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自律神経症状は精神科?
自律神経失調症とは自律神経のバランスが乱れている状態のことを指し、バランスが乱れると心身に様々な影響を与えてしまいます。その影響を総じて自律神経症状や自律神経障害と呼んでいます。
自律神経症状は精神科領域でも度々目にします。例えばレビー小体型認知症では脳の機能障害によって起こり、不安障害・パニック障害、うつ病では不安発作で自律神経系が乱れてしまい自律神経症状を起こす場合があります。
他にも橋本病などの甲状腺機能低下症や、更年期障害といったホルモンバランスによる影響でも自律神経失調症に似た症状を起こすことがあります。
このように自律神経失調症は精神科でも内科でも婦人科でも見る症状なので、何科に行けばいいのかわからないなんていう方が多いかもしれません。
自律神経失調症は病名というより症状?
自律神経失調症というのは自律神経が乱れている状態を指しているだけなのです。重要なのは自律神経の乱れを起こしている原因(病気)です。
先にも説明した通り、うつ病や橋本病など別の病気が原因で自律神経失調症を起こし、症状に気づいている場合もあり、裏に何か悪い病気が隠れていないかを調べることが治療の始まりになります。
これから自律神経についての解説をします。自律神経失調症を疑った場合は、隠れている病気がないかどうか受診して調べることをお勧めします。
自律神経失調症とは?
自律神経とは名前の通り、自分を自律(コントロール)してくれる神経です。コントロールとは自分でコントロールできない部分を自分に代わりコントロールしてくれるという意味で、例えば心臓を動かすときに、「よし、ドキドキしたいから脈を速くしよう。」と思ってできますか?できませんよね。こういった意識的にできない体の動きをコントロールしているのが自律神経です。
例えば走ると脈拍が早くなり心臓の動くスピードが上がりますよね。これは、走ると足の筋肉は普段よりも沢山の酸素が必要になります。つまり普段よりも沢山の酸素(血液)を送らないといけないから普段よりも心臓が沢山動くのです。このコントロールを「お、走ったな。じゃあ酸素が必要だな。心臓もっと動かすか。」と自律神経がしてくれているのです。
他にも内蔵の動きや、様々な動きをコントロールしている神経ですので、乱れれば当然全身に影響を及ぼします。
2種類の自律神経?戦闘神経とリラックス神経
自律神経には2種類の神経があります。交感神経と副交感神経です。
交感神経は戦闘神経と呼んでいます。つまりアクティブなときに使われる神経です。副交感神経はリラックス神経で、睡眠中などリラックスしているときに使われる神経です。
このアクセルとブレーキのような関係で、自律神経は体の活動と休息のバランスを保っています。
交感神経とは
戦闘神経ですので、「狩りをする」、「戦う」状態をイメージするとわかりやすいです。
戦うと、それぞれの臓器はどう動くか考えてみましょう。
心臓は沢山酸素を送り出すために、脈を上げ、強く収縮します。気管は沢山の酸素を吸うために広がります。肺も沢山酸素を吸うために沢山呼吸しようとします。
肝臓では、全身を動かすエネルギー(グリコーゲン)を出して、消化器は無駄な血液を内蔵に行かないようにすめに動きを抑えます。戦闘中に食べ物消化してる場合じゃないですよね。消化管に血液を送るよりも筋肉に血を送った方が素早く力強く動けて効率的ですから。
このように戦闘している状態をイメージすると交感神経が働いている状態がわかりやすいと思います。
副交感神経とは
一方で副交感神経は戦闘神経である交感神経とは真逆の働きをします。リラックスしているときや寝ているときをイメージするとわかりやすいでしょう。
リラックスしていれば筋肉は動かしませんから。心臓は酸素を沢山送り出さなくていいので、脈を下げて、弱く収縮します。気管は沢山の酸素がいらないので、収縮します。肺も沢山酸素がいらないので、呼吸を抑えます。
肝臓では、次の戦闘に備えてエネルギーを蓄えるためにグリコーゲンを合成して保管します。
消化器でも、次の戦闘に備えてエネルギーを蓄えるため栄養素を消化して蓄えるため、沢山動きます。
このように交感神経と副交感神経はシーソーの関係で、「戦って」「休んで」を繰り返しているのです。
このバランスが崩れると?
