発達障害者の適職は?離職率からみる一般雇用の難しさ


上司や同僚、お客さんとのコミュニケーションがうまくいかない、仕事が覚えられない、段どりが悪いなど普段の何気ない日常で悩みを抱えている方は多くいます。

そういった方は、仕事ができないのは自分がしっかりとしていないからと自分自身を責めたり、辛い状況に置かれがちです。

いわゆる発達障害とは、生まれ持った発達上の個性があることで、日常生活に困難をきたしている状態をいいます。仕事での失敗は、決して努力不足ではありません。

発達障害をお持ちの方には、向いている職業、向いてない職業があります。向いてない職業でも、働いている方はいますが、もしも現職が向いてない職業であり、仕事で悩んでいる方がいれば向いている職業に転職を考えてもいいかもしれません。

発達障害とは?

発達障害の代表的なものとしては、自閉症スペクトラム(広汎性発達障害)、限局性学習症(学習障害)、ADHD(注意欠如多動性障害)があります。発達障害は互いに合併することが多いです。また、成人期にはうつ病や統合失調症など精神障害に合併することも少なくありません。

自閉症スペクトラム(広汎性発達障害)

自閉症スペクトラムは「対人関係の問題」と「こだわりの問題」が強くみられます。

対人関係の問題

・ 通常の会話のやりとりが苦手、ほかの人と感情を共有することが少ない
・ 相手の表情や身振り手振りから、気持ちを読み取ることが苦手
・ 実際に目の前にないものや、架空の事柄を想像したり空想することが難しい
・ 仲間に対する興味が薄い

こだわりの問題

・ 物を並べたり、叩くといった単調な行動を繰り返す
・ 同じ習慣への強いこだわりがあり、少しの変化にも苦痛を感じる
・ 興味の範囲が狭く、特定のものにこだわる
・ 聴覚、嗅覚、触覚、視覚など、特定の感覚が非常に敏感または鈍感

限局性学習症(学習障害)

限局性学習症は、知能には大きな問題がないにも関わらず、「読む」、「書く」、「計算する」といった学習技能のいずれか1つ以上がうまくできない状態をいいます。

読むことの問題

・ 誤った発音をする
・ 文章の文字や単語を抜かして読む
・ 読んでいるものの意味を理解することが難しい

書くことの問題

・ 誤った文字を書く
・ 句読点を間違える
・ 単語の中に誤った文字が混ざる
・ 文法的な誤りの多い文章をかく

計算することの問題

・ 数の感覚、計算の正確さに困難がある
・ 数学的推理の正確さに困難がある

ADHD(注意欠如多動性障害)

ADHDは多動性、衝動性、不注意の問題が強くみられます。ADHDは自閉症スペクタラムなどの他の発達障害や精神疾患などが併発していることも少なくありません。

多動性

・ 落ち着かない
・ 貧乏ゆすりなど、目的のない動き

衝動性

・ 思ったことをすぐに口にしてしまう
・ 衝動買いをしてしまう

不注意

・ 仕事などでケアレスミスをする
・ 忘れ物、なくし物が多い
・ 約束や期日を守れない、間に合わない
・ 時間管理が苦手
・ 仕事や作業を順序立てて行うことが苦手
・ 片付けるのが苦手

一般雇用で働く人の離職率

発達障害のある人の40%が学校教育終了後に一般雇用で企業に就職しているというデータがあります。しかし、その多くの人は一度離職をし、障害者雇用に切り替えています。

学校教育終了後の就職状況と、現在の就職状況を比較すると一般雇用が10%減、障害者雇用が15%増加していることが厚生労働省の調査でわかっています。

こちらは発達障害のある人の一般雇用の離職率を調査したものです。1年以内に離職する方は37.5%になります。多くの人が1年以内に問題を抱え、離職していることがわかります。

継続期間 継続 離職
~6ヶ月未満 1.6% 17.2%
6ヶ月以上~1年未満 10.9% 20.3%
1年以上~2年未満 4.7% 7.8%
2年以上~3年未満 1.6% 4.7%
3年以上~5年未満 12.5% 6.3%
5年以上~ 3.1% 7.8%
無記入 20.3% 1.6%
34.4% 65.6%

