働く気持ちはあるのに障害やさまざまな理由で働いていける自信がないという人のために設けられているのが就労移行支援事業です。
今回は、この就労移行支援について、手続きや期間・料金などについてガイドします。
目次
就労移行支援とは?
障害福祉サービスの一つ
就労移行支援は、障害者総合支援法で定められた障害福祉サービスの1つです。対象となるのは、一般企業への就職が可能と見込まれる18~65歳未満の障害者です。
対象となる障害者で、一般企業への就職を希望する人は、就労移行支援事業所で一定の訓練を受けたのちに、就職に取り組むことになります。
対象となる障害者とは?
対象となる障害者は、以下の要件を満たした人です。
②企業等での就労または開業を希望する方で、就労が可能と見込まれる方
③原則18歳以上から65歳未満の方
なお、障害者手帳を持っていない方でも、障害福祉サービス受給資格および医師の意見書等があれば、自治体の判断により利用可能な場合があります。詳しくは、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に問い合わせてみてください。
就労継続支援との違い
同じ障害者福祉サービスに就労継続支援というサービスがあります。就労移行支援が、一般企業で働くために必要なスキルの訓練をする場所であるのに対して、就労継続支援は働く場所を提供する支援です。
就労継続支援には、雇用契約を結んで賃金が支払われる「A型」と雇用契約を結ばず仕事を提供する「B型」があります。B型では、行った仕事に対して少額ながら工賃が支払われます。
利用するまでの流れはどうなっているの?
まず、問い合わせ
自宅から通える範囲にどんな事業所があるか調べるのがスタートです。市区町村の障害福祉課などで、住まいの近くにどのような事業所があるか聞いてみてもいいでしょう。
住まいの自治体以外にある事業所に通うこともできます。インターネットで検索すると、さまざまな障害福祉事業所のウェブサイトがアップされていますから、参考にしてください。
事業所の下見をしよう
いくつかの事業所をリストアップしたら、事業所の見学をしましょう。事業所ごとにパンフレットやウェブサイトを作っていますが、現場に行って自分の目で確かめてみましょう。
また、各事業所では、説明会や相談会・見学会・体験会などのイベントを行っています。イベントに参加して、実際にどんなプログラムが行われているかもチェックしましょう。
最近では、種類別に特化したサービスを実施している事業所がふえてきています。自分の障害や特性にマッチした事業所を探し当てることが重要です。
受給者証の申請
事業所が決まったら、住まいの市区町村の障害福祉課に利用する事業所名を伝え、就労移行支援の受給者証の申請を行います。この時必要な書類は以下の通りです。
●クリニックの診断書や意見書など(障害の有無を確認できるいずれかの書類)
手元に診断書がない場合は、前もってクリニックで診断書や意見書を取得してください。
受給者証の交付・利用開始
書類を提出すると、次は審査に移ります。市区町村の認定会議で決定されます。
支給が決定すると、市区町村から連絡があります。受給者証が発行されたら、利用を希望している就労移行支援事業所へ開始日を連絡し、契約を進めていきます。受給者証は支給決定から1~2週間くらいで届くケースが多いようです。
利用期間は最長24か月
就労移行支援の利用期間は最長24ヶ月(2年間)と決まっています。それまでに就職を目指していくことになります。
どのくらいお金がかかるの?
就労移行支援では利用料金が決められています。これはどこの事業所も共通です。利用料金は人によって負担額が変わります。負担額は本人の前年度の収入、世帯の収入状況によって変わります。また、交通費は市区町村や事業所によって助成をしてくれるところがあります。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満)※1 | 9300円 |
一般2 | 上記以外 | 37200円 |
※1:収入が概ね600万円以下の世帯が対象となります。
事業所ではどのような訓練をするの?
事業所では、就労に必要なスキルやマナーを身に付けるためのプログラムが用意されています。このほか、就労支援も行われます。
職業訓練プログラム
事業所によってプログラムは様々です。ビジネスマナーや面接練習、履歴書作成、障害特性の理解や疾病管理なども行っているところがあります。他にもパソコンの基本的な操作、ワードやエクセルを学習するプログラムもあります。
就活支援
日々の訓練を通じて、働ける状況になったら就活を始めます。就労移行支援は就職斡旋は行っていません。あくまでもサポートです。
求人を一緒に探したり、ハローワークへの同行、面接の同行などの支援を行っています。
クローズかオープンか
就職をする上で、オープン(障害を明かす)かクローズ(障害を明かさない)を決める必要があります。どちらが良いとかはありませんが、多くの方は障害を明かすオープンで就職します。
オープンでの就職は障害者雇用枠に応募することになるので求人を探すときは障害者雇用のものを探す必要があります。
定着支援
就職をしてからも就労移行支援は続きます。一番大事なのは就職をしてから続けられるかどうかです。
それを支援するのが定着支援になります。職場の環境はどうか、何か悩み事はないかなど、事業所のスタッフが企業に訪問して確認をします。
職場からの相談、就職者の相談を事業所のスタッフが受け、より良い環境になるように橋渡し役になります。
利用者の推移と就職率
厚労省のデータによると、就労移行支援事業所の利用者数は、年々増えています。
また、平成25の就労移行支援事業所から一般就労への移行率も24.9%と年々上昇しています。
ちなみに、身体・知的・精神といった障害者別でみると精神系の就職が急増しています。
自分に合った就労移行支援事業所を見つけることが大事
平成27年現在、就労移行支援事業所は2952事業所に上ります。これまで説明してきた通り、事業所ごとにプログラムは様々です。
事業所を選ぶ場合、プログラムの「質」をチェックすることがポイントです。そのためにも下見見学や事業所が行っているイベントへの参加が重要になります。
自分にあったプログラムかどうかを基準に選んでください。また、働きたい意欲が強い方は、就活支援の中身や就職率などのチェックも不可欠でしょう。