PMSは、生理が始まる3日から10日前の高温期にあらわれてくる身体と精神の不調の総称です。だるさ、頭痛、便秘、イライラなど様々な症状があらわれてきます。
個人差はあるものの女性なら誰でも経験する辛い症状ですが、医者にかかるまでもなく、自分流の対策で症状を軽減・緩和する手立てがあります。PMSよりも症状が重く、精神的不調が強く出るのがPMDDです。
今回は、PMSを中心に辛い時期を乗り切る方法をまとめてみました。
そもそもPMS・PMDDとは
生理前にイライラなどの症状が起きるのがPMS
PMSは生理前のホルモンバランスの乱れなどによって、イライラ、情緒不安定、憂うつ、頭痛、腹痛などの症状が現れる疾患です。
典型的なPMSでは、生理の約1週間前から下腹部痛や頭痛、イライラ、憂うつ、日中の眠気、夜の不眠などの症状が始まり、生理の開始とともに軽くなっていきます。
症状の現れ方や強さは人それぞれですが、女性の発症率は9割ともいわれています。
より精神症状が強いのがPMDD
PMDDとPMSは、どちらも生理の周期に繰り返し現れるという点では同じですが、症状が異なります。典型的なPMSでは、精神的な不調は、軽症にとどまり、生理が終われば治まってきます。
これに対して、PMDDは、生理前になると攻撃的になり、場合によっては自殺願望を抱いたり、自傷行為にはしるなど、精神症状が強くあらわれてきます。また、PMSが生理の直前から始まるのに対して、生理の1週間前、時には2週間前から始まります。PMSと比べると症状の出現期間が長いのもPMDDの特徴です。
医療機関では薬物療法、精神療法がおこなわれる
PMSの症状は、医者にかかるまでもなく、生理が終わればおさまりますが、PMDDの場合は、専門の医療機関にかかることが必要になってきます。
PMDDの治療を行うのは精神科ですが、治療はセロトニンの減少を抑える抗うつ薬による薬物量が中心です。毎月、生理の始まる2週間前から生理が始まって症状が出なくなる時期まで服薬します。
完治までの期間は、個人差がありますが、薬で症状を完全に抑えた状態を最低1年は続けるのが望ましいとされています。
女性ホルモンが関与
PMSの原因ははっきりとは解明されていませんが、女性ホルモンが関与しているのではないかと言われています。女性ホルモンには、主に卵胞から分泌される「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と黄体から分泌される「プロゲステロン(黄体ホルモン)」があります。
エストロゲンは、生理終了後の卵胞期に多く分泌され、排卵期を経た黄体期にはプロゲステロンが多く分泌されます。生理前二週間は、プロゲステロンの最盛期にあたります。PMSはこのプロゲステロンが関与していると考えられています。
ホルモンの影響で様々な症状があらわれる
黄体期に分泌される女性ホルモンが、PMSの様々な症状を誘発します。
ホルモンの働きで水分をカラダから排出しにくくなってしまうと、むくみの原因になりますし、ホルモンの働きで脳内の「セロトニン」という物質が低下すると、うつ症状やネガティブ思考など気持ちが不安定になります。
日々のストレス軽減などで軽減、緩和できる
注意しなければならないのは、ストレスがたまると、PMSの症状が重くなることです。従って、ストレスを解消する様々な方法が、そのままPMSを軽減、緩和させる方法の一つとなります。
このほか、食生活の改善や適度の運動もPMSを緩和するのに効果があります。以下、日常生活でできるPMSを軽減し、緩和する方法を紹介します。
PMS・PMDDを軽減、緩和する方法
1.運動をする
運動をして汗を流すとモヤモヤも汗と一緒に洗い流されたようで、すっきりとした気分になるものです。運動は、無酸素運動よりも長くゆるめの有酸素運動の方が効果的です。
有酸素運動とは、酸素を多く取り入れ、その取り入れた酸素で体内の脂肪を燃焼させる運動をさします。エアロビクス、エアロバイク、ウォーキング、ゆっくりした水泳などは有酸素運動です。
