過敏性腸症候群に効果的な食事療法は?FODMAPって?


ストレスや自律神経失調症などが原因で、腸が刺激に対して過敏な状態になり便通異常を起こすのが過敏性腸症候群(IBS)です。IBS にはいくつかの治療法がありますが、今回は効果的な食事療法を中心に紹介します。

過敏性腸症候群(IBS)とは?

主な症状は下痢と便秘です。この二つが交互に現れることもあります。そのほかにお腹がゴロゴロする、ガスがたまるといった腹部症状、疲労感、頭痛、発汗、動悸などの自律神経失調症の症状や、抑うつ感、不安感などの精神症状を伴うことがあります。

主な症状は下痢、便秘、ガス過多

慢性的下痢が続く「下痢型」は、神経性下痢とも呼ばれます。緊張や不安があると便意を催し、激しい下痢の症状があらわれます。

これは、腸の内容物が急速に運搬されてしまうためだと考えられています。胃に食べものが入ると腸が活発になり、食事のたびに下痢になることもあります。

便意があっても便がでにくい「便秘型」では、出たとしてもウサギの糞のようなコロコロとした糞です。腸の内容物を運ぶぜんどう運動が低下するため、大腸のS結腸という部分に便がせき止められた状態です。

下痢の症状が数日続いたかと思うと、今度は便秘の症状が出てくるのが「混合型」です。このほかに、強い腹痛が続いた後に大量の粘液が排出される「分泌型」と呼ばれる症状もあります。

男性は下痢が、女性は便秘が比較的多い

一般に男性は下痢型、女性は便秘型多いとされています。厚労省の「国民生活基礎統計(平成22年)」から、下痢と便秘の有訴者率をピックアップしたのが下記の表です。

有訴者率とは、人口1000人に対して病気の自覚症状のある者(有訴者)をみたものです。もっとも、これはIBS以外の下痢や便秘を含んだ数字ですが、男性は下痢型、女性は便秘型という傾向を間接的に裏付けるデータといえるでしょう。

■性別にみた下痢と便秘の有訴率(平成22年・国民生活基礎調査)

性別症状20~29歳30~39歳40~49歳
男性下痢16.421.221.2
便秘6.510.310.3
女性下痢20.221.717.0
便秘41.639.740.0

ストレスがかかる環境で発症する

下痢型は、ちょっとした緊張や不安があると便意を催し、激しい下痢の症状があらわれます。「神経性下痢」とも呼ばれるゆえんです。ストレスがかかる環境で腸に異常が出るのです。

例えば、企画のプレゼンの場や重要な会議などの緊張する場だとか、直ぐにトイレに行けないような電車の中で発症します。

どうして腸に異常が出るのか

過敏性腸症候群(IBS)は「心身症」の一種

緊張した場面で、便意を催した、下痢をしたといった恥ずかしい体験を重ねるうちに、下痢をすること自体に異常な恐怖心を抱くようになり、長時間トイレのない場所に行くことの不安が募って下痢をするようになります。

こうなると、心療内科や精神科の治療対象である心身症の状態になります。ちなみに、心身症とは特定の病気を言うのでなく、心が大きく関与する病気の群に付けられた名称ですが、忘れてならないのは、「基本は体の病気」だということです。
 

過敏性腸症候群のメカニズム

口から入った食べ物は、胃のなかで消化され、ドロドロになります。ドロドロになった胃の内容物は十二指腸を経て小腸へと進み、体内に吸収されますが、その残りカスが大腸へと進み、適度な水分が吸収されたものが便となり排泄されます。ところが、何らかの原因で、大腸での水分吸収が十分に行われないと、水分量の多い便が排泄されます。これが下痢です。

たとえば、脳が不安やプレッシャーなどのストレスを受けると、自律神経を介して腸に伝わり、運動異常を引き起こします。大腸のぜん動運動が盛んになると、腸の内容物の水分が十分吸収されず、下痢状態で排泄されるようになります。逆にぜんどう運動が不活発になると、内容物が腸内にとどまる時間が長くなり便秘となるのです。

医療機関にかかることもある

IBSの可能性が高いのに、普通の下痢や便秘だと思い込んで市販の整腸薬や便秘薬を服用している人が少なくありません。もちろん、市販薬で治るケースもあります。

しかし、それでも下痢や便秘が続くようなら、IBSの可能性を考えてみる必要があります。IBSの治療を受け持っているのは、消化器内科や心療内科、精神科の医療機関です。参考までに、世界的に認められているRomeⅢの診断基準は以下のようになっています。

■診断基準
Aの項目があてはまり、Bの項目が2つ以上あてはまる場合にIBSと診断
A:腹痛や腹部不快感を半年以上前から繰り返し、特に最近3ヶ月は、月のうち3日以上ある。
B-1:腹痛や腹部不快感は、排便すると軽くなる
B-2:以前より排便の回数が増えた
B-3:便の形状が以前と変わった(やわらかい、かたい、便秘、下痢など)

