子供の不登校はもしかしたら適応障害が原因かも?


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子どもの不登校は、子を持つ親にとって深刻な問題です。いじめも受けていないとなれば、理由が見当たらない分、余計に心配になってきます。

不登校には、様々な理由が考えられますが、適応障害という精神疾患が原因になっているケースも見られます。そこで、今回は不登校と適応障害の関係を考えてみます。

適応障害とは

過度のストレスによって心身のバランスが崩れ、生活に支障をきたすようになる精神疾患です。

うつを含めた様々な症状があらわれる

適応障害とは、進学、転勤、異動、結婚、離婚、死別など、人生の中の重大なイベントとそれに伴う環境の変化にうまく対応できずに生じる心の症状です。

適応障害は、ストレス反応のひとつですが、ストレスが過剰であったり、長く続くと憂うつ、不安感、不眠症、頭痛、不眠などの症状があらわれてきます。

こうした症状は、程度の差こそあれ、正常な人にもあらわれますが、適応障害はそのレベルが高く、対人関係や社会生活を続けることが困難な状態になります。

順応性の高い子どもにも

子どもは順応性や適応性が高いので、適応障害は、大人の病気と考えられてきました。ところが、最近では子どもの中に適応障害が見られるようになってきています。

子どもの適応障害の代表的なものが不登校です。ただし、不登校と適応障害でひとくくりにするのは間違いです。

子どもの不登校には、発達障害や回避性パーソナリティ障害などによるものもあり、あるいは障害とはいえない反抗期のあらわれであるケースもあります。

間違えやすい適応障害と発達障害

適応障害とよく間違われるものに発達障害があります。発達障害には、自閉症・アスペルガー症候群・多動症・学習障害などの障害がありますが、発達障害は、生まれながらの脳の状態が通常と違うことによる症状です。

これに対して、適応障害は、精神疾患の一つです。どちらの障害も、精神科や心療内科などの専門の医療機関で診断してもらうことによってつく病名です。

ストレスのかかる状況で症状がでる

適応障害は、ストレスのかかる職場や学校などの社会的環境の中で発生する一種の拒否反応です。ですから、ストレスのかかる環境から離れると症状は弱まります。

また、嫌いなことをするときには気分が落ち込むけれど、楽しいことをするときはしっかり楽しむ、というような不定形うつに似た症状があらわれることもあり、周りから、単なる甘えと誤解されることもあります。

生真面目だとなりやすい

何事も生真面目に受け取り、何かをするときは完璧でないと気が済まないようなタイプの人は適応障害になりやすいようです。適応障害ではこういった個人的な素質も大きく関係します。

しかし、主たる原因はストレスですから、ストレス環境が改善されれば、症状も弱まります。

一生ついて回るものというわけではない

適応障害は、精神疾患の一つですが、比較的軽いものです。精神疾患といえば、一生ついて回るという覚悟が必要なものもありますが、適応障害はそのように深刻に考える必要はありません。

主因となっているストレス環境が変われば、症状も弱まり、症状も短期間でおさまってきます。

放置するとうつ病に移行することも

とはいえ、その症状が適応障害に該当するものであったら、放置するとうつ病に移行するケースがあることは、知っておく必要があります。実際、大人の適応障害ではその症状が、うつ病の診断基準を満たさないという理由で、適応障害とされるケースが少なくありませんが、5年後には40%の人がうつ病などの精神疾患に診断名を変更されたというコワイ統計もあります。

不登校と適応障害

学校は強いストレスになることがある

大人の適応障害の代表的なストレス環境が職場ならば、子供の適応障害の代表的な環境は学校です。子どもの中に適応障害が見られるようになったのも、現在の学校がストレスにさらされやすい環境にあることを物語るものでしょう。

子どもの年齢や性格などによって異なりますが、学校で何らかの強いストレスを受けていた場合は、学校を原因とした適応障害になることが十分にあり得えます。

症状としては、小さい子供の場合、赤ちゃんに戻ったかのように赤ちゃん言葉や指しゃぶりをする「赤ちゃん返り」がみられることもあります。体の症状では、動悸や発汗、目眩など、不安が強く緊張が高まるとみられることもあります。

