障害年金を受け取るために避けて通れないのが初診日です。この日が特定できなければ、障害年金を受け取ることが難しくなってきます。では、初診日がわからない場合はどうすればいいのでしょうか。
初診日とは
障害に関して最初に診察を受けた日
初診日とは、その障害に関して医師から最初に診察を受けた日のことです。障害年金を請求する上で、初診日とは年月までで大丈夫というわけではなく、日付まで特定する必要があります。
そうして、初診日を基準に、その時に加入していた制度(国民年金または厚生年金)と納付要件を満たしていたかどうかによって、受け取る障害年金の額が決まります。
障害、および障害の原因である疾患等の診察が初診日に
初診日の特定というのは、結構厄介なことです。初診日から原則として1年6か月後が障害認定日ですから、この間に初診日に関わる書類が見つからなくなるというケースも珍しくありません。
また、障害年金の対象となる傷病も、治療の過程で診断名が変わるということもあります。たとえば、うつ病と診断され、後に発達障害と診断されるようなケースです。このようなケースでは、うつ病またはそれと関連する症状での最初の診察日が通常は初診日となります。
医師が変わっても最初の医師の診察の日が初診日
治療の過程で、病院を変えたり、当然、担当の医師も変わったりすることが珍しくありません。そうなった場合、最初にかかった医師Aと障害年金を申請するときの医師Bの二人が存在することになります。
このケースでは、障害年金に該当する傷病を最初に診察した医師の診察日が初診日となります。
途中で治っていたら、再発して診断した日が初診日
うつ病で治療を続けていて回復したものの、あとで再発したというのはよくあることです。このように同一傷病で、再度発症し医師の診療を受けたケースでは、再発後に診察を受けた日が初診日となります。
知的障害と発達障害の初診日
先天性の知的障害(精神遅滞)は、出生日が初診日です。アスペルガー症候群や高機能自閉症などの発達障害は、自覚症状があって初めて診療を受けた日が初診日です。
その他の初診日について
健康診断の日は一般的には初診日となりえませんが、健康診断によって異常が発見され、療養に関する指示を受けた場合は、健康診断日が初診日となります。
じん肺症(じん肺結核)については、じん肺と診断された日が初診日です。つまり、じん肺の治療に取り組んだ最初の日ではなく、じん肺と病名が決まった日が初診日となります。
誤診の場合は、誤診を受けた日が初診日になります。
初診日が影響を与えることとは
障害年金は、最初に初診日ありき、です。初診日が特定されないと、障害年金を受け取ることが難しくなりますが、後述するように初診日が特定できなくても初診日に代替できる手立ても用意されています。
初診日を特定できなければ申請は通らない
障害年金を受け取るためには、①初診日要件、②保険料納付要件、③障害認定日要件、④障害等級該当要件の4つをクリアしなければなりません。
そして、この要件のすべてを満たすには、初診日の特定が不可欠です。
保険料納付要件
保険料納付要件というのは、初診日に国民年金か厚生年金(共済年金を含む)に入っていて、一定の保険料を納付していたという要件です。
具体的には、初診日において以下のいずれかに該当する人に障害年金が支払われます。
2)厚生年金に加入していた人(会社員・会社役員等で厚生年金保険料を給与天引きされている人)
3)「20歳前」だった人(この場合、保険料納付要件は不要です)
4)過去に国民年金に加入していた人で、初診日に国内居住の60歳以上65歳未満の人
初診日に入っていた年金の障害年金がもらえる
障害年金の額は、初診日に入っていた年金によって決まります。現在、日本には、国民年金と厚生年金(共済年金を含む)の二本立てで運営されています。
主に自営業の人たちが加入している国民年金に加入していれば、障害基礎年金が支払われ、サラリーマンや公務員等の厚生年金に加入していれば、障害厚生年金が支払われます。
「保険料納付要件」とは
保険料納付要件とは、保険料を三分の一以上の未納期間がない、過去一年間に未納期間がない、などといった障害年金をもらうための納付要件です。つまり、ある一定の期間年金を納付していることが受給するための条件となっています。
「障害認定日要件」とは
原則として、初診日から1年6か月後が「障害認定日」です。障害認定日とは、障害年金の請求資格が発生する日です。障害認定日を超えてからでないと、障害年金は請求できないということです。
そうして、ここでも初診日が大きな意味を持ってきます。初診日が確定されないことには、障害認定日も確定できないのですから。
初診日を特定するためには?
診断書等による証明
障害年金に対象となる傷病で医療機関の治療を受けると、医療機関には診断録(カルテ)が保存されています。初診日が記入されたカルテが、初診日を特定するための書類です。病院にたのめば、初診日に関わる書類を発行してくれます。
カルテの代替
カルテによる証明ができないときは、他の書類等により初診日を証明できることがあります。このカルテの代わりになるもとのとして、厚生労働省では初診日を証明できる可能性があるものとして下記を例示しています。
・事業所の健康診断の記録
・発行日や診療科等が確認できる診察券
・健康保険の給付記録
・身体障害者手帳作成時の診断書
・交通事故証明書
・入院記録及び診察受付簿
・労災の事故証明書
・お薬手帳(発行日(受診日)や診療科等が確認できるもの)
・糖尿病手帳(発行日(受診日)や診療科等が確認できるもの)
・領収書(発行日(受診日)や診療科等が確認できるもの)
第三者による証明書類+参考資料
これまでは第三者による初診日証明は、初診日が20歳前の障害基礎年金の場合にしか認められませんでしたが、改正により20歳以降においても、第三者証明を合理的に推定する他の資料と合わせて提出されたときに限り認めることができるようになりました。
第三者とは隣人、友人、民生委員などのことで、当時の状況などを第三者証明の必要書類に記入して作成してもらうことになります。そして作成した第三者証明の書類を初診日について参考になる資料と一緒に提出すれば初診日の特定、認定がされることがあります。
様々な資料、傷病を踏まえて合理的に判断できる場合
平成27年に厚労省は初診日認定に関わる緩和措置を講じました。その資料の中に、
<初診日の確認に当たっては、初診時の医証がない場合であっても、2番目以降の受診医療機関の医証などの提出された様々な資料や、傷病の性質に関する医学的判断等を総合的に勘案して、本人申立てによる初診日が正しいと合理的に判断できる場合は、本人申立ての初診日を認めることができる取り扱いとする。>
としています。
要は、初診日について合理的に証明できる書類や証言があれば、認定に持ち込むことが可能であるということです。
すぐにわからないからといってあきらめる必要はない
初診日認定を記載したカルテがあれば、障害年金の請求もスムーズにいくのですが、傷病の種類や治療の経歴などから、初診日がわからないというケースが少なくありません。しかし、上に述べたようにそれに換わる手立ては残されています。
手続きは多少面倒になりますが、ケースワーカーや社会労務士などの専門家に相談し、諦めずに取り組んでください。