効果のある食事療法

ストレス環境を改善すること、規則正しい生活のリズムを保持すること、医療機関での薬物療法を受けることのほかに食事療法もIBS治療のポイントです。

決まった時間に、よく噛んで食べる

IBSの治療では、食生活の改善が特に重要になってきます。栄養のバランスを考えて、規則正しく食べるのが原則ですが、是非実行してもらいたいのが、毎朝、決まった時間に朝食をとることです。

朝食を取ることによって、腸が活発に動き出します。腸が動き出すと排便が促されるため、下痢と便秘で悩んでいる方は朝食をとる習慣をつけると改善につながります。

良く噛んで食べることも是非実行してください。よく噛んで食べると、胃腸への負担も少なくなります。

胃腸に負担をかけない

IBSは、大腸に異常が起こっている状態ですから、消化に悪いものは避けた方がいい。下痢型の人は、香辛料、冷たい食べ物や脂っこいものを控えるようにしましょう。

便秘型の人は、香辛料など刺激の強い食品は避け、水分や食物線維を多く摂るようにしましょう。アルコール、カフェイン、冷たい飲み物も我慢しましょう。

一方、腸内の細菌バランスの改善に効果があるヨーグルトや乳酸菌飲料、オリゴ糖、繊維食物はおすすめです。

食事を含めた生活リズムはなるべく崩さない

いうまでもないことですが、規則正しい食事は、規則正しい生活を前提としたうえでのことです。是非実行して欲しい点を挙げてみます。

・三食を決まった時間にとる。
・暴飲暴食を避ける。
・睡眠や休養を十分にとる。
・朝の排便を習慣づける。
・散歩などの軽い運動を行う(適度の運動は腸の働きを整える効果のほか気分転換やストレス解消につながります)。

低FODMAP食事療法

最近、注目されてきているのがFODMAP(フォドマップ)食事療法です。FODMAPというのは、「Fermentable、Oligo-、Di-、Mono-saccaharides and Polyols」(オリゴ糖、2糖のラクトース(乳糖)、単糖類(果糖)、ポリオール)の頭文字をとった略称です。

低FODMAP食事法とは、ごく簡単に要約すると、FODMAPの摂取をまずごく最小限にし、その後、少しずつ摂取を開始してお腹の不調を起こす食品があるかを探っていきます。

最初の2週間、低FODMAPの食材をとり、もし症状が良くなれば、何か原因があることがわかります。症状が良くならなければ、原因が他にあるので食事療法は終了となります。

症状が良くなった人はそこから徐々に食材を増やしていき、何の食材が原因か探します。以下の食材を見ながら週単位で増やしてみてください。

【フルクトース(果糖)が多いもの】
りんご、マンゴ、なし、西洋なし、アガベ、アガベシロップ、すいか、はちみつ、ドライフルーツ、果物の缶詰、コーンシロップ、果糖ブドウ糖液糖・ブドウ糖果糖液糖(異性化糖・HFCS)

【ラクトースが多いもの】
牛乳、ヤギ乳、チーズ、ヨーグルト、アイスクリーム、チーズソース、クリームソース、生クリーム

【フルクタン・イヌリン・ガラクタンが多いもの】
玉ねぎ、にんにく、グリーンピース、ブロッコリー、麦、ライ麦、すいか、アーティチョーク、アスパラガス、大ネギ、キャベツ、大豆、豆乳、キドニー豆、ひよこ豆

【糖アルコール・ポリオールが多いもの】
さくらんぼ、プラム、プルーン、アボガド、ネクタリン、ライチ、カリフラワー、アプリコット、桃、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、イソマルト、マルチトール

参考:https://allabout.co.jp/gm/gc/416571/

高FODMAPの食材
リンゴ
スイカ
ドライフルーツ
アスパラガス
ブロッコリー
マッシュルーム
小麦
パスタ
クッキー
アイスクリーム
ヨーグルト
チーズ
ハチミツ 
コーンシロップ
枝豆  
大豆

低FODMAPの食材
バナナ
ブルーベリー
メロン
レモン
グレープフルーツ
ぶどう
みかん
人参
ピーマン
きゅうり
インゲン豆
レタス
セロリ
じゃがいも
かぼちゃ
グルテン抜きパン

オーツ麦
ラクトース抜き牛乳・ヨーグルト
豆腐

効果のある低FODMAPメニューの例

ネットには、栄養管理士などの専門家による低FODMAP・メニューがアップされています。その中の一つを紹介します。

●朝食:白米ご飯、ベーコンエッグ、小松菜とジャガ芋のお味噌汁、いちごなどの果物
●昼食:鮭お握り、キャベツと人参の味噌汁、ほうれん草のお浸し
●夕食:白米ごはん、魚の塩焼き、レタスやきゅうり、トマトのサラダ

参考:https://doctors-me.com/doctor/intestine/7/column/4512

対策の一環として食事療法を

食事療法は、有効なIBS対策ですが、これで完全に治るというものではありません。あくまで、対策の一環です。

自分の症状に合わせて、ストレス環境の改善し、規則正しい生活習慣を心がけ、場合によっては医療機関での治療など、総合的に取り組むことが重要です。


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