ちなみに、無酸素運動とは、基礎代謝を増やす運動で、筋力トレーニング、短距離走などをさします。ただし、有酸素運動でもあまりに長時間やると負担になるので、ほどほどにしておくようにしましょう。
2.禁煙
タバコをすっている人は、PMSの期間中は、本数が増えるはずです。喫煙は、ホルモンのバランスを乱す要因の一つです。
PMSの症状が治まったところで、思い切って禁煙に挑戦してみませんか。次のPMSの時期までに禁煙が達成できたら、症状も以前より軽くなっているはずです。
3.節酒
PMSにお酒は厳禁だとされています。というのは、この時期は女性ホルモン(エストロゲン)が増幅する時期です。
エストロゲンには肝臓のアルコール分解能力を低下させてしまう働きがありますから、普段より二日酔いや悪酔いしがちです。 とはいえ、お酒好きの人にとっては、全くお酒なしで過ごすというのも辛く、そのことがストレスになることもあります。
女性のアルコールの目安は一日平均20グラムです。これより少ない量に抑えて、豆腐やトマトなどアルコールの分解を助ける食べ物をとりながら、ゆっくり飲むようにしましょう。
4.旅行等で行ったことのないところに行ってみる
人間関係に疲れたり、嫌なことが続いたりすると、「どこか遠くへ行きたい」という気持ちが湧いてきます。旅行は、疲れた心を癒してくれる効果があります。しかし、仕事を持っていると、なかなか泊りがけの旅に出るのはままなりません。
そういった人は日帰り旅行をおすすめします。日帰りでも十分に癒しの効果はあるものです。土日の連休の一日を日帰りで楽しめる好みのスポットをさがし、電車とバスを乗り継いで出かけてみませんか。
そして、残りの一日はゆっくりと体を休めて、週明けの仕事備えましょう。
5.バランスの良い食事
生理前は、血糖値が激しく上下しがちです。血糖値が下がると食欲が異常に増進します。
この時期の食事で心がけなければならないのは、血糖値が急上昇しやすい食事を避け、血糖値を緩やかに上昇させる食事をとることです。
以下のようなポイントを押さえておきましょう。
・穀物や豆類、イモ類は、血糖値の上昇が緩やか。
・食間のアーモンドなどは、血糖値の低下を防ぐ。
・カフェインやアルコールは、摂り過ぎないようにする。
・ビタミンB6やカルシウム、カツオやレバー、海藻類などに含まれるマグネシウムを積極的に摂る。
・便秘の症状には、大豆やこんにゃくなどの水溶性植物繊維を摂る。
・腸のぜん動運動を促す大豆やごぼう、きのこなどの不溶性食物繊維を摂る。
・ただし、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランスよく摂ることが大切。
・腸内細菌を整える食品(ヨーグルトやオリゴ糖)をとる。
6.規則正しいしっかりとした睡眠をとる
PMSの症状の中に、昼間の抗いがたい眠気と夜の不眠があります。昼間の眠気対策として、30分でもいいから昼寝することをお勧めします。
一方、夜の不眠対策としては、入浴(後述)のほか、以下のようなぐっすり眠るための下準備をお勧めします。
・ハーブティーやアロマなどでリラックスする。
・寝る2~3時間前はなにも食べない。
・枕や布団は自分に合ったもの、室温に合わせて変える。
・寝る前にスマホやTVを見ない、パソコンをしない。
7.ゆっくりと入浴する
暖かいお風呂に体を沈めると、それだけで気持ちがほぐれて、リラックスした気分になります。
これは、温熱効果(体が温まること)、静水圧作用(水の圧力で手足にたまった血液が押し戻されて血液やリンパの流れがよくなる)、浮力効果(浮力が働いて体重を支えていた筋肉や関節をやすませる)によるものです。
また、入浴すると深部体温(体の中心部の体温)が高くなりますが、その後速やかに体温が下がっていくために眠くなってきます。
ですから、まだまだ体温が下がり始めていない入浴直後に寝床に入ってしまうと逆効果で、返って眠れなくなってしまいます。
汗が引き、体のほてりが収まった頃合いに布団にはいるのがベストタイミングです。時間にして、風呂上がりの1時間後、できれば2時間はあけたほうがいいでしょう。
8.物事の考え方を変えてみる
ストレスは、本人の受け止め方次第です。同じ状況にあっても、ストレスの感じ方は人によって異なります。
