精神科医療業界の略語を色々と調べてみた件について


医療業界の略語

医療業界にはたくさんの略語があります。
そしてその略語には2種類の略語があり、世間的に使われている略語と、身内だけで使われている略語です。
精神科医療業界にはどのような略語が潜んでいるのでしょうか。気になりますね。

ボーダー

Borderline Personality Disorder=境界性人格障害
ボーダーラインの先頭を取ってボーダー。
「自分勝手な人、周囲に迷惑をかける人=ボーダー」という誤った使われ方もする

新人時は人格障害をすべてボーダーと呼ぶこともあるが
ボーダーは人格障害の中の1種類しか指していないことに後々気づき改める。

【例文】あの患者さんボーダーだから依存関係にならないよう距離感気を付けて。

S(エス)

Schizophrenia=統合失調症

S「エス」や、Sz「シゾ」と略される。
新人時に先輩に「あの患者さんSっぽいね。」と言われて、
「責めるのが好きな人っぽいね」という誤解を生む。このSはSMのSではない。

【例文】S(統合失調症)かな?MDI(双極性障害かな)かな?

ジプ筋

ジプレキサ筋注
主に急性期状態の患者に対して、鎮静目的で使用する薬剤。
内服できない場合に使用することから拒薬時の指示として出てくる。

【例文】拒薬時はジプ筋1V(バイアル)ね。

LP(エルピー)

Levomepromazine=レボメプロマジン=ヒルナミン
(L)evome(p)romazineの頭文字を略してLP
ジプ筋同様に鎮静目的で利用される薬だが、
筋注なのか内服なのか確認するのは注意。末尾の単位を確認することも大事。

【例文】LP1A(レボメプロマジン1アンプル)ね。

セレセル

セレネース+セルシン
精神科薬剤の中で静脈注射ができる数少ない薬剤のうちの一つ。
セレネース(Haloperidol)とセルシン(Diazepam)を投与して鎮静する。
この二つは混ぜると白濁するため、必ず別のシリンジで用意しなければならない。

【例文】セレセル用意して。セレ2セル1(セレネース2A+セルシン1A)

GH

GehörsHalluzination=幻聴統合失調症の陽性症状の一つ。
精神症状を評価するうえでよく聴取するため、書くことが多いが、
メモをするには画数多いため、GH(+)と短縮される。
そのうち妄想も画数多いなと気づき、MS(MouSou=妄想)というオリジナルメモ略語も誕生する。

【例文】Aさん昨日からGH(+)、MS(+)

LAI(エルエーアイ)

long-acting injection=持効性注射製剤
昔からあるデポ剤とも呼ばれますが、LAIという呼び名が主流化してきています。薬効が1か月等、長く持続するタイプの薬のことを指します。
精神科では統合失調症治療薬である抗精神病薬がLAI化されています。

【例文】Aさん来週からLAI導入ね。

ECT(イーシーティー)

Electro-convulsive therapy=電気けいれん療法
現在の主流は「“修正型”電気けいれん療法=m-ECT」だが、
略して使うときにはわざわざmを付けずに使うことが多い。
電気けいれん療法に用いるパルス波治療器(サイマトロン=Thymatron)を
略して電気けいれん療法をサイマと呼ぶこともある。

【例文】Aさん来週からECT導入ね。/サイマ導入ね。

ピネル

カナダのピネル社が販売している緩和抑制帯。いわゆる拘束帯。
商品名を社名で呼ぶ謎仕様。

「あの車かっこいいね。ほしいな。」を「あのトヨタかっこいいね、ほしいな。」と言うようなもの。

【例文】○○号室のベッドにピネル付けておいて。

サルバ

Salvafix=サルバフィックス安全帯
サルバフィックスという商品名の安全帯。いわゆる拘束帯。
こっちはちゃんと商品名。偉い。

【例文】○○号室のベッドにサルバ付けておいて。

高EE/HighEE(ハイイーイー)

High Expressed Emotion=高い(強い)感情表出 過度な批判や擁護など、相手に対する感情表出が強いこと。
主に統合失調症などの精神疾患の家族がなりやすい状態で、 「こんな病気なのは気持ちの問題だ!」と批判したり
「病気になったのは私の育て方のせいだから何とかしてあげなくちゃ」と擁護するような発言をそう呼ぶ。

