ヒーリング音楽の効果とは?自律神経や睡眠にも効果ある?


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ヒーリング(healing)を辞書で引くと治癒、修復と記されています。その治癒の手段として注目されるようになったのが音楽の力を活用したヒーリング音楽です。

今回は、ヒーリング音楽の効果についてまとめてみました。

ヒーリング音楽とは

ヒーリングとヒーリング音楽

心と体の疲れを癒し、心身のバランスを回復させるというのがヒーリングです。音楽を聞くことによって気分が変わるというのは、多くの皆さんが体験済みの事実です。

この事実に基づき、科学的知見を参考にしながら体系化されたものがヒーリング音楽です。

万人が癒される音楽

Aさんはクラシックを聴くと心が和んできます。Bさんは、ヘビーメタルの曲を聴くとストレスが発散し、気持ちが落ち着きます。

しかし、Aさんにとっては、ヘビーメタルな曲は、うるさく感じられ、Bにとっては、クラシックはなんだかまだるっこしい・・・。

このように音楽に対する嗜好は人それぞれですが、ヒーリング音楽というのは、個人の好みを超えて、万人の心が反応し、癒される音楽といってもいいでしょう。

シンプルで美しいメロディー

メロディー(戦慄)、ハーモニー(和音)、リズム(拍子)が音楽の3大要素です。ヒーリング音楽の多くは、美しいメロディーで、シンプルなハーモニーで、ゆったりしたリズムの曲です。

最近、レストランや公共施設などでは、静かな音楽をBGMとして流しています。だいたい懐かしのポップスをオーケストラで演奏している軽音楽というジャンルの曲ですが、これらはヒーリング音楽といっていいでしょう。

ヒーリング音楽の代表的なミュージシャンとしては、ジョージ・ウインストン、喜多郎などがあげられます。

音楽療法

音楽が私たちの心に及ぼす生理的、心理的、社会的な効用を応用して、心身の健康の回復、向上をはかる事を目的とするのが音楽療法です。

音楽療法には、歌唱や演奏を行う能動的音楽療法と音楽を聴くなどの受動的音楽療法の2つに分かれますが、ヒーリング音楽は受動的な音楽療法の一つです。

音楽療法は、医療ではなく代替医療、補完療法と位置付けられていますが、初期治療やリハビリテーションにおける効果が認められています。

なぜ音楽は効果があるのか

脳はいくつかの脳波を出しています。ヒーリング音楽を聴いて心が和んだときに出現するのがα(アルファ)波と言われるものです。

音楽とα(アルファ)波

脳からは5種類の脳波が出ています。どんな状態のときにどんな脳波が出るかをまとめたのが下記の表です。

脳波との関連でいえば、ヒーリング音楽は、リラックスしている時にでるα波を誘発する音楽のということになります。

なお、ちょっと矛盾するようですが、集中力が研ぎ澄まされているときにも、α波が検出されています。

■表1 脳波と状態

脳波の種類状態
α波(アルファ)覚醒と睡眠の間。リラックスしている状態
β波(ベータ―)日常生活時や緊張したり、興奮している状態
γ波(ガンマ)スポーツなどに適している
θ波(シーター)瞑想状態で記憶や学習に適している
δ波(デルタ)脳波が最も遅く、深い眠りや無意識

自律神経失調症にも効果がある

私たちの人体にはたくさんの機能の異なる神経が張り巡らされています。その中の自律神経というのは、無意識のうちに心身の機能を調節してくれる神経です。

自律神経はさらに、「交感神経」と「副交感神経」に分けられます。交感神経は、体を活発に動かすときに働き、副交感神経は、体を休めるときに働きます。交感神経をアクセルに例えるならば、副交感神経はブレーキの役割を担った神経です。

通常では、この二つの神経がバランスをとりながら体の状態を調節していますが、強いストレスなどを受けるとこのバランスが崩れることがあります。自律神経のアンバランス状態によってあらわれてくる様々な症状が、自律神経失調症とよばれる症状群です。

最近の研究では、α波は、自律神経のバランスを取る効果があることがわかってきています。ヒーリング音楽に誘発されてα波が出始めると、副交感神経の働きが高まり、交感神経が落ち着いてくるので、リラックスモードになり、神経のバランスが回復してくるとされています。

睡眠とヒーリング音楽

昼間、活動している時に出ている脳波は、β波です。β波は、緊張したり、興奮している状態で出る脳波です(表1参照)。

眠りにつくためには、心身をリラックスさせ、脳波をα波に変えていく必要があります。

睡眠に効果的なヒーリンング音楽は?

睡眠の30分から1時間ほど前からヒーリング音楽を聴くのがいいでしょう。効果的な音楽としては、曲が一定のゆったりしたテンポであることがあげられます。

歌詞がはいるとどうしても歌詞に捉われがちになりますから、歌詞のない曲がお勧めです。また、聞き流せるくらいの馴染みの曲やどこかで聴いた曲がリラックスしやすいとされています。

音量は40デジベル以下

α波は光や音や触刺激に影響を受けやすいとされています。音量を絞って40デジベル以下が望ましいボリュームです。

これは図書館の静けさに該当します。静かな部屋の中に遠くから美しい旋律、ゆったりとしたテンポの曲が聞こえるという状態で聴くようにしてください。

場合によってはアップテンポの曲も

ゆったりしたテンポの曲だけが効果的というのではありません。

アップテンポの曲は、気分が落ち込んでいるようなときに聴くと、鬱屈が発散し、元気が出てきます。そんな中で、心が落ち着き、眠りを誘うということもあるからです。

その時の気分に応じていくつかのバージョンを用意しておくのがいいでしょう。

気分による好むテンポが異なる

参考までに「聴き手の精神的健康状態と音楽の嗜好性の関連」に関して行われたアンケート調査の結果を紹介しておきます。

それによると、悲しいときや不安なときは、心拍数と同じテンポの曲を聴き、眠れないときは、心拍数よりも遅い曲、淋しい、元気を出したいときには心拍数よりも速い曲を好む傾向がみられました。また、全体としてピアノ曲が好まれています。

精神科の女医が作曲したヒーリング音楽

最後に、ある精神科の女医が作曲したヒーリング曲を紹介します。これは、<心地よい目覚めために>、<気分が落ち着くために>、<眠れるために>作曲されたピアノ曲です。

●目覚める曲 第1番「GOOD MORNING/1日の始まり」

●気分が落ち着く曲 第1番「GOOD AFTERNOON/午後の休息」

●眠れる曲 第1番「GOOD NIGHT/深い眠りへ」

ヒーリングは万能ではない

以上、ヒーリング音楽の効果について述べてきました。しかし、ヒーリングは体と心に効く万能の薬ではありません。

あくまで補完医療です。ヒーリングに頼り切ると、問題の本質と向き合わずに、自分を変えようというモチベーションが失われます。

ヒーリング音楽が意味のある効果をもたらすのは、問題解決のために思考や気分を変えていこうと前向きに取り組んでいる人たちであるということも忘れないようにしましょう。