障害年金は、病気やけがによって、生活や仕事に何らかの支障をきたした人たちが受け取る年金です。障害の程度によって、1級から3級までの等級があり、受け取る年金額も異なってきます。
目次
障害年金とは
障害年金とは、障害で仕事、生活に支障が出るようになった時に受け取れる年金です。年金といえば、一定の年齢に達したお年寄りが貰うものと思っている方が多いようですが、障害年金は、障害で仕事や生活に支障をきたすようになった人なら、現役の世代でも受け取ることができる年金です。
障害年金の種類
障害年金には、「障害基礎年金」、「障害厚生年金」、「障害共済年金」の三つの種類があります。障害基礎年金は、病気やけがで初めて医師の診断を受けた時(初診日)に国民年金に加入していた場合に支払われます。障害厚生年金は同じように厚生年金に加入していた場合に支払われます。障害共済年金は同じように公務員などが加入する共済組合の組合員であった場合に支払われます。
なお、障害年金に該当する障害よりも軽い障害が残った場合には、一時金として「障害手当金」を受け取ることができます。
それぞれの受給対象は?
障害年金には三つの種類がありますが、等級や条件によって受給対象が異なります。
障害基礎年金は等級が1級、2級が対象で、国民年金に加入している場合支給されます。日本在住の20歳~60歳の人は、皆、国民年金に加入しています。ですので、例え保険料を払っていなくても全ての人が対象になります。自営業や主婦、学生など、国民年金のみ加入している場合は、障害基礎年金のみ支給されます。また、子供に対する加給年金もあります。
障害厚生年金はサラリーマンなどが加入する厚生年金に加入している期間に初診日があれば、支給されます。等級が3級の場合、障害厚生年金のみ支給されます。
障害者手帳とは別物
一定の要件を満たした障害者に対しては、「障害者手帳」というものが交付されます。障害者手帳を取得すると、医療費の負担軽減のほかに車いすや補聴器などの補装具の助成など、さまざまな医療サービスを受けることができます。
しかし、これは障害年金とは別の制度です。障害者手帳をもとにした医療サービスと障害年金を混同している方もいますが、障害者手帳は地方公共団が交付するもの、障害年金は国の制度です。
さまざまな心身の障害状態が対象
心身の障害によって生活や仕事に支障をきたした人が障害年金の受給対象者ですが、ほとんどの精神的、身体的傷病が対象となっています。
但し、以下の傷病は障害認定基準の対象外です。
・精神の障害⇒人格障害(原則)、神経症(原則)
・神経系統の障害⇒疼痛(原則)
・呼吸器疾患による障害⇒加療による胸郭変形
・肝疾患による障害⇒慢性肝疾患(原則)
・高血圧症による障害⇒単なる高血圧だけ
なお、神経症や人格障害は原則認定対象外となっていますが、「精神病の病態を示しているものについては」認定対象となります。
おおよそ200万人がもらっている
厚労省の障害年金受給者実態調査(平成26年)によると、障害年金の受給者数は194万3000人です。一方、平成27年の全国の障害者は、身体障害者393万7000人、知的障害者74万1000人、精神障害者320万1000人、合わせておよそ788万人です。障害者の4分の1の人が障害年金の受給者ということになります。
遡及請求
障害年金の対象となる傷病で初めて医師の診察を受けた日を「初診日」といいます。そして、初診日から1年6か月を経過したあとも障害状態であることを認定された日を「障害認定日」と言います。障害年金の支給は、この日を基準に実行されます。
ところが様々な理由で、年金の請求をしていないというケースがあります。こうしたケースでは、5年までさかのぼって年金を請求できるというのが、遡及請求の制度です。
障害年金の等級
障害の程度による区分分け
障害年金は、障害の程度によって、1級、2級、3級に区分され、支給額が決められています。1級が生活への支障が大きい障害で、それよりも軽い状態が2級、3級(障害厚生年金のみ)です。このほかに、障害手当金という一時金が、3級より軽い障害で支払われます。
障害年金1級
身の周りのことは辛うじてできるもののそれ以上のことは他人の介助を必要とするような障害です。一般的には、活動の範囲が、病院ではベッド周辺、家庭では室内に限られるレベルのかなり重い障害です。
法律では具体的に以下のような基準が定められています。
・両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの
・両上肢の機能に著しい障害を有するもの
・両上肢のすべての指を欠くもの
・両上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの
・両下肢の機能に著しい障害を有するもの
・両下肢を足関節以上で欠くもの
・体幹の機能に座っていることができない程度又は立ち上がることができない程度の障害を有するもの
・前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする症状が前各号と同程度以上と認められる状態であって日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
・精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
・身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であって、その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの
障害年金2級
必ずしも他人の介助は必要ないけれど、日常生活が極めて困難で、 一般的に活動の範囲が、病院では病棟内、家庭では家屋内に限られる障害です。
法律では具体的に以下のような基準が定められています。
・両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの
・平衡機能に著しい障害を有するもの
・そしゃくの機能を欠くもの
・音声又は言語機能に著しい障害を有するもの
・両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠くもの
・両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の機能に著しい障害を有するもの
・1上肢の機能に著しい障害を有するもの
・1上肢のすべての指を欠くもの
・1上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの
