過敏性腸症候群は遺伝する?なりやすい人はどんな人?


過敏性腸症候群(IBS)は、ある限られた時間に便秘や下痢などの排せつの異常が起こる病気です。ところが、ほとんどのケースで、検査をしても異常が認められません。では、何が原因で発症するのでしょうか。

過敏性腸症候群の原因とは?

大きな要因はストレス

IBSの原因は、まだはっきりとはわかっていませんが、ストレスが絡んでいることは間違いのないところです。腸と脳は、実は密接な関係にあります。

脳にストレスがかかると自律神経を通してストレスが胃、腸に伝達されます。その結果、胃腸に腹痛や便通異常等が発生します。

逆に下痢や便秘などの腸の不調も、自律神経を介して脳にストレスを与えます。この関係を「脳腸相関」といいますが、脳と腸の間にストレスの悪循環が形成されてしまうわけです。

このように、IBSの主たる原因は、ストレスですが、食生活や睡眠などの生活リズムの乱れも腸の症状に大きく影響を及ぼします。

トイレに行けない環境の不安も要因に

もう少し具体的にみてみましょう。IBSの症状は、通勤・通学の電車の中や会議が始まる直前にしばしば現れます。

この状況は、症状がでてもすぐにトイレに駆け込めないような不安な環境です

いったんIBSの症状を経験すると、大きな不安を抱えて電車に乗り込むことになり、知覚過敏になってきた腸が反応し、腹痛、下痢の症状があらわれてきます。悪循環のスパイラルにはまってしまうわけです。

環境の変化が気づかぬうちにストレスになっていることも

ストレスは、多くの場合、環境の変化によってもたらされます。リストラ、離婚、死別、受験の失敗ということが起因となって大きなストレスを抱え込むことになります。

ところが、これとは逆に栄転、結婚といったプラスの環境の変化もストレスの要因になるケースがあります。マイナスの環境変化であれば、ストレスを自覚することができますが、プラスの環境変化の場合は、自覚できず、気づかぬうちにストレスがたまり、IBSにつながる可能性も考えられます。

身体的な要因も絡んでいる

医療機関で検査しても異常が認められないというのがIBSですが、だからといって身体的にはなんの問題がないというわけではありません。

便秘や下痢を繰り返した腸は弱ってきます。従って、腸を刺激するような食事を避けることも重要です。

腸と食物の関係

実際、IBSの治療の中には、食餌療法も取り入れられています。よく知られているのが「FODMAP(Fermentable、Oligo-、Di-、Mono-saccaharides and Polyols)」です。

FODMAPは、「発酵性のオリゴ糖、2糖類、単糖類、ポリオール」という意味ですが、これらの摂取量が多いとIBSが悪化しやすいとされています。

詳しくはこちらのページをご覧ください。

遺伝の影響はある

遺伝の影響はいくらかある

IBSは遺伝とも無関係ではありません。「遺伝」をどうとらえるかという問題も検討しなければなりませんが、6060組の双子について分析した研究を紹介しておきましょう。

それによれば、二卵性双生児の片方が過敏性腸症候群を発症している場合に、もう片方も発症している割合は8.4%と低いのに対し、一卵性双生児の場合は17.2%と高かったと報告されています。

一卵性双生児は同じ遺伝子を持ち、二卵性双生児は遺伝子が異なります。つまり、同じ遺伝子を持つ一卵性双生児のほうが、二人とも過敏性腸症候群を発症する割合が高いということは、過敏性腸症候群の発症に遺伝子が関係していることを示しています。

確実に遺伝するというわけではない

IBSの発症には、遺伝的要因があるとしても、必ず発症するは限りません。環境や心理的状態によってはIBSを発症しないこともあります。

しかし、遺伝が全く関係ないともいえません。IBSと遺伝の関係は、次のように考えられています。

過敏性腸症候群の発症は、ひとつの遺伝子ではなく複数の遺伝子が関係し、この様々な遺伝子要因によって、「IBSを発症しやすい体質」になる。

つまり、遺伝子が直接的に影響するのではなく、なりやすい体質が遺伝し、あるストレス環境にさらされた時にIBSを発症するというわけです。

IBSになりやすい人

IBSになりやすい体質(性格)というのが確かに存在します。では、どんな体質の人がなりやすいのでしょうか。

生真面目な人、完璧主義

生真面目な性格と完璧主義は、表裏一体のものです。手抜きが出来なくて、几帳面に100%達成しないと収まらない性格ですから、当然、ストレスも大きくなります。

また、何事も完璧にやろうと思うと、精神的にも自分を追い込みますし、肉体的にも疲労が蓄積し、気づかないうちにストレスを溜めてしまいがちになります。このストレスが引き金になって、過敏性腸症候群(IBS)になってしまうわけです。

ストレス耐性が低い人

ストレス耐性には個人差があります。几帳面な完璧主義者もストレス耐性が低いタイプです。

周囲に自分を合わせようとする人、感受性が強いと自認している人、神経が細やかな人などは、ストレス耐性が低いと言えるでしょう。

ストレス耐性が高い人はストレス発散が出来る人

ストレス耐性が高い人は、人の目を気にしない人、気持ちの切り替えができる人、自分の感情を適切に表現できる人たちです。

気持ちの切り替えができるということは、ストレス発散の方法を身に着けている人ということもできます。

ということは、ストレス耐性低くても、工夫してストレス発散の方法を修得すれば、ストレス耐性を高めることができるということです。

生活のリズムが乱れた人

IBSは、交替制勤務の人に多く見られます。それは、日が出て起きだし、日中に働き、夜は寝るという人間のナチュラルな生活のリズムの乱れによって、神経のバランスが崩れた結果によるものです。

交代勤務でなくても、夜更かししたり、暴飲暴食したりといった生活の乱れもIBSにつながります。それは、暴飲暴食が腸に悪いということもさることながら、暴飲暴食という行為の中にストレスが潜んでいるからです。

医療機関での治療も可能

IBSは、命にかかわるような病気ではありません。市販の薬で、一時的に症状を緩和することもできることから、医療機関で本格的に治療に取り組もうという発想が希薄です。

しかし、IBSはストレスを起因として発症する精神系の症候ですから、根本的に治そうとすれば、専門の医療機関の診察を受け、正しい治療に取り組む必要があります。医療機関にかかる場合は、消化器内科か心療内科になります。

下痢や便秘などの身体的症状がひどい場合は、消化器内科を選ぶのが順当なところですが、下痢止めなどの薬物療法を続けているのに、いつまでたっても症状がよくならない場合は、一度、心療内科や精神科の診察を受けることを考えるべきでしょう。


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