てんかんの患者は日本全体で60万人~100万人いると推定されています。誰でもなる可能性のある病気ですが、てんかんはまた合併することの多い病気としても知られています。
では、どのような病気を併発するのでしょうか。
目次
てんかんは発作が起きる疾患
てんかんは、突然意識を失う「てんかん発作」を繰り返す病気です。大脳の神経細胞(ニューロン)は一定の規則正しいリズムで活動していますが、この神経細胞が、突然一時的に異常な電気活動(電気発射)を起こすことにより生じるのがてんかん発作です。脳の電気的嵐と言われるゆえんです。
てんかんは大きく「症候性てんかん」と「突発性てんかん」に分けられます。症候性てんかんは、生まれた時の仮死状態や低酸素、脳出血、脳梗塞、脳外傷など、脳に何らかの障害や傷を起因として起こります。突発性てんかんは、異常が見つからない原因不明のてんかんです。
このようにてんかんは、原因がわかるものとわからないものがありますが、多いのは原因不明のてんかんです。
発達障害は低年齢で発症する障害
発達障害の症状は、先天的な脳機能障害が原因となって生じます。その結果、一部の能力が一般的な能力に満たないという、極端な能力の偏りが生じます。
しかし、なぜ脳の機能障害が引きおこされるのかについては、まだ完全に解明されていません。ちなみに、発達障害者支援法では、発達障害を以下のように定義しています。
広汎性発達障害と遺伝の関係
広汎性発達障害とは、アスペルガー症候群や自閉症などを含む発達障害の分類ですが、この障害では遺伝的要因も考えられています。たとえば、同じ遺伝子情報を持つ一卵性双生児間では発現率が5~7割ほどという研究結果があります。
双方ともに脳に原因をもつ病気
てんかんをもつ子どもの一部には運動面や精神面、あるいは両面での発達の遅れが認められることがあります。
その原因として、双方とも脳に原因があり、先天的な、生まれつきの要素が強いからだと考えられています。
このほか、てんかんの発作に伴うストレスを起因としてうつ病を併発するケースもあります。
てんかんと合併する病気
てんかんと発達障害は併発率が高いのですが、てんかん発作を起因としてうつ病や不安障害などの精神疾患を併発するケースがあります。
知的障害
知的障害は、精神遅滞とも呼ばれますが、知的発達の障害です。てんかんと知的障害の併発は良く知られているところです。
中でも重度の知的障害と身体障害をもつ「重症心身障害」では、およそ30から60%にてんかんを合併するとされています。
発達障害よりも併発率が高いのは、元々の病気である脳の障害に左右されるところが大きいようです。
うつ病
てんかんはうつ病とも合併しがちです。うつ病は、てんかんと同じように脳の機能障害で発症するところから、脳が原因で発症するからだと考えられています。
また、てんかんの患者は、てんかん発作という厄介な発作を抱えているためストレスがたまり、これがうつ病を誘発するとも言われています。
不安障害
不安障害というのは、不安を主症状とする精神疾患群をまとめた総称です。何度も手を洗わずにいられない強迫障害、対人恐怖症、パニック障害などがその代表的なものです。
てんかんの患者の多くは、また発作があるのだろうか、という不安を抱えています。また、日常生活は薬と制限だらけで、てんかんに対する偏見にも晒され、ストレスはたまる一方です。
このようなてんかんの二次的症状が発達障害を誘発すると考えられています。
てんかんとの併発で気を付けるべき点とは?
早期治療に取り組む
発達障害などの先天的な障害は、根治することはできませんが、たとえばアスペルガー症候群と診断された場合は、個別や小さな集団での療育を受けることによって、コミュニケーションの発達を促し、適応力を伸ばすことが期待できます。また、療育を経験することによって、新しい場面に対する不安が減り、集団活動に参加する意欲が高まるという効果も期待できます。
てんかんは、現在では、適切な薬による発作のコントロールも可能になっています。できる限り早期にてんかん発作を抑制する治療に取り組むようにしましょう。
生まれつきの素養に適した環境づくりを
発達障害やてんかんといった先天的な障害は、生まれ持った素養のようなものだと考えることもできます。従って、そうした素養に適さない環境を避けるようにしたいものです。
また、てんかんの二次的な症状として発症したうつ病や不安障害など精神科の領域になる疾患は、これも早期に治療に取り組むようにしましょう。
てんかんでも障害者保健福祉手帳が取得できる
精神障害者保健福祉手帳は、福祉サービスを受けることができる手帳です。てんかんの患者さんもその対象となっています。
障害者としての配慮を受けることが結果的にプラスにも
てんかんなどの障害をもって生きていくのは、健常者と比べて物心両面で大きな負担がかかります。そうした負担をいくらか軽減してくれるのが、障害者保健福祉手帳です。
自分が「精神障害者」とされることに抵抗感のある人もいるようですが、こうした公的な福祉サービスを受けることで、心労も減り、他の精神疾患への誘発防ぐことにもつながります。
ちなみに、精神障害者保健福祉手帳を持つことのメリットは、以下の3点に要約できます。
2)各種サービス・割引を受けられる。
3)税の減免・控除や給付。
詳しくは下記ページをご覧ください。
精神障害者手帳のメリットとデメリットと割引されるサービス一覧
早期の発見、早期の療育、早期の治療
てんかん、発達障害の多くは、低年齢時にあらわれてきます。いちはやく兆候に気づき、正確な診断のもとで早期に治療・療育に取り組むことが重要です。
そのことによって、他の疾患との併発を防ぎ、負のスパイラルに陥るリスクを避けることができます。