきましょう。