前回は、『統合失調症と薬』について書かせていただきました。
https://www.allin1.co.jp/service/psychotherapy/blog/s-medicine/
今回は、統合失調症に処方される持効性注射剤(LAI)と呼ばれるお薬についてです。
統合失調症が完治せず、一旦症状が治まってからも薬を飲み続けなければならない患者さんが多くいらっしゃいます。日々の服薬を欠かさず続けることはなかなか難しく、飲み忘れたり中断して再発につながるケースが後を絶ちません。
持効性注射剤(LAI)は、服薬負担を減らしてくれる、比較的新しいお薬です。
持効性注射剤(LAI)って何?
持効性注射剤というのは、統合失調症で使われる効果が長く続く注射剤のことです。Long Acting Injectionを略してLAIとかデポ剤と呼ばれることもあります。一度注射してしまえば1週間~数週間は効果が続き、その間は薬のことを気にせずに済みます。
お薬には経口剤(飲み薬)や注射剤があります。注射剤はさらに注射方法によって、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射等に分かれるのですが、LAIでは筋肉内注射になります。
https://www.allin1.co.jp/service/psychotherapy/blog/injection/
そのように注射されたお薬の成分は、筋肉内にとどまり続け、少しずつ血液中に放出されるよう工夫されており、薬の効果を長く保つことができるのです。
統合失調症は再発しやすい
統合失調症は再発・再燃を繰り返しやすいという特徴があります。再発を防ぐためには服薬を続ける必要があり、中断した場合の再発リスクは5倍になるとのデータもあります。
服薬が重要
服薬が重要なのはわかっていても服薬率は時間が経つごとに悪化しがちです。統合失調症の入院患者で、退院直後100%だった服薬率が、半年後に6割を切ってしまったとの調査もあります。
LAIのメリット・デメリット
メリット
LAIは一回の注射で効果が持続するため、服薬の負担が軽減されるメリットがあることは言うまでもありません。飲み忘れ・中断を防ぎ、再発を防止しやすいことが第一のメリットと言えますが、毎日薬を飲まなくて済むということで、社会復帰しやすいこともあげられるでしょう。
薬の効き方からのメリットもあります。LAIは、筋肉内に注射されたお薬の成分が、少しづつしみだすため、薬の成分の血中濃度が比較的安定的に維持できるという特性があります。飲み薬の場合は、飲んだ後血中濃度が上がり、その後低下するという経過を短いサイクルで繰り返します。本来は、最も効果的な濃度で一定に保ちたいわけですが、飲み薬の場合、平均濃度を目標にせざるを得ず、飲んだ直ぐあとは濃度が高すぎ、その後低すぎるということになりがちです。LAIはこの、濃度の変動を回避しやすいことから、副作用が飲み薬よりも少なく※、安定的な効果が期待できると言われています。
※お薬の種類によって異なります。
デメリット
デメリットもあります。一度注射すると効果が長く続くということは、副作用がある場合もそれが長く続いてしまうということです。LAIを注射する場合は、事前に、同じ成分の飲み薬で問題がないことを確認する必要があります。
また、注射した後、血中濃度は少しずつしか上がって行きません。そのため、その間、飲み薬と併用することが多いです。
お薬の種類にもよりますが、飲み薬より価格が高い場合があります。
注射が痛いというのもあるかもしれません。注射の中でも筋肉注射は痛いと一般的に思われていますが、痛さに配慮したお薬もあり、こればかりは一概に言えませんね。
まとめ
今回は持効性注射剤(LAI)について書かせていただきました。統合失調症の患者さんやそのご家族にとって非常にメリットの大きいお薬です。しかし、残念ながら、まだこのお薬は広く使われているとは言えません。勿論、デメリットへの配慮は必要ですが、今後、使われることが増えてゆく方向なのかも知れませんね。