統合失調症では、感情や思考などといった脳の働きのまとまり(統合)がうまくいかなくなる(失調)ことによって、妄想や幻覚があらわれたり、意欲や感情表現が低下するなどの症状が表れます。
うつ病などと比べるとあまり聞きなじみがなく、自分には関係ない病気だと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、1%弱の人が一生に一度は発症するともいわれており、統合失調症は、身近なところで、あるいは自分の身にも起こりうる可能性のある精神疾患です。
発症しやすい年齢があり、高校生ごろから30歳ぐらいまでの間に発症する人が多く、また、女性よりも男性の方が若干発症しやすいといわれています。
統合失調症の症状
症状は何か本当は存在しないものが見えたり聞こえたりするようになる陽性症状と、もともとの感情表現や意欲が減ったり欠けたりする陰性症状に分けられます。
陽性症状は本来の状態に幻覚等の症状がプラスされた状態、陰性症状は本来の状態にあった意欲やエネルギーが失われたマイナスの状態であるともいえます。
おおむね統合失調症では陽性症状が先にあらわれ、陽性症状が落ち着いてからその反動的に陰性症状があらわれてくることになります。
ただし、人によって陽性症状、陰性症状がどのようにどのタイミングで表れるかは違いますので、必ずしも同じように症状があらわれて変わっていくわけではありません。
陽性症状
・幻覚、妄想
・本人のもともとの考え方や劣等感が影響しており、発症した人を責める内容の幻覚や妄想が多い
・幻覚、妄想を本人は真実であると思ってしまうため、不安になる
・真実であると思っているために、幻覚、妄想を無視できず、他者に理解できない言動をとるようになる
幻覚の例としては、だれかが自分の監視や批判をしてくるという幻聴があり、妄想の例としては、あらゆる他者が自分を傷つけようとしている、自分が本来あり得ないすごい何者かである、などと思い込むというものがあります。
幻覚や妄想による他者が理解できない言動の例として以下のようなものがあります。
・他者には見えない幻覚と話し、実際には一人で意味不明なことをしゃべっている
・機械から出る電波が自分の体を著しく傷つけていると思いこみ、携帯機器を自らの周りで使われることをとても嫌う
・周りの人が自分を監視していると思い込み、周りの人を責めたてる
また、こういった症状が強く出ていると、他者からみると明らかに何らかの異常が生じているとわかりますが、当の本人は幻覚や妄想を真実のことと思い込んでいるので、自分が病気であると認識できません。
そのため、幻覚や妄想によって異常な行動をとっており、明らかに何らかの疾患があると周りの人に言われても、本人はそれを簡単には信じられません。
陰性症状
・会話や行動、感情、意欲の面でエネルギーが欠如した状態になる
・会話や行動にずれが出たり、会話の話題が飛んだりして、他者から理解されがたくなる
・ミスが多くなる、要領が悪くなる
・感情や表情が乏しくなり、他者の感情についても鈍くなる
・様々なことに意欲が出なくなり、自分の世界に引きこもる
陽性症状とくらべて、ほかの人から見て精神疾患であるとは思われにくい陰性症状ですが、れっきとした統合失調症の症状の一つです。
統合失調症の原因・治療方法
原因は様々な要因が絡んでいるといわれ、はっきりとはわかっていませんが、就職や結婚等、変化の大きい時期に起こりやすく、本人のストレスに対する耐性などの素質や環境によるストレス等が関係して発症するともいわれています。また、遺伝の影響はありますが100%遺伝するわけではありません。
治療方法としては、症状を抑えるために抗精神病薬等による薬物療法がおもに行われ、デイケアなどでの社会生活機能を改善させるリハビリや、統合失調症についての知識を学ぶ心理教育等の心理社会的治療も合わせて行われます。
統合失調症には陽性症状や陰性症状があるように様々な症状があります。そのため、出ている症状に合わせて多くの種類がある抗精神病薬も使い分けます。薬の副作用が心配になるかもしれませんが、中途半端に投薬しても、効果は出ないので、渡された薬を言われた数のとおりに服用することが重要です。
また、統合失調症は一度治ったと思ってもしばしば再発します。さらに再発を繰り返すと症状もどんどん悪化していきます。そのため、一度統合失調症が治ったと思っても、再発を防ぐために継続してきちんと薬を飲み続けることが極めて重要になります。とはいっても、ずっと薬を飲み続けなければいけないわけではなく、主治医が大丈夫と判断すれば、薬の減量や薬の投薬の中止が行われます。ただし、患者さんの個人差があるために一概には言えませんが、投薬中止の判断が行われるのは年単位で薬を飲み続けてからになります。
統合失調症の治療の際、苦痛や症状によって日常生活が送れない場合は入院し、入院の必要がない場合は外来で治療を行うことになります。特に陽性症状の幻覚や妄想は日常生活に支障をきたしますし、本人は病気であると認識していないこともあるため、しばしば入院治療の必要がでてきます。