はじめに
こんにちは!サイコセラピー研究所のまさやです。皆さん最近はいかがお過ごしですか?
私はコロナ渦ということもあり仕事の日以外は自宅にこもってネットフリックスなどの映画鑑賞をしてます!現在必ずと言っていいほど毎日ニュースとなる新型コロナウイルス感染症。今回は新型コロナウイルス感染症と精神科病院というテーマで話していきたいと思います。
今回の記事では、
① 精神科病棟の特徴
② 精神科の患者さんってどんな方がいるの?
③ 精神科病棟での具体的なコロナ対策
の3点のテーマで話していきたいと思います。では早速いきましょう!!!!
① 精神科病棟の特徴
精神科の病院には、任意入院の病棟とは構造が異なる閉鎖病棟というのがあります。閉鎖病棟とは、文字通り、出入り口が施錠され、自由に出入りできない病棟の事を指します。
閉鎖病棟について
閉鎖病棟に入院するのは、具体的に、急性期の精神疾患で、興奮のために不穏、多動、暴力といった他害行為が認められる患者さんが多いです。しかし中には閉鎖病棟のみの病院もあります。そこでは任意入院、医療保護入院問わず入院されます。
自由に出入りができない病棟
閉鎖病棟では、患者さんの行動が制限されています。出入り口が施錠されているため、病棟から外に自由に行き来することはできません。
また閉鎖病棟には私物の持ち込みも制限され、自傷・他害のおそれのある紐や刃物なども持ち込めません。このように、閉鎖病棟への入院は、あくまで周りの人や患者さんの保護を目的とし、適切な医療を保証するために行う、やむを得ない措置なのです。
また、閉鎖病棟に入っている患者さんは、以下に示すような行動が見られる患者さんたちですが、制裁や懲罰的に行われることは認められていません。
- 身体的合併症を有する患者の検査及び処置等のため、隔離が必要な場合。
- 「措置入院」や「医療保護入院」などで強制的に入院させられる場合
- 他の患者との人間関係を著しく損なうおそれがあり、その言動が患者の病状の経過や予後に著しく悪く影響する場合。
- 自殺企図や自傷行為が切迫している場合。
- 他の患者に対する暴力行為や著しい迷惑行為、器物破損行為が認められ、他の方法ではこれを防ぎきれない場合。
- 急性精神運動興奮等のため、不穏、多動、爆発性などが目立ち、開放病棟では治療や保護が著しく困難な場合。
上記の患者さんの場合には行動を制限して安全な環境下で療養生活をおくってもらいます。
本人、あるいは周囲を守るための閉鎖病棟
閉鎖し、隔離し、時には拘束するというのは、周囲の人に害を与えるのを防ぐのみならず、精神疾患にかかった患者さん自身を守るため、外部からの刺激を最小限に抑える環境作りなのです。
統合失調症やうつ病などは、眼を離すと自傷・自殺をしてしまう場合があります。通院や自宅での療養では、こうしたリスクを完全にカバーすることはできません。
そこで、他害のみならず、自傷、自殺の危険性がある人を、家族の同意を得て閉鎖病棟に入院してもらうというケースは少なくないのが現実です。首絞め自殺を防ぐためにカーテンの使用が無いことから四六時中、他患者と触れ合う機会が多く接触が避けられない病棟もあるのです。
閉鎖病棟での行動の制限
開放病棟への任意入院の場合は、原則として行動の制限はありません。閉鎖病棟に医療保護入院した場合、病棟からの出入りが制限されるほか、病状によっては、医者の指示の下、身体の自由を拘束される事もあります。閉鎖病棟は、暴力的なリスクから患者さんと家族を守ると同時に、症状の改善を目指して最適の医療を保障するためのやむを得ない環境なのです。
身体拘束とは、布などでできた器具で胴や手足などをベッドに固定する事です。
拘束後は、毎日、精神保健指定医が診察し、病状をカルテに記載することが義務づけられています。改善が認められれば、ただちに解除の指示を出します。必要以上の隔離・拘束は行いません。身体拘束は患者さんの人権擁護のため、手続きは厳格に規定されています。過剰な行動制限にならないように院内に行動制限最小化委員会が設けられています。
なお、電話や面会の自由については、病状に深刻な影響をあたえるおそれがなければ、制限してはならないことになっています。
これらの事から精神疾患を治療する環境においては閉鎖病棟の場合、隔離室で療養生活を送っていかなくてはならない為、空気が循環しにくく病棟環境との相性が悪いことがわかります。だからこそ標準予防策の実施を徹底していく必要があります。
続いてのテーマは・・・・
②精神科の患者さんってどんな方がいるの?