ストレスと自律神経の乱れは密接に関係しています。心臓にも自律神経が走っています。ストレスにより息が苦しくなったり胸が痛くなることがあります。漢方も併用してストレスがうまく発散できるといいですね#マシュマロを投げ合おうhttps://t.co/m1yPkFODgy pic.twitter.com/NPrkZSzfzr
— ゆる医者@精神科 (@yuruiDr) 2019年7月3日
基本的に交感神経がずっと優位になってしまうことで、自律神経症状が生じます。寝ていても、リラックスしていても、ずっと交感神経が優位になっている状態で、無意識でコントロールされているはずの体がコントロールを失い、ずっと戦闘状態になります。
こうなると全身のバランスが崩れるので、心臓はずっと戦闘状態のため、動機や胸部圧迫感を起こします。肺も酸素がいらないのに沢山呼吸するので、息苦しさや息が詰まる感じを覚えたり、胃腸もいつまでも活動が促されず、動きを抑えられているので、吐き気や胃の不快感や、消化されずに便秘や下痢、腹部膨満などが起こります。
このように交感神経がずっと動くことで全身に影響が出るのです。
自律神経失調症は女性に多い?
自律神経失調症は男女ともに認められますが、女性の方が明らかに多いです。
その理由としては、以下の3つがあげられます。
- 女性ホルモンの生理的な変化がある
- 甲状腺ホルモンが乱れやすい
- 女性の方が気分障害や不安障害が多い
というように、自律神経失調症の原因となる病気には女性の方がなりやすいので、自律神経失調症は女性に多いと言われています。
詳しく理由を説明していくと、女性ホルモンは、脳の視床下部と呼ばれる部分がコントロールを行っています。実は視床下部は、自律神経系のバランスを司っている部分になります。ですから女性ホルモンによる自律神経への影響はとても大きく、毎月の周期的な変動、年齢に伴う変動に伴って、自律神経症状が認められやすいのです。
次に、甲状腺ホルモンは、体の代謝を高める働きがあり、交感神経を活性化させます。甲状腺機能がくるってしまうような病気として橋本病やバセドウ病がありますが、男性よりも女性に圧倒的に多い病気になります。甲状腺ホルモンバランスの異常によって、自律神経のバランスも崩れてしまうのです。
また気分障害や不安障害といった精神疾患も、女性の方が男性よりも多く認められます。それだけでなく、極端なダイエットや女性の方が人間関係が男性よりも複雑であることも、女性の自律神経失調症が多い原因として挙げられます。
自律神経失調症は何科に行けばいい?
何科に行くのか判断が難しいワケ
ここまで説明してきた方にはわかる通り、自律神経失調症はあることも問題ですが、バランスを崩している原因(犯人)が後ろに控えているのです。なので、犯人を捕まえない限り問題の解決になりません。
しかし、ここで問題なのが後ろの病気が何科の病気か判断付かないことです。気分障害や不安障害からくるものであれば、精神科です。ホルモンの影響なら内分泌科、女性ホルモンの影響なら産婦人科です。脳そのものの異常であれば、脳神経内科になります。つまり自律神経失調症の症状だけでは病気の特定や治療が難しいのです。
ファーストチョイスは?
まずは最寄りの内科クリニックに行きましょう。いきなり心療内科や精神科に行くというのもハードルが高いものです。かといって調べて産婦人科や脳神経内科に行くのも微妙ですよね。近隣を支えるクリニックには、その病気を何科にバトンタッチすればいいのかという判断に優れた医師が多いです。つまり医療の窓口になってくれる存在です。
なので、私は何科に行くことをお勧めしますかと言われれば、近隣のかかりつけ内科医に相談することがファーストチョイスとしてはいいのではないかと思います。顔なじみであれば相談もしやすいですよね。
もちろんかかりつけの心療内科や産婦人科がある場合はそちらで相談するのも良いでしょう。原因が多岐にわたるので、空振りになる可能性も念頭に置いて受診しましょうね。原因特定に過度な期待は持たない方がいいかもしれません。多くの場合は原因の特定と対症療法を同時に行います。自律神経失調症はストレスを避ければ治る場合も多いのです。つまり犯人はいなかったパターンもあるので、病気の特定にだけ力を注げばいいというわけでもありません。治れば結果オーライのパターンもあることを覚えておきましょう。
いわゆる自律神経の乱れというものの多くは体の様々な調整がうまくいっていない状況、ホルモンだとか生活リズムだとかの乱れのようなものですね👶なかなかアプローチが難しく、漢方は整えるという意味ではよいかな#マシュマロを投げ合おうhttps://t.co/zWS0GUMBux pic.twitter.com/2dYKSvUxNL
— 峰 宗太郎 (@minesoh) 2019年7月1日