精神障害を抱えている人が、就労移行支援などを利用して一般企業への就職を目指す場合、大きな関門となるのが面接です。就職面接は、健常者でも緊張しますが、精神障害を抱えている人はコミュニケーションが苦手な人が多いのでなおさらです。加えて、自分の病歴をどのように説明したらいいのだろう、という精神障害者ならではの問題を抱えています。
そこで、よく出る質問を抽出して、面接対策をまとめてみました。
精神障害という病歴に関する質問
Q1:どんな障害で、いつごろ発症されたのですか
この質問は、障害者の方にとっては、「覚悟」の上の質問ですが、忘れてならないのは、企業の方でも被面接者が抱えるハンディキャップを「承知」の上での質問だということです。
回答のポイントは、過去、現在、未来に関して的確に話すことです。
1)発症の時期、経緯、診断名を話す(過去)
2)現在の症状、通院先、服薬の状態を話す(現在)
3)今後どのような経緯が予想されるか、医師の見解などを交えて話す(未来)。
Q2 配慮してほしいことと、障害の特性について教えてください
この質問の真意は、被面接者の能力を生かして働いてもらうために、会社としてはどんな準備をすればいいかを探ることです。
ですから、働くにあたって心配なこと、不安なことを正直に話すように心がけましょう。
その際、要求するという態度ではなく、「できれは、相談できる人との時間を設けていただくとありがたいのですが・・・」という具合にへりくだって話す方がいい印象を与えるはずです。
配慮して欲しいことや障害特性についてのポイントは以下の3点に要約できるでしょう。
1)相談できる人と時間を設けて欲しいこと。
2)診断と薬の補充のため通院日が必要なこと。
3) 漠然とした指示だととまどうことがあるなど、障害の特性に理解のある指示をしてほしいこと。
Q3 症状が悪化するときはどのようなサインがありますか?また、対処方法を教えてください。
同じ精神疾患でも、人によりサインが異なります。会社としては、そのサインを把握した上で、症状を悪化させないためのフォロー体制を用意しておきたいという意図のもとに行われる質問です。
正直に話しましょう。
そのためには、事前に話す内容を整理しておくことがポイントです。
たとえば、こんな具合に―。
「普段だったらしないようなことをしてしまう事が続くことがあります。そういった時は体調が崩れやすくなってしまいます。生活リズムが崩れる日が続くと、ぼうっとして、行動を起こせなくなったりします。ですから、いつもと違う様子だな、と気づかれたら、声をかけてもらったり、お話していただけると助かります」
Q4 服薬やその頻度などにについて教えてください。
どのくらいの頻度で薬を飲んでいるかの質問です。また簡単な作用・副作用(眠気など)を聞かれるかもしれません。
医師の指示に従ってきちんと服薬していることを強調しましょう。
「医師に相談しながら1日○回服薬、何かがあった時に頓服薬を服薬するなど、薬管理を行っています。そのため気分の浮き沈み等なく過ごせています」
現在の生活ぶりに対する質問(中見出し変更)
Q5 最近の調子はいかがですか。
入社後に安定して出勤できるかどうかを知りたいがための質問です。
アルバイトや就労移行支援所などにスケジュール通りこなしているなど、働くことに支障がないことを伝え、働きたい意欲も伝えましょう。
「就労移行支援に通って、働くために必要な知識、技能、そしてマナーなどを学んでいます。とにかく、働きたいので、週○回、休まずに通っています」
Q6 ストレスの発散方法について教えてください。
精神障害者はストレスを溜め込みやすいということを会社は理解しています。
その障害者が、ストレスのたまり場ともいえる職場で働くことになるからには、プライベートなストレス発散法が不可欠です。
ですから、この質問は、自分自身にあったそんな方法を身に付けていますか、という質問です。
「眠れない時には、暖かいハーブティーを飲んでいます。私の不眠にはよく効きます。イライラしたときには、親身になって相談に乗ってくれる人もいますし、ちょっとおかしいなと思った時は、病院の外来に行くことにしています」
Q7 生活リズムについて
うつ病にかかると、昼と夜が逆転したような生活になりがちです。
また、朝昼晩の食事も乱れてきます
生活のリズムの乱れは、遅刻や欠勤につながりますから、会社としても心配なところです。
長く働き続ける上で一番大切なことは、生活のリズムが整っていることです。
そして、肝心なことは就職しようとする当の本人が、そのことを実行していることです。
嘘はすぐに見抜かれます。
ですから、就職を志したら、その日から生活のリズムを整えるようにしましょう。
面接では、そのことを正直に話せばいいのです。
「担当のお医者さんにも就寝時間が重要だといわれています。ですから、10時にベッドに入って、毎朝7時には起床するようにしています。朝起きたあとは、朝食をとって、就労移行支援へ通っています」
Q8 休みの日にはどんなことをして過ごしていますか。
ストレス発散にはもってこいの休日をのんべんだらりと過ごしているようでは、ストレスが発散するどころか溜るばかりです。生活のリズムも乱れます。
そのことが、休み明けの欠勤にも繋がるので、こんな質問が出てきます。
「休日の過ごし方には、かなり気を使っています。とにかく外出し、映画を観たり、図書館に通ったりしています。友人とカラオケに行くこともあります。このほか、少し遅めの朝食のあとは、公園まで散歩し、ひと汗流すようにしています」
仕事に関する質問
Q9 得意なことと苦手なことはなんですか?
採用されたいがために、得意でないことを得意といってしまうと入社後大変な思いをしてしまうので、正直に伝えましょう。そのためには、事前に得意、不得意の分野を整理し、話す内容をメモするようにしてください。
「得意な仕事は、○○です。○年間と働いてきましたが、その中で○○の仕事だけは他の誰よりも1番速く行うことができていました。上司からも仕事のスピードに関しては高い評価を得ていたと思っています」
「苦手な仕事は、○○です。単調な仕事で具体的な指示がないと、途中で悩んで仕事が進まないという傾向があります。ですから、明確な指示をしていただけたら、苦手な仕事も十分こなしていける自信はあります」
Q10 前職の退職理由
被面接者にとって、これは辛い質問ですが、正直に答えるのが最善の回答でしょう。ただし、退職の理由を一方的に会社のせいにするのは謹み、自分の問題点を整理して話してください。
また、前職から今日にいたる空白期間に症状の改善に努めたことなども話すようにしましょう。
いろいろ検討した結果、「この会社ならお役に立てると思いました」と一言添えることも忘れないように・・・。
「前職では、分からないことを周りの人に聞いて理解する努力が足りなかったと反省しています。病気のせいで孤立しがちでしたが、今後は上司や同僚のかたの指示を聞き、わからないことがあれば、素直に質問するように心がけたいと思っています。症状がでてきたとき、ご迷惑をかけることがあるかもしれませんが、その点の御配慮があれば、自分なりにこの会社に貢献できると思っています。よろしくお願いいたします」
素直であること
冒頭に述べたように、会社は被面接者のハンディキャップを「承知」の上での採用です。一番知りたいことは、被面接者の病気の「今」と「今後」に関することです。
また、被面接者がどのような病識をもっているかも探られます。
障害を気にするあまりごまかしたりするのは、本人はもとより会社側にとっても不幸なことです。
自分をよく理解してもらうために、素直に答え、お互いの理解を深めることが重要です。
その上で、この会社で働きたいというやる気を伝えることが出来れば、面接の成功率はぐっと高まるはずです。