物事の考え方を変えるというのは、ストレスに鈍感になるということ、あるいはストレスを受け流す思考に変えるということです。
つまり、ネガティブ思考を改めるということです。ネガティブな考えだと、ストレスが新たなストレスを誘発し、段々と沈み込んで行きます。物事をポジティブに(楽観的に)考えるように心がけると、ストレスも衰えて行くはずです。
もやもやした気分でいるとき、もやもやの状態を紙に書いてみることを勧める専門家もいます。きちんとした文章を書こうとするのが面倒だというのであれば、「イライラ、不安、なぜ?」といったメモでもいいし、日付や場所でも構いません。これは、工夫のひとつですが、試してみてください。
9.PMSを軽減する薬を用いる
市販の漢方薬の中にはPMSを抑える薬があります。用法容量を正しく守って服用してください。良く知られている漢方薬は以下のような薬です。
●加味逍遥散(かみしょうようさん)
●桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
●抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
このほか、低用量ピルは、昼間の眠気、イライラや胸の張り、頭痛などに改善効果があります。病院で婦人科を受診して購入することができます。
10.アロマをたく
アロマなどの嗅覚情報は、かなりダイレクトに脳に作用するともいわれています。特に日中の眠気に効果があります。
仕事中など寝てはいけない環境で眠気におそわれたときに、ティッシュなどにアロマオイルを染み込ませて香りをかぐと、眠気が緩和されます。
11.音楽を聴く
好きな音楽を聴いて、嫌なことを忘れる、気分を変えるということは、みなさんも体験済みのことでしょう。できれば、それぞれの気分転換用のマイミュージックを選定しておくというのはどうでしょうか。
これは嫌なことを忘れる曲、これは癒しの曲、これは元気の出る曲と言った具合に・・・。
12.友人としゃべる
気心のおけない女子会でのおしゃべりは、ストレス退治にはもってこいの場です。実家を離れて一人住まいの方は、時々、故郷に電話してみてはいかがでしょうか。
家族はもとより、幼馴染と定期的に報告し合うというのも、気持ちが落ち着くものです。
13.読書
できれば、コーヒーか紅茶を淹れて、ゆったりした時間と空間の中で、本を読みたいものです。読んだら、簡単な読書録を書く。それが面倒なら、いい言葉や決めセリフをノートにメモするのもいいでしょう。
休みの日に、図書館に出かけるのもおすすめです。本を読むこともさることながら、図書館の中の静かな雰囲気は、心を癒してくれます。
14.映画鑑賞
たまには映画館に出かけましょう。薄暗い一人ぼっちの空間で泣いたり笑ったりするのは、エレガントなストレス退治です。
街にでると、心が華やいできます。帰りにちょっと贅沢して、お気に入りのコーヒーショップで読書すると、とても贅沢な時間を過ごしたという気分になってきます。
15.家の掃除
週に1回は、軽く汗をかくくらいの掃除をしましょう。掃除機をかけるだけではなく、トイレやバスタブをきれいにし、時には家具の配置を換え、換気扇の掃除をする・・・。
掃除が終わって見違えるようにきれいになった部屋を眺めるときの爽快な気分は、また格別です。明日から、また頑張るぞというやる気も湧いてきます。
16.大きな声で歌ってみる
音楽は聴くばかりでなく、歌うためのものです。最近では、一人でカラオケにいく「ヒトカラ」族も珍しくありません。
もちろん、おしゃべり仲間と連れ立って、マイクを握り、得意のレパートリーをシャウトするとストレスも発散してしまいます。
医療機関の受診も考えてよい
以上、自分でできるPMS対策を紹介してきましたが、症状は個人差があり、さまざまなレベルがあります。特に精神的な症状が強く出てくるPMDDの場合は、自分の工夫だけでは乗り切れないケースがすくなくありません。
症状が重いようであれば、精神科の専門医の診断を受けたうえで、服薬治療に取り組まれることをお勧めします。