学校に「行かない」のではなく「行けない」

適応障害の症状は、ストレスの強い環境にいるときだけでなく、その環境に行こうとするときにもあらわれたりします。いざ学校に行こうとすると、適応障害の影響で行けなくなってしまいます。それは、必ずしも本人の意思ではありません。

「行かない」のではなく「行けない」状態になってしまうのです。適応障害は、はっきりした分かりやすい症状があらわれる精神疾患と違うために、それを「甘え」のように受け取られがちです。適応障害であれば、「行かない」のではなく「行けない」のだということを理解する必要があります。

環境の変化がきっかけに

適応障害の多くは、環境の変化がきっかけで発症したというケースが多く見られます。進級、クラス替え、転校、進学などは、その代表的な変化です。

もっとも、まだ小さな年齢の子どもは、何が原因かよくわからないこともあります。しかし、ある程度の年齢になればその原因が推察されますから、その原因から離れることによって徐々に良くなっていきます。

適応障害を治すためには

適応障害には環境や自分を変えることが効果的

適応障害は、環境からのストレスによって発症します。したがって、治すための対策その1は、適応することが難しいストレス環境から離れるか、改善することです。

対策その2は、適応しきれない自分の考え方を変えることです。実際、適応障害の治療は、環境の改善と並行して自分の考え方を変える精神療法を中心に行われます。

無理に学校に行かせると症状は悪化する

適応障害になった大人は、今までの環境に戻ると症状が悪化したりする可能性があるために、環境の調整や時には転職や異動などで、ストレス環境を離れる対応策がとられることがあります。

子どもの場合も同様で、今までと同じ環境にいて、無理になじませようとすると、追い込まれて症状が悪化する可能性があります。したがって、学校を休ませるとか場合によって転校させるというのも考える必要があります。

原因の把握が重要

大人の場合、適応障害の元となるストレスの発生源をみつけることは比較的に簡単ですが、不登校になった子どもの場合、ストレスの元を把握することは、なかなか難しいです。

ストレスの元となるいじめなどは、本人がなかなか話そうとしたがらないからです。ストレスの元を探り当てることが、治療の第一歩ですから、まず子どもの事情を上手に聞きだして、子どもが抱えているストレス環境の実態を把握することが重要です。

一人で抱え込む必要はない

子どもが不登校になった場合、親は自分のしつけのせいかも知れないと思い込み、一人で悩みを抱えこみがちです。しかし、明らかに甘えとは違う何かに支配されているという感触があれば、医療機関や専門の期間に相談することをお勧めします。

適応障害の医療機関となるのは、心療内科や精神科です。専門の相談機関としては、以下のようなところがあります。

●不登校支援センター
年間7,500件の不登校、引きこもり事案を扱っている一般社団法人です。
同センターによれば、学校に復帰したのは相談をうけた案件の87%にのぼるということです。
●ひきこもり地域支援センター
厚生労働省が設置している相談窓口です。国が設置している機関ということもあり、他の関係機関と連携しやすいというのが大きなメリットです。
●教育センター
厚生労働省が設置している窓口です。不登校に限らず、いじめ問題、発達障害を持つ子どもの教育など、子育てや教育に関する問題を全般的に扱っています。
●フリースクールという選択肢
不登校、ひきこもりなどの子どもたちを対象に、学校生活と同じような集団生活を行い、社会復帰へのリハビリテーションを行うために運営されている施設です。自由で独創的な教育を実現しているところもありますから、学校や集団生活になじめない子どもをもつ親にとっては、選択肢の一つとなるかもしれません。

適応障害を大げさにとらえすぎると逆効果にも

文部科学省の「学校基本調査速報」(2013年度)」によると、小中学生を合わせて11万9,617人の児童・生徒が不登校状態にあるといいます。このすべてが適応障害と断定することはできませんが、子どもの世界にも環境に拒否反応をしめす適応障害が広がってきているようです。

ただし、それが精神疾患だということで、気にしすぎて大げさに捉えると、子どもによくない影響が生じます。専門医や支援・相談窓口の意見なども聞き、冷静に対応されることをお勧めします。


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