就職したいという意欲はあっても、障害者の働く場は限られています。
そこで、就労に必要な知識及び能力の向上などを訓練すると同時に求職活動を支援するために設けられている施設が就労移行支援事業所です。
目次
就労移行支援事業所とは
就労移行支援事業所では、就労の意志のある65歳未満の障害者を
訓練をする場を提供する
就労移行支援事業所では、一般企業への就職を前提とした訓練を行っています。
支援の基本は、企業が求める能力・知識と障害者の能力・知識のギャップを埋めることにあります。
障害者の能力に対応していくつかのプログラムが用意され、仕事に関する知識やスキルアップが行われます。
また、就職活動のサポートはもとより、就職後も長く働き続けられるような職場への定着支援も行われています。
就労移行支援のプログラム
就労に向けた訓練としては、パソコンでの事務能力の向上訓練、IT関連の知識取得が中心になっていますが、このほかに、求職活動に関する支援や適性に応じた職場の開拓、就職後における職場への定着のために必要な相談等の支援も行われています。
<職業訓練>、<就活支援>、<定着支援>の3本柱が、就労移行事業所が行うサービスの基本です。
訓練にかかる費用は
就労移行支援事業所は、一種の訓練機関ですから、利用料金が発生しますが、所得などを基準にした所得区分によって、ある一定の所得以下の場合は、無料になっています。(表参照)
また、交通費は原則、自己負担ですが、一部の自治体では一定の基準を満たす方を対象に交通費の助成金を出している場合もあるようです。
詳しくはお近くの自治体の行政窓口で確認してください。
●就労移行支援事業所の利用料金
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯㊟1 | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満)㊟2 | 9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
㊟1:3人世帯で障害者基礎年金1級需給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象となります。
㊟2:収入が概ね600万以下の世帯が対象になります。
就労移行支援の対象者
就労移行支援サービスを利用できる条件は以下のようになっています。
1)身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病などがあること。
2)企業などで働くことを希望していること。
3)原則として18歳から65歳未満であること。
なお、障害者手帳を持っていない場合にも、医師の診断や自治体の判断で利用できる場合がありますから、詳しくは主治医や自治体の福祉の窓口に相談してください。
就労支援事業所のタイプ
就労移行支援事業所を運営しているのは、社会福祉法人、医療法人、会社、NPO、地方公共団体などですが、一番多いのは社会福祉法人です。
東京都の場合、2016年5月の時点で、社会福祉法人40%、営利法人25%、NP法人・医療法人25%、地方公共団体10%となっています。
それぞれの障害に特化
就労移行支援の対象となる障害者は、主に身体障害、知的障害、精神障害ですが、事業所もこれらのうちどれか、あるいは複数を対象にしています。
ですから、自分の障害に該当する事業所を選ぶことになります。
ただし、聴覚障害など、より狭い範囲の障害を専門にしているところもあります。
また、難病にかかっている方が支援の対象になることもあります。
精神障害と就労移行支援事業
身体障害、知的障害だけではなく、精神障害も就労移行支援の対象になります。
就労移行支援事業所の中には精神障害の方を専門にしているところもあります。
ストレスによるうつ病も、生まれつきの発達障害も対象
対象となる精神障害の種類は様々で、うつ病や不安障害、てんかん、統合失調症、その他にも多くの精神障害の方が就労移行支援を利用することができます。
近年話題に上がることが多い発達障害も対象です。
実際、就労移行支援を利用している障害者の割合をみると、半分以上が精神障害者です。
事業所の選び方
まず、通い続けられる距離にあるかがポイントです。
この前提に立って、設備や雰囲気が自分にあうかどうか、訓練内容やカリキュラムはどうなっているかなどを実際に事業所に足を運んでスタッフに確認しましょう。
どんなに内容がすぐれていても、自分に合わない事業所だとメンタルの面で負担になって別の障害を誘発することになりかねません。
ですから、医療機関との連携も重要な確認ポイントになります。
年々増える利用者
厚労省の調査によると就労移行支援事業所は、2016年で3323事業所です。2012年に比べると1.3倍に増え、利用者も年々増えてきています。
利用者が3万人を超える
事業所数の増加に伴い利用者も、2012年に比べると1.4倍に増えてきています。
- 就労移行支援事業所の利用者数の推移
20代が36%
利用者数を年齢別に見ると、20~29歳が36%でトップ。以下、30~39歳が22%、40~49歳が20%となっています。
若い人たちに就労意志が強いということです。
- 就労移行支援事業所の年齢別の利用者の割合
就労移行率は10年で10倍弱に
就労移行支援事業の目的は、できるだけ多くの障害者の方々が一般就労されることです。
この就労者数も年々急増しています。
2003年の1,288人に比べると2013年の就労者数は10,001人で10倍弱に増えています。
また、2013年の就労移行支援事業所から一般就労への移行率は24.9%となっています。
- 一般就労者数の推移
自分に最適な事業所を選ぶ
既に述べたように、就労移行支援事業所を運営しているのは、①社会福祉法人、②医療法人、③NPO法人、④公共団体、それにビジネスとして支援事業を行っている⑤営利法人です。
一般的な感覚からいえば、①~④の法人が安心できるようなイメージがありますが、ビジネスとして成り立たせるために営利法人の中には、より良いプログラムの開発に努め、手厚い支援体制を築いているところもあります。
事業所を選ぶ場合は、実際に事業所に足を運び、運営の実態や内容を自分で確認したうえで、自分にあった事業所を選ぶようにしましょう。
また、精神障害者の場合は、メンタルケアも大切ですから、精神科の病院などが運営する医療法人の事業所も視野にいれて選ぶようにしたいものです。