うつ病を発症させないために気をつける9つのポイント【予防】


うつ病は、「心の風邪」と比喩されることがあります。それは、うつ病が軽い病気であるということではなく、誰でも発症する可能性があるという意味で使われています。また、風邪と同じようにこじらせると大病につながるという意味も含んでいます。

年々増えるうつ病

うつ病を軽くみてはいけない

憂うつで気分が落ち込む、すべてがむなしく思えてきて何となく悲しくなる、やる気がなくなるなどの落ち込んだ暗い気分に支配されるのがうつ病です。眠れない、食欲がない、疲労や倦怠感がとれないという身体症状もあらわれてきます。

また、脳の機能障害によって発症していますから、脳がうまく働かず、考えることが出来なくなり、ものの見方が否定的になり、あるいは自分を責める自責念慮とか、自殺を考える希死念慮といった症状もでてきます。

このように症状に幅があるのがうつ病の特色ですが、症状が悪化すると希死念慮があらわれてきますから、うつ病を軽く見てはいけません。

15年で2.5倍

厚生労働省が3年ごとに全国の医療施設に対して行っている「患者調査・平成26年」によると、うつ病等の気分障害の総患者数は111万6000人です。15年前の平成11年の44万1000人に比べると2.5倍に増えています。このうち63%が女性です。

この調査では受診をしている患者で統計を出していますが、うつ病患者の受診率の低さから考えると実際はさらに多くの患者がいると推測できます。ちなみに、これを年代別にみると働き盛りの40代では、19.6%に達していますが、最近の傾向としては30代の患者の増加がめだっています。

うつ病予防のための9つのポイント

ポイント1 ぐっすり眠る

睡眠不足や不眠は万病のもとですが、うつ病予防の場合、まず、ぐっすり眠ることが最優先の対策です。

睡眠はストレスに対して有効で、回復効果があります。一日で溜めたストレスを睡眠で回復させ、蓄積させないことは非常に大きな予防効果になります。

逆に睡眠時間が足りていない場合、ストレスが蓄積していき、うつ病や不眠症などの原因になってしまいます。

睡眠不足になると、自律神経のバランスが崩れてしまいます。その結果セロトニンの分泌量が少なくなり、うつ病発症しやすくなるといわれています。セロトニンは脳内神経伝達物質の一つで、ドーパミン、ノルアドレナリンを制御し、精神を安定させる働きをします。

ぐっすり眠るためには、起きる時間を毎日固定し、昼間はなるべく体を動かし、体に適度の疲れを負荷するのも一つの方法です。

ポイント2 毎日、日光浴

都会に住んで仕事をしていると、陽が燦々と照っているのに、外に出てゆったりと陽の光を浴びるということがなかなかできません。昼休みの時間などを利用して、公園や会社の屋上などで日光浴をするようにしましょう。

日光浴のメリットは二つあります。一つは、陽の光を浴びると脳内の神経が刺激され、セロトニンが分泌され、副交感神経が刺激され体がリラックス状態となります。より多くのセロトニンを分泌させるには朝の日光浴が効果的だと言われています。

一つはビタミンDが生成されます。ビタミンDは脳機能を活性化し、記憶力、集中力、判断力が高まるとされています。

ポイント3 規則正しい生活

すごく当たり前のことですが、これがなかなか実行できません。

また、気分がイラついていると、ついつい暴飲暴食にはしったりします。決まった時間に起きだし、夜更かしを避けて就寝し、三度の食事を守るようにしましょう。

実際、うつ病を発症している人の多くは、生活リズムが乱れています。

ポイント4 バランスのよい食生活

規則正しく、バランスの良い食事をとることも重要です。これはうつ病予防に限らず、健康生活を営む上でのセオリーといってもいいでしょう。1日3食、決まった時間に食事をとることを心がければ、おのずから生活にリズムができて、心身ともに安定してきます。

先にセロトニンの効果を述べましたが、セロトニンは体内で貯蔵できないため、食物から摂取することになります。セロトニンを体内で生成する栄養素は、必須アミノ酸のトリプトファン、ビタミンB群、炭水化物の三つです。トリプトファンは、タンパク質を多く含む食品に含まれており、肉類・魚類・乳製品・大豆製品に多く含まれています。

ビタミンB群は、以下のような食物に含まれています。

ビタミンB6:かつお・まぐろ・レバー・バナナ
ビタミンB9(葉酸):ほうれん草・からし菜・枝豆・レバー
ビタミンB12:貝類(あさり・しじみ・あかがいなど)・レバー