障害者雇用で働く人の離職率

一般雇用では1年以内に離職する人は37.5%でした。一方で、障害者雇用ではどうでしょうか。

こちらは発達障害のある人の障害者雇用の離職率を調査したものです。1年以内に離職する方は5.0%です。一般雇用と比較すると多くの方が継続して働けていることがわかります。

継続期間 継続 離職
~1年未満 15.0% 5.0%
1年以上~2年未満 20.0% 10.0%
2年以上~5年未満 10.0% 5.0%
2年以上~3年未満 1.6% 4.7%
3年以上~5年未満 12.5% 6.3%
5年以上~ 30.0% 0.0%
無記入 5.0%
75.0% 25.0%

職場でよく注意されること

発達障害を持つ人が職場でよく注意されることを調査したものです。いくつかは発達障害が原因の可能性が考えられます。

項目 人数 比率
仕事のミス 54 47.0%
仕事が遅い 35 30.4%
段取りが悪い 21 18.3%
いちいち指示されないとできない 16 13.9%
不器用 15 13.4%
言葉づかいの悪さ 9 7.8%
遅刻 7 6.1%

発達障害をもつ人に向いてる仕事

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発達障害をもつ人は、専門的なスキルが必要な仕事に向いてる傾向があります。IT関係、科学関係、免許によって保証される仕事は成功しやすいといわれています。視覚認知に優れていることが多いので芸術関係も向いています。特殊領域の翻訳業、起業家として成功している人もいます。先生と呼ばれる職業が向いているといえるでしょう。

向いている職業

・ 起業家
・ 研究者
・ 教育者
・ 学者
・ 警察官
・ 消防士
・ 記者
・ 作家
・ 画家
・ 翻訳家
・ イラストレーター
・ デザイナー
・ コンピュータプログラマー
・ Webデザイナー
・ 清掃
・ 倉庫内作業
・ 調理師

発達障害をもつ人に向いてない仕事

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すべての人が向いていないとは言えませんが、多くの発達障害をもつ人は「環境がめまぐるしく変わる職場」、「臨機応変や応用力を実用とする仕事」、「対人関係のスキルを必要とする仕事」は避けたほうがいいでしょう。

向いていない職業

・ 接客業
・ 事務
・ 経理
・ 人事
・ 営業
・ 総務

悩みは専門の機関に相談しましょう

診断を受けたい

精神神経科、心療内科などの医療機関を受診しましょう。
こころの発達支援室は、発達障害の総合相談窓口です。診断・検査からニーズに応じた支援まで対応しています。

具体的な対策を知りたい

発達障害者支援センター、地域療育センター、総合精神保健福祉センター、自治体の福祉担当窓口などは、日常生活の問題や障害者手帳について聞いたりと、様々な対応をしてくれます。

就労について相談したい

地域障害者職業センター、就労移行支援などは就職に関して悩んでいる方にむけて相談にのってくれます。
就労移行支援事業所Job庵では、Webデザイン養成プログラムなど発達障害を得意としています。

まずは障害者雇用の検討を

現在、一般雇用で働いていて仕事に悩んでいる人は障害者雇用を検討してみてはいかがでしょうか。

離職率を見ると発達障害をもち、一般雇用で働いている人の多くは仕事が合わなくなって辞めてしまう傾向があります。向いていない職業であっても、障害者雇用であれば周りの理解もあって、上手く行く可能性は高いです。障害者雇用は障害者手帳が必要です。まずは、診断が必要になってくるので掛かりつけの病院で聞いてみましょう。

まずは自身の障害を理解することが大切です。それから、どう対策をしていくか考えましょう。

参考:発達障害のある人の就労の現状と課題 – 厚生労働省


就労移行支援事業所Job庵をご紹介

精神疾患・発達障害をお持ちで就職で悩んでいる方は就労移行支援の利用をおすすめします。
就労移行支援事業所Job庵では、就職活動でお悩みの方のご相談をお引き受けしております。
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