障害年金は、年金加入中に病気やけがをして日常の生活や仕事に支障をきたした人を対象に支払われます。十分に働けなくなると収入が減ってきます。このような所得の減少に対する保障と家族の生活をサポートするために支払われるのが障害年金です。
障害年金を申請するための条件
障害年金を受給するためには、①初診日要件、②保険料納付要件、③障害認定日要件、④ 障害等級該当要件の4つの要件を満たすことが大前提です。
④、③の要件については、以前にアップしたこちらのページを参考にしてください。
④の障害等級要因というのは、障害年金の対象となった傷病と症状の重さに該当するかどうかの要件です。
障害で生活、仕事に支障が出ている特定の障害
すべての障害が障害年金の対象となるわけではなく、障害によっては生活や仕事に支障が出ているということと、その障害の重さが一定のレベルにあることが不可欠の条件です。
障害の重さに応じて1級、2級、3級(障害厚生年金のみ)の等級が定められていて、該当する等級に応じた金額が支払われます。この条件を満たす障害であれば、ほとんどすべての傷病が対象となっています。
具体的には、発達障害や知的障害などの先天性の障害、手や足切断などの肢体の障害のほか、 糖尿病や脳血管疾患、癌、うつ病や若年性アルツハイマーなどの精神疾患、パーキンソン病などなどが該当します。
ちなみに、総務省の統計によると、傷病カテゴリ別で見た受給者の割合は、精神障害31.0%、知的障害23.2%、脳血管疾患8.1%となっています。
初診日に年金に入っている
冒頭にふれた①~③の要件について簡単に触れておきます。
初診日要件と言うのは、当該の傷病を医師に最初に診察してもらった日のことで、この日に国民年金か厚生年金(共済年金)に加入していたかどうかという要件です。
国民年金に加入していたら障害基礎年金(定額)が支払われ、厚生年金に加入していれば、障害基礎年金に厚生年金の報酬比例部分が上乗せされて支払われます。
年金をしっかり払っている
保険料納付要件というのは、初診日に国民年金か厚生年金(共済年金を含む)に入っていて、一定の保険料を納付していたかどうかという要件です。
具体的には、以下の要件を満たした要件です。
2)初診日の属する月の前々月迄の過去1年間に年金保険料滞納月が無いこと。
初診日から1年6か月たっている
原則として、初診日から1年6か月後が「障害認定日」です。障害認定日とは、障害年金の請求資格が発生する日です。
障害認定日を超えてからでないと、障害年金は請求できないということです。
基本的に20歳になってからもらえる
障害年金は、基本的に20歳になってから支給されます。20歳の誕生日の前日が、障害年金の受給資格となる障害認定日となるわけです。
ただし、誕生日が初診日から1年6か月以内である場合は、初診日から1年6か月たった日が障害認定日となります。たとえば、19歳の誕生日の時が初診日であったとしたら、1年後の20歳の誕生日ではなく、1年6か月後の20歳と6か月たった日が障害認定日になります。
障害年金の手続き、申請方法
条件を満たしているか確認する
障害年金を請求するにあたっては、先に上げた4つの要件を満たしているかどうかを確認しなければなりません。4つの条件のうち一つでも要件を満たしていなければ、障害年金を受け取ることはできません。
なかでも重要なのが、初診日です。初診日の確定からすべての手続きは始まります。
必要書類の取得、作成
障害年金の受給を請求するためには、複数の書類を作成しなければなりません。4つの要件を満たしていても、初診日がわからないとか途中で転院したとかの事情があると提出書類も増え、かなり厄介なことになります。
自力で作成することも可能ですが、手に余るようであれば、民間の障害年金相談センターや社会保険労務士などに依頼することも考えなければなりません。
作成しなければならない主な書類と添付書類は、以下のようなものです。
●診断書
●受診状況説明書(診断書作成病院と初診病院が異なるときに提出)