ポイント5 有酸素運動でひと汗かこう

有酸素運動とは、酸素を多く取り入れ、その取り入れた酸素で体内の脂肪を燃焼させるための運動をさします。ジョギング・ウォーキング・水泳などが有酸素運動になります。

休日に時間を作って、公園でジョギングしてひと汗かくようにしましょう。汗と一緒にストレスが蒸発してしまうような爽快な気分になるはずです。

ポイント6 ストレス発散

ストレスを溜め込まない、というのもうつ病の予防の重要ポイントです。仕事にストレスはつきものです。

大切なのは、自分に合ったストレス発散の手法を身に付けるということです。誰にでもできて、今すぐに始められるストレス発散法の一つが、先に上げた運動です。

38度~42℃のぬるま湯に20分前後ゆったりと浸ると体がほぐれるばかりではなく、心もほぐれてきます。これも身近なストレス発散です。

アロマテラピーもお勧めのストレス解消法です。アロマテラピーは鎮静作用があるハーブなど植物の香りを利用する芳香療法のことですが、ストレス解消に効果的な香りはカモミール、ラベンダー、ローズ、オレンジ・スイートなどがあげられます。

ストレスの原因を誰かに聞いてもらうこと。つまり、気の置けない親しい人に愚痴をこぼすのもストレス解消につながります。

そんな相手がいない場合、心の中に蓄積されている愚痴や悩みや不安を全て吐き出すように書きだす方法があります。心理学ではジャーナリングといいますが、気持ちを紙の上に吐き出すことで徐々に気持ちが落ち着き、自分を受容できるようになるといわれています。

ポイント7 定期的にリラックス

リラックスとは、ストレスがある状態とは逆に「心と体の緊張が解けて安らかな状態」を指します。

定期的にリラックスタイムを設けて、心と体の緊張をほぐしましょう。ただし、リラックスした状態になるためには、意識的にリラックスする方法をトレーニングすることが大切です。

簡単に習得できる腹式呼吸によるリラックスの方法を紹介します。できれば、起床後に行い、習慣化したいものです。

①肩の力を抜いて座る(立ったままでもかまいません)。
②肩を動かさないようにして、おなかに手を当てて行う。
③吸った時間の約2倍の時間(目安:6秒間)をかけて、口から息を吐ききる。
④おなかがへこみ、横隔膜が上がるのを感じる。
⑤1秒間(目安)息を止めたあと、鼻から息を吸い込む(目安:3秒間)
⑦おなかが膨らみ、横隔膜が下がるのを感じる。
⑧これを繰り返します。

ポイント8 考え方を見直す

うつ病の治療では、薬物療法と並行して認知行動療法がおこなわれます。うつ病の人は出来事の捉え方や考え方が、悲観的です。

このうつ病患者に特有の認知のパターンを修正するのが認知療法です。認知療法では、感情を出来事からくるものと捉えずに、考え方からくるものと捉えるようにすることで認知の歪みを修正し、悲観的な考え方にならないようにします。

この認知療法の基本をうつ病予防として、日ごろから実行しましょう。

うつ病になりやすい人は、「~しなければならない」とか「~すべきだ」と思い込む傾向が強いとされています。こういう固定観念があると、独断的な思い詰めに捉われ、ストレス環境の中で認知に歪みがでてきます。

もっと柔軟に、完璧を求めるのでは、自分にあった、自分を楽にするような考え方でものごとを見つめるように訓練することが重要です。

ポイント9 悩みを抱え込まない

ざっと、うつ病予防のポイントをあげてきましたが、それでも、今、自分が抱えている悩みや不安の解消につながらないとなったら、それを自分一人で抱え込まないことです。

ここから先は、専門家の出番です。
精神科の医療機関に相談し、医師の指示に従って、治療に取り組んでください。

うつ病かなと思ったら

うつ病かなと思ったら、専門の医療機関で治療に取り組むことになりますが、最後にうつ病の診断基準をあげておきましょう。うつ病の診断基準では下記の9項目のうち5つ以上の症状が認められ、2週間以上持続しているとうつ病と診断されます。

①憂うつになり気分で、落ち込む
②何をしても楽しく感じられない(興味、喜びの著しい減退)
③体重や食欲の増加か減退
④不眠または過眠
⑤身体の動きが遅くなり、口数が少なくなる(精神運動焦燥または制止)
⑥疲れやすく気力も減退
⑦生きている張り合いが感じられなくなり、自分はダメだと責めたてる(無価値観、または過剰か不適切な罪責感)
⑧思考力と集中力減退、決断困難
⑨死んだら楽になるかと考えてしまう(死についての反復思考)

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