HighEEの家族を持つ患者は再発しやすいと言われていて、本人の治療の妨げになるため、医療では家族指導の対象となっている。
批判がすぎると、何に対してもクレーマー気質になり、家庭内だけでなく周囲にも噛みつきまくる状態にもなる。

【例文】Aさんの家族HighEEだから対応に配慮してね。

EPS(イーピーエス)

extrapyramidal symptom=錐体外路症状
頭文字をとって、EPSと呼ぶ。
EPSは本来パーキンソン症候群などに現れる症状だが、
精神科では薬剤性パーキンソン症候群、いわゆる副作用によってEPSが出現する。

筋緊張や固縮が生じる症状を総じてEPSと呼ぶ。
古いタイプの薬剤ではよく起こっていた副作用だが、
近年の非定型抗精神病薬になってからは少なくなっている。

【例文】AさんEPS出てきたから処方調整しましょう。

OD(オーディー)

Over dose=過量服用、過量服薬 もはや一般用語になりつつもあるOD。
ODしちゃった~なんて気軽なツイートをよく見るが
当然気軽なものではなく、普通に死ねる。
そして胃洗浄の適応となれば地獄が待っていることを彼らは知らない。
胃洗浄は鼻からチューブを胃にいれて洗浄液を入れて出してを繰り返す。
吐き気を催すこともあり、本人はゲロ気持ち悪い。
当然胃洗浄する側も貰いゲロしやすい人はその場にいることはできない。

【例文】Aさん入院前にODして救急救命センターに搬送されたそうです。

番外編

本当に使われているの?
信じるか信じないかはあなた次第。

グッドミンでGOOD眠

(Brotizolam=グッドミン=レンドルミン)

現在はほとんどブロチゾラムで統一しているが、過去にはグッドミンという名前で販売されていた。

当直に疲弊しきった医師に、眠れない患者を報告して指示受けすると謎のテンションでこう返される。そして大抵親指を立てて指示出しをする。返事は笑顔でおやすみなさいと言ってあげると満点。

【例文】Aさん眠れないの?じゃあグッドミンでgood眠だね。

A「何だか急患が多いですね。」 B「季節の変わり目だからな。」

立て続けに急患がくると、誰かがこういう。
精神疾患の悪化はストレス要因と考えられ、生活の変化等がきっかけになる場合が多い。
そのため、急患が多いのは、時期のせいという見方して乗り切ろうとする。

【例文】A「何だか急患が多いですね。」
1月:B「年明けだからな。」
2月:B「バレンタインデーだからな。」
3月:B「暖かくなってきたからな。」
4月:B「新生活がスタートしたからな。」
5月:B「五月病だからな。」
6月:B「梅雨だからな。」
7月:B「夏で暑いからな。」
8月:B「世間が夏休みだからな。」
9月:B「夏が終わっちゃったからな。」
10月:B「秋が始まったからな。」
11月:B「寒くなってきたからな。」
12月:B「年末だからな。」

A「あぁ~、今日は平和でしたね。」

消灯を終えて、勤務終了まで残り1時間の準夜勤務ナースがいうセリフ。
このフラグにより同時多発的に不穏や急患が出現する。
しかし、普段どれだけ険悪で、バトルをしていても
ここぞという阿吽の呼吸なチームワークが発動して定時退勤を叩き出す。

【例文】
A「あぁ~、今日は平和でしたね。」
B「それフラグだから。」

「区長同意とれた?」

精神科の入院形態の内、強制的な入院に当たる医療保護入院において
同意できる家族がいない場合(死別、認知症などで同意能力がない等)は
市区村長の同意にて医療保護入院を成り立たせることができる。
東京都23区内では区長同意と呼ぶが、耳だけで聞くと口調同意と聞こえる
電話で家族に口頭で医療保護入院の同意を貰うことを
口調同意を呼んでいると推測する誤解がしばしば起こる。
口調同意が区長同意だと気付くときに恥ずかしい思いをする。23区に住まなければ良かったと。

【例文】Aさん医保適応なのだけど、区長同意とれた?