についてです。
他害の恐れがある患者さん
統合失調症の急性期の代表的な症状が妄想と幻覚(主として幻聴)ですが、これが引き金になって暴力や暴言が現れてきます。
妄想や幻聴に唆され、攻撃的になり、他害の恐れがある、と医師が判断した時には、閉鎖病棟に移されることがあります。
自傷、自殺の恐れがある患者さん
閉鎖病棟に入院するのは、自傷・他害のおそれのある患者さんが多くいます。また、他の患者さんへの暴力行為や迷惑行為を行うといった手におえない言動が認められた場合も、閉鎖病棟に移されます。
本人が意識しない自傷的な行為がある患者さん
統合失調症やうつ病などでは、自殺企図や傷行為、自殺念慮といった症状がでてきます。また、無意識のうちに自傷行為を行うケースも少なくありません。
こうした行為を防ぐために、閉鎖病棟に入院するというケースもあります。
重度のアルコール依存症の患者さん
アルコール依存症では、自分の意志をコントロールできず、依存対象に執着し、依存するものを手に入れられない時には、手段を選ばずに手に入れようとします。
認知症の患者さん
脳の機能は、記憶、見当識、言語、認識、計算、思考、意欲、判断力など多様です。認知症ではこれらの脳の機能(認知機能)が持続的に障害され、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態を指します。日常生活場面では、仕事上のミスが増える、以前のように食事を作れなくなる、金銭管理ができなくなる、などの変化が現れます。 知症には、不安、うつ症状、幻覚、妄想、不眠、興奮などの行動・心理症状を伴うことがあります。
認知症の原因は、アルツハイマー病が最も多く、レビー小体型認知症、診断が難しい高齢者タウオパチーなど多数あります。認知症に似た症状を呈するのが、せん妄という状態やうつ病等の精神疾患であり、区別する必要があります。ですから、認知症の状態は、認知症を引き起こした原疾患によって様々です。記憶力障害はほとんどないのに、社会的生活が重度の障害されるようなこともありうるのです。
精神科では整容に気を遣う患者さんもいますが疾患により整容が保てず不潔だったり、マスクを使用しない方が多くまた認知症などで認知機能が低下しているためマスク着用を忘れてしまう方もいます。これらの事から精神科では細心の注意を払って治療や看護を行っていますが、精神科患者さんの特性上感染対策は困難なケースも少なくありません。しかし閉鎖病棟では換気する部分が少ないからこそ、しっかりと換気し標準予防策を徹底しなければなりません。
精神科における具体的なコロナ対策
最後は、精神科における具体的なコロナ対策についてお伝えしていきたいと思います。
❶面会や外出の制限
閉鎖病棟であるという事は不特定多数の人間が出入りしないという側面もあります。コロナが入るとしたら外部からの持ち込みが考えられますから、職員の感染対策の徹底と、家族を制限することで、持ち込みを予防することができます。不要不急の外出泊の制限や、面会をiPadにしてオンライン面会をするなどの対策があります。
❷定期的な検温とPCR検査
体調不良を自ら訴えられない患者さんもいるため、定期的に全員のバイタルサイン測定を実施するとともに、適時PCR検査なども実施するなど対応をする事も必要です。
❸食事や配薬前など汚染された手が口元に近づくタイミングで手指消毒を実施する。
同様に自ら訴える事ができず、セルフケアが不足している患者さんが中にはいるため、適したタイミングでこちらから手指消毒実施を促す
といった対応も必要です。
❹感染症流行期は病棟移動を制限する。
精神科は精神症状に伴い、閉鎖病棟から解放病棟など病棟移動を実施する場合が多いのですが、感染症流行期には患者さんの病棟移動は個室で14日間の経過観察期間を設定してから移動を行う事で病棟間の感染リスクを軽減させる事ができます。
❺新規入院患者さんに抗原検査を実施する。
新たに入院される患者さんには、抗原検査キットを用いて、検査を実施してから診察・入院してもらうことで、外部からのウイルス持ち込むリスクを減らすことができます。抗原検査キットはPCR検査と違いその場で検査結果が出るため、検査の種類を工夫しながら、使用していく事で、急性期の精神症状のある患者さんに早く医療を提供できるなどのメリットがあります。
おわりに
いかがだったでしょうか?このご時世コロナの影響で様々なストレスがかかり、精神科を受診する方も少なくありません。これらのコロナ感染対策をしていく事は迅速な精神科医療の提供に繋がると考えられます。現在も広がり続ける新型コロナウイルス感染症、少しでも早く終息する事を心より願っております。