依存症になりやすい人の特徴は?どんなタイプの依存症がある?


依存症は本人の苦しみと同時に家族など身近な人たちに迷惑が及ぶ困った病気です。では、どんなタイプの人たちが依存症になりやすいのでしょうか。

さまざまなタイプの依存症

特定の何かに心を奪われ、やめたくても、止まらない状態に陥るのが依存です。依存症は大きく物質依存とプロセス依存に分けられますが、このほかに関係依存、共依存と呼ばれる依存があります。

物質依存

アルコールやたばこ、薬物などの物質によって肉体的な快楽や刺激を受けるうちにそれなしに済まされなくなるのが物質依存症です。

このように依存性のある物質の摂取を繰り返すことによって、以前と同じ量や回数では満足できなくなり、次第に使う量や回数が増えていき、使い続けなければ気が済まなくなり、自分でもコントロールできなくなってしまいます。

依存の対象となるのは以下のような物質です。

・アルコール
・たばこ(ニコチン)
・ドラッグ(薬物)

このほか、過食も物質依存症に含まれます。

プロセス依存

ある行為をする過程で得られる興奮や刺激を求めて、その行為にのめり込むところから、行為依存症とも呼ばれています。代表的なものがパチンコ、競馬などのギャンブル依存症です。

最近では、当人は自覚していないもののネット依存、スマホ依存とも呼ぶべき依存が指摘されています。

関係依存

特定の人との関係に依存するのが関係依存です。たとえば、異性への依存、過保護、DV、ストーカーなどがあげられます。

異性への依存は比較的分かりやすい依存ですが、過保護、DV、ストーカーなどは、歪んだ関係への依存で、当事者同士が依存と言う症状に無自覚的であることが少なくありません。

ただし、関係依存までを依存症に含めてしまうと、依存症の範囲が非常に広がってしまいます。DSM-5などの精神医学における診断基準では、関係依存という病名は存在しませんが、現象自体は、確かに存在します。

共依存

関係依存と同じく、病名ではないものの、共依存と言う問題を抱えた依存関係があります。たとえば、アルコール依存症の夫が多大の借金やいざこざを起こす。妻は夫の尻拭いに奔走して、献身するといった依存関係です。

一見、自己犠牲の美談ともいえるような行為ですが、実は妻は、自分の献身を自己目的化して、そのことに価値を見出しているのです。この自己犠牲のどこが問題かといえば、妻は夫を回復させるような活動を拒んでいるということです。

こうした自己中心的な行為をイネーブリングといいます。イネーブリングは、アルコール依存症の家庭に見られるケースで、結果として依存症を悪化させ、夫が自立する機会を阻害しているのです。

なぜ依存症に陥るのか

依存症の原因に関しては、専門機関による研究が進み、以下に示すような要因が指摘されています。

神経生物学的要因

アルコールや薬物などの物質を長期にわたって乱用すると、脳内の神経細胞の機能が変化し、快感や喜びが段々得にくくなります。これを専門用語では報酬効果と呼びますが、報酬効果を得るために、摂取頻度が増え、より多量の物質を使用するようになります。

アルコールの場合、心地よい酔いを得るために飲むアルコール量が徐々に増えていきます。最近の研究結果では、脳内の神経細胞の機能変化が、不安や抑うつ症状の原因になるとされ、それらの精神症状を緩和するために、ますます物質を使用するようになるとの報告もあります。

条件づけと使用欲求

夏の暑い日盛りに焼鳥屋で生ビールをぐいっと飲んで、ふっーと息を吐く。あるいは、ストレス発散のために飲んだいっぱいで気持ちが落ち着いた・・・。

このような心地よい体験を味わうと、この報酬体験が次の行動の起因となり、習慣化されるという説です。

要するに、癖になって、やめるにやめられなくなり、そのうち焼鳥の匂いを嗅いだだけでビールを飲みたくなってきます。

こうした欲求は、依存症の発症と持続に関係するだけでなく、再発にも関与することが報告されています。

社会学習理論

生育環境や社会環境から受ける影響によって嗜癖行動が増進されるという理論です。

例として、子どもの頃に周りの大人たちがお酒を楽しく飲んでいる状況を見ていると、お酒は美味しくて楽しくなるものなんだと思いこみます。つまり、生育環境の中で、アルコールやたばこなどのプラスイメージが刷り込まれるわけです。