●受診状況説明書が添付できない申立書カルテがなく初診医療機関で受診状況等証明書が提出出来ないとき)
●病歴・就労状況申立書
●年金手帳
●戸籍謄本、戸籍抄本、戸籍の記載事項証明、住民票、住民票の記載事項証明書のいずれか
●受取先金融機関の通帳(本人名義)
●印鑑
●身体障害者手帳
このほか、20歳未満で障害の状態にある子どものケースや交通事故が原因で障害をうけたようなケースでは、それぞれの状況や事故の証明に関わる書類の作成が必要になります。
書類の提出先
役場の年金の窓口、あるいは年金事務所で必要書類をもらい、記載事項を記入した上で、住所地の市区町村役場の窓口に提出します。
なお、初診日が国民年金第3号被保険者(サラリーマンの被扶養配偶者)の期間中であれば、最寄りの年金事務所に提出します。
一度審査が落ちても絶対ではない
提出した書類が全て受理されるとは限りません。審査に通らないケースがしばしばあります。
それは書類の不備であったり、障害の認定の問題であったりしますが、一度審査に落ちても再審査の手段が残されていますから、正当な資格をもち、どうしても受け取る必要がある場合は、障害年金の専門家に相談し、再審査への手立てを考えてください。
障害年金を受け取るまで
初診日によって申請する年金の種類が変わる
現在、年金は国民年金と厚生年金(共済年金を含む)の2本立てで運営されています。年金の額は、初診日にどの年金に加入していたかによって変わります。
初診日にサラリーマンであった人で、後に脱サラして自営業になった人は、サラリーマン時代は厚生年金、自営業の時は、国民年金です。このケースでは、初診日に加入していた障害厚生年金になります。
基礎年金と厚生年金で等級の幅が異なる
障害年金には、障害の支障の大きい順から1級、2級、3級に区別されています。1級は常日頃から助けが必要で、ベッド周りぐらいのことをいくらかできる程度、2級は家の中での軽い作業ぐらいならできる程度、3級は仕事に支障が出る程度となっています。
国民年金に加入している自営業の人に支払われる障害基礎年金は、1級、2級しかありませんが、厚生年金に加入しているサラリーマンなどには、3級があります。つまり、3級のない自営業の人たちの方が、要求される障害の程度が厳しくなっているわけです。
厚生年金の審査のほうが厳しいともいわれている
障害年金の請求書は、受給の適否が審査されたのち、審査にパスすれば、年金証書が届きます。
請求から受理されるまでの期間は、障害基礎年金で2~3ヶ月、障害厚生年金で3ヶ月から半年というのが相場のようです。
この審査の長短から類推して、厚生年金の方が、審査が厳しいという見方もあります。
精神障害のほうが審査は厳しい?
身体的障害よりも精神的障害の方が審査は厳しい、ということも言われていますが、確証はありません。
ただ、先にふれたように、傷病カテゴリ別で見た受給者の31%が精神障害です。請求件数が多ければ、受理されない件数も多くなるというのは事実でしょう。
地域によって支給格差があることも
障害年金の地域格差は、新聞でも報じられました。厚労省が平成22年~24年までの3年間について不支給になった障害基礎年金の割合を都道府県ごとに調査した結果、不支給率が最も高かったのは大分県の24.4%、最も低かったのが栃木県の4.0%でした。
不支給になった障害の種別では精神障害・知的障害が67%を占めています。先にふれた精神障害の審査が厳しいというのは、こうしたデータに基づくものと思われます。
わからないことは相談を
障害年金の手続きは、複雑です。とくに初診日がわからないとか請求に不可欠の書類が見当たらないということになると、素人では手におえなくなってしまいがちです。
そんなときは、医療機関に相談してみてください。医療機関でアドバイスすることもあれば、障害年金に詳しい社会保険労務士を紹介してくれることもあります。
ちなみに、社会保険労務士は、労働、社会保険などの書類作成、手続き代行等の専門家です。