・両下肢のすべての指を欠くもの
・1下肢の機能に著しい障害を有するもの
・1下肢を足関節以上で欠くもの
・体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの
・前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする症状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は、日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
・精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
・身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であって、その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの
障害年金3級
このクラスは、障害厚生年金のみに設けられているものです。傷病が治癒していなくても、治癒していても労働に制限が設けられるレベルの障害です。
法律では具体的に以下のような基準が定められています。
・両耳の聴力が、40センチメートル以上では通常の話声を解することができない程度に減じたもの
・そしゃく又は言語の機能に相当程度の障害を残すもの
・脊柱の機能に著しい障害を残すもの
・1上肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの
・1下肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの
・長管状骨(上腕、前腕、大腿、下腿の管状の骨)に疑関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
・1上肢のおや指及びひとさし指を失ったもの又はおや指若しくはひとさし指を併せ、1上肢の3指以上を失ったもの
・おや指及びひとさし指を併せ1上肢の4指の用を廃したもの
・1下肢をリスフラン関節(足趾の一番付け根、土踏まずの前方)以上で失ったもの
・両下肢の十趾の用を廃したもの
・前各号に掲げるもののほか、身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
・精神又は神経系統に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
・障害が治らないで、身体の機能又は精神若しくは神経系統に労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するものであって、厚生大臣が定めるもの。
障害手当金
障害厚生年金では、障害等級の3級よりも軽い障害が残った場合に、一時金として障害手当金が支給されます。
法律では具体的に以下のような基準が定められています。
・1眼の視力が0.1以下に減じたもの
・両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
・両眼による視野が2分の1以上欠損したもの又は両眼の視野が10度以内のもの
・両眼の調節機能及び輻輳(ふくそう)機能に著しい障害を残すもの
・1耳の聴力が、耳殻に接しなければ大声による話を解することができない程度に減じたもの
・そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの
・鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
・脊柱の機能に障害を残すもの
・1上肢の3大関節のうち、2関節に著しい機能障害を残すもの
・1下肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの
・1下肢を3センチメートル以上短縮したもの
・長管状骨(上腕、前腕、大腿、下腿の管状の骨)に著しい転移変形を残すもの
・1上肢の2指以上を失ったもの
・1上肢のひとさし指を失ったもの
・上肢の3指以上の用を廃したもの
・ひとさし指を併せ1上肢の2指の用を廃したもの
・1上肢のおや指の用を廃したもの
・1下肢の第1趾又は他の4趾以上を失ったもの
・1下肢の5趾の用を廃したもの
・前各号に掲げるもののほか、身体の機能に、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
・精神又は神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
障害年金の金額
障害基礎年金は定額
国民年金だけに加入している人に支払われる障害基礎年金は定額(年額)で、計算式は下記のようになっています(平成29年度)。
障害1級の人は、2級の人より25%増しです。
【2級】 779,300円+子の加算
<子の加算>
第1子・第2子 各 224,300円
第3子以降 各 74,800円)
障害厚生年金は収入等によって変わる
障害厚生年金は、厚生年金に加入していた期間の長さと納めた保険料(給与の額)などでその人毎に違ってきます。下記に計算式を示しますが、定額の障害基礎年金に報酬比例の年金額と配偶者のある場合はその加算額が上積みされて支払われます。
おおよそのめどは、障害基礎年金のざっと2倍程度です。
【2級】報酬比例の年金額+障害基礎年金2級(+配偶者がある場合は更に加算額)
【3級】報酬比例の年金額 (最低保障額 585,100円)
<配偶者の加算額:224,500円>
障害手当金は障害厚生年金3級の2年間分
障害手当金は、3級に満たない障害が5年以内に治った後に請求できる一時金です。
計算式は、下記のようになっています。
平均支給額はどれくらい?
ざっと計算式を見ても、実際どれくらいの額が自分に支給されるかわかりにくいものです。
人それぞれ支給額は異なりますが、ざっと月額の平均としては
2級:障害基礎年金 6~7万円程度 + (障害厚生年金 6万円程度)
3級:障害厚生年金 6万円程度
と言われています。
必要であればもらったほうがいい
障害年金は、介助の費用や治療費などを支援するための制度です。ただし、手続きが面倒なこともあり、請求できる状態なのに請求されていないケースもあります。
インターネットなどで仕組みを勉強し、また社会保険労務士などの専門家に相談し、正当に請求できるものは請求し、生活の質を少しでも高めるようにしてほしいものです。