遺伝的要因

物質依存発症のしやすさと遺伝との関連は近年の研究で報告されています。アルコール依存についていえば、依存者の約3人に1人がアルコールを乱用する親を持っており、アルコール依存の父を持つ子どもの4人に1人は、自身がアルコール依存になりやすいといわれています。

双子研究ではアルコール依存の一致率は二卵性より一卵性の方が高い結果も得ら、アルコール依存の発症に遺伝要因が占める割合はおよそ2分の1から3分の2と推定されています。アルコールに強い人は、アルコールを体内で分解する酵素を生来多く持っています。この体質が遺伝することで、アルコール依存症になる確率が高くなるということです。

精神疾患と関連して発症することもある

うつ病や不安障害などの精神疾患がもとで依存症を誘発するケースがあります。

この合併のケースでは、以下のような4つのケースが考えられます。

1) ストレス、性格・遺伝因子など、共通の原因による単なる合併。
2) 憂うつな気分や不眠など、うつ病の症状や不安な気分を緩和しようとして飲酒した結果、アルコール依存症を併発するケース。
3) 長期の大量飲酒がうつ病を併発するケース。
4) アルコール依存症の人が飲酒をやめることで生じた離脱症状(禁断症状)の一つとしてうつ状態が見られるケース。

今回のテーマに該当するのは(2)のケースですが、時間的経過で見れば、うつ病が先行してアルコール依存症が合併するケースです。これとは逆にアルコール依存症が先行してうつ病を併発するのが(3)のケースです。

依存症になりやすい人

以前の研究では、依存症になりやすい性格や人格に関連する説もありましたが、近年では特定の人格と依存症を結びつける説は聞かれなくなってきています。むしろ、物質に依存した結果としてある特定の人格傾向になる可能性が大きいとされています。

とはいえ、依存症になりやすい心の状態というのはあります。そこで、どういう心の状態にい入る人が依存症になりやすいのか、という観点でまとめてみます。

強いストレスを感じている人

ストレス発散などの手段として酒やたばこといった物質を摂取しはじめ、そのうちに依存症になったというケースは少なくありません。

従って、日頃から強いストレスを感じている人はそのストレス発散の方法も強く、激しくなりがちですから、依存症リスクを背負っているということになります。

満たされていない人

先に述べた依存症の原因を読むと、一度、物質に依存して心地よい体験をした人は、依存症にいたるリスクに接したということができるでしょう。しかし、すべての人が、癖になって依存症になるわけでもありません。この差はどこにあるのでしょうか。

多くの専門家が指摘するのは、心の状態の差です。中でも、日ごろから強いストレスにさらされ、心が満たされない状態にある人は、ついついストレス発散の方便として、アルコールに強く依存し、依存症になるリスクがより高くなってきます。

孤独感の強い人や劣等感に悩まされている人も、同じように憂さ晴らしの手段として、アルコールや時には薬物に依存し、依存症への道を歩み始める傾向があります。

苦しかったとき「松葉杖」を手にした人

ある専門家は、薬物を「松葉杖」にたとえて、薬物依存になった人の経緯を説明しています。それによれば、薬物依存になった患者の多くは、薬物が生きづらくて苦しい状態を解消する作用をもっていた。

つまり、アルコールや薬物が「松葉杖」となって彼らの生きづらさを補い、助けてくれていたというわけです。そうなると、松葉杖を手放すことが出来なくなり、気が付けば依存症ということになります。

男性よりも女性の方が進行が速い

ギャンブル依存症の原因について、まだはっきりとしたことはわかっていませんが、幼少期や青年期のギャンブル体験は、ギャンブル依存症のリスクを高めるとされています。

また、性別でみると男性に多い傾向がありますが、一方で女性の場合は、男性よりも依存の進行が早いと言われています。

自覚しにくいプロセス依存

依存症は自己コントロールができない病気ですが、物質依存によるアルコール依存症や薬物依存症の多くは自分が病気であることを自覚しています。ところが関係依存の場合、病気の境界線があいまいなこともあって、自分が依存症の状態であることの自覚が希薄です。

ですから、ちょっとハマり過ぎ、という感じに襲われたら、自分の振る舞いを冷静に振り返ってみる必要があります。

全国に依存症の治療を専門的に行う医療機関がありますし、特定の依存症の治療を得意とする医療機関もあります。地域の保健センター、保険所、精神保健福祉センターに相談して、医療機関を教えてもらい、早期に治療に取り組むことをお勧めします。


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