【コラム-ADHD⑥】仕事を続ける中で障がいが辛いと思ったときとその対処


一年目の就労失敗の経験から、就労移行支援施設への通所を経て特例子会社に再就職するまでの体験を5回のコラムに書かせていただきました。最後6回目は仕事をする上で発達障害が辛く、時に続けることが難しいと思った時と、私がそれにどう対処しているかを書かせていただきます。

辛かったこととそれに対する対処

①自身が障がいを受け入れられなかった

  
私は特例子会社の設立時の社員でした。その当時はまだ特定の仕事場がなく本社の一角が自分たちの作業スペースでした。私と年齢が変わらない一般の社員の方がバリバリ働いている姿をみるとなぜ彼らと同じように仕事ができないのかと自身を責めました。

私は前職では自身を「健常者」であると思っていた為、精神障がい者として仕事を始めた時、自分が周囲と異質なものになってしまったという感覚がありました。まだ自身の障がいへの受容ができておらず、常に自分が劣ったものである感覚を常にもっていました。

対処:就労移行支援施設のOB会、OG会に参加する

就業後、しばらくは就労移行支援施設で定期的に開かれるOB・OG会に参加しました。OB・OG会は元通所していた就職者同士が、会社での経験や、ストレスの対処法等の情報交換しあう場です。辛い体験をしている時、それは自分だけと思ってしまいがちですが、様々な就労先で働く人の声を聞くと自分と同じ体験や気持ちを持つ人が数多くいることがわかり気持ちが楽になりました。障がいを持つ人が一人の社会人としてポリシーを持ち生きている声を聞くと、自分も頑張れるのではないかと思えるようになりました。

②スタミナが全くなかった

現在の会社に再就職した時、私には3年以上のブランクがありました。また前職での失敗によって自信を完全に喪失している状態での再出発でした。一年目の精神的な逃げ場はアルコールでした。アルコールは一時的に辛いことを忘れさせてくれますが、疲れを翌朝に持ち越してしまいます。その為、朝出勤することも辛く、午後にはスタミナ切れを起こしてしまいました。

ADHD傾向の私は人前では体が常に緊張している状態でした。その為、余計な力が入り身体が疲れやすい傾向がありました。

対処:アルコールを断ち、ジムに通う

翌朝に仕事がある場合、アルコールは摂取することをやめました。スタミナ対策として週三回のボクシングジムに通うことにしました。3年間通い続けた結果、体力面の課題は大きく改善しました。副次的ではありますが会社以外の人と人の繋がりを増やすこともできました。

③仕事の計画を立てづらかった。

勤続年数を重ねると、特定の仕事を任されるようになりました。私の任された仕事は社員向けの業務マニュアルの作成でした。会社からはほとんど作成方法に関する指示は出されず、どのような手順で作成するかは全て自分で決めることとなっていました。

1日何をやるかは全て自分一人で決めなければならないのです。何に手を付けていいのかわからず1日を費やすことも当初はありました。ADHD傾向を持つ人は計画的に順を追って作業を行うことが苦手なのです。それまで指示待ちの仕事しかしてこなかった自分は後の仕事方法について大いに困惑しました。決められた指示に従って仕事をしている別担当の他の社員が羨ましく感じ、指示を貰えない自分は会社にとって不必要な存在なのでなないかと感じ苦しむことがありました。

対処:ガントチャートをつくり、作業の工程を細分化した

まずなにかを作成する前に、必ず計画を立たてることにしました。

オリジナルのガントチャートを作成し(下の図)工程ごと何分の時間を要するのか予測を立てます。(図の場合青のバー)実際に作業行った所要時間を入力すると赤のバーが表示されます。青のバーと、赤のバーの長さに違いが生じた場合、計画と実際の作業の時間に差が生じたことになるため、その原因を調べ、次回の作業計画に活かします。チャートを作ることによって仕事の計画を立てることでき、1日に何をやるかを事前に把握することができ、上司に進行状況を報告できるようになりました。

ガントチャート例
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④仕事の成果を実感しにくかった

ADHDの傾向の人全体の傾向か、私個人の思考の偏りかは定かではありませんが、目先の成果に一喜一憂する傾向が強くありました。一年目は、仕事が定まっておらず、一日中シュレッダーという日が続くこともありました。それでは成果を感じられず帰り道は「今日は何もできなかった」と責め続けることもありました。特定の仕事を任されるようになった今でも、成果が出せないと感じるときに同じような思考に陥ることがあります。

対処その1:長期的な目標をつくりそれにむけての課題をつくる

         
目先の成果に一喜一憂する傾向があったので、長期的な成長目標を立て、3ヶ月ごとに目標達成に向けての「課題」を作ります。毎日、目標達成に向けての課題を意識しながら仕事を行います。定期的に達成状況を確認するために3ヶ月ごとに振り返り面談を支援スタッフと行います。課題をクリアできたら、更に次の課題に取り組みます。大切なことは「課題」を達成するごとに美味しいものを食べるなど、自分に報酬をあげることです。
          

対処その2:かならず1日一つ、できたことをノートにまとめる。

どんな小さなことでもかまわないの「できた」が実感できたらなるべく早くノートに記録するようにします。帰宅後できたことを思い出そうとすると帰って「できなかった」気分に陥った時、それを見返すと、今日一日の中に「できた」ことを思い出すことができ、その日の成果を実感できます。

まとめ

仕事を始めた当初、発達障害を持つ自分は社会人として全く通用しないと自身で決めつけていました。実際、仕事を続けてゆくなかで様々な問題に直面し、辞めてしまいたくなることもありました。私が一番苦しんだことは人より劣っていて何もできないという観念に縛られ続けたことでした。

しかし、身近なツールを利用したり周囲の人の支援をえることで自分が発揮できる能力の範囲が広がり、徐々ではありますが自信を感じられるようになりました。毎日が楽しいことばかりではありませんが人の役に立てる実感をもつことができ、ささやかではありますが充実した生活を送られています。全6回に渡り私の体験を交えて、コラム形式で、精神障の方が就労する為に役立つ情報をお送りしました。これをきっかけに多くの方が良い職場に出会い長く続けられれば幸いです。


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