TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)とは?有効性・費用について


TMS治療の概要

TMS治療の意味

 TMS治療とは、Repetitive Transcranial Magnetic Stimulationの略で、直訳すると(繰り返しの-頭蓋をへた-磁気の-刺激)となります。つまり繰り返し頭蓋から磁気で刺激を送る治療となりますね。 rTMS治療やTMS治療と頭文字を取って略して呼ばれ、“r”を省略する場合としない場合がありますが、どちらも同じ意味です。

TMS治療の生まれ

 この治療の生まれは1985年に英国のAnthony BarkerがTMSを用いると脳を刺激できることを報告したことが始まりです。以後、TMSは脳関連の検査や治療の方法として、様々な分野で実用化がされてきました。

 現在までに神経内科ではパーキンソン病の治療や、脳梗塞後のリハビリなどに用いられています。精神科領域でも薬物療法の効きにくいうつ病に対して効果があるという報告や、統合失調症の幻聴が軽減したという研究もされ、今後の活躍に期待されている治療法の一つです。

NHKのクローズアップ現代でも紹介された治療法

どういう原理の治療なのか?

 まずコイルに電流を流して磁場を作り出します。その電流を変化させることで、磁場も変化しますので、その変化する磁場を頭蓋から脳へ当てます。磁場の変化を脳が受けると、脳細胞が活性化するため、脳の機能が低下して起こると考えられている病気(うつ病など)に様々な治療効果が得られると考えられています。

NeuroStar TMS治療装置
NeuroStar TMS治療装置
NeuroStar TMS治療装置

引用:【プレスリリース】うつ病治療の新たな選択肢 磁気刺激治療装置の国内独占販売契約を締結

治療に痛みはあるの?副作用は?

治療の痛みについて

 ほとんどありませんが“0”ではありません。磁場を流している治療中は、30%前後で軽微な頭皮痛や歯痛があると言われています。基本的には本を読んだり話をしていたりとリラックスした状態で治療を受けることが出来ます。またこれらの症状は刺激中のみで、刺激が終わってからも持続するものではありません。

 治療には副次的なものは避けられません。薬物療法では副作用などによる苦痛が起こる場合がありますし、電気けいれん療法でも毎回点滴を受けて、麻酔から覚めると頭痛等の副作用が出る可能性がありますので、どんな治療にもある程度の苦痛は付き物です。もちろん起きないに越したことはありませんが、起きる人には起きてしまいます。

その他の副作用

 重篤な副作用としては、けいれん発作(0.1%未満)、失神(頻度不明)があります。どちらも頻度は高くありません。

どんな治療効果があるの?

TMS治療の有用性は?

 前述しましたが、難治性のうつ病(薬物療法の効きにくい)に効果があるとされています。その根拠を述べる論文もいくつか存在します。

 二重盲検ランダム化試験(治療者も患者もその治療を受けたかどうかかわからなくして、TMSに効果があるのか確かめる試験)で6週間TMS治療を受けた場合の寛解率(うつ病が良くなった割合)は実際に刺激を与えていた方で14.1%が改善し、シャム刺激(刺激を与えているふり)の方で5.1%が改善しています。つまり刺激を与えるとうつ病が治りやすいことを示唆しています。

 他にも比盲検試験(治療者も患者もTMS治療を受けていることを知らされている状態で効果を確かめる試験)では、6週間TMSを実施して42.4%がうつ病症状が軽減して、20.0%の患者が寛解したという報告もあります。

TMS治療のメリットは?

薬物療法に比べて副作用が少ない

 うつ病の治療は主に薬物療法と電気けいれん療法がありますが、一番浸透している治療は薬物療法です。しかし薬物療法には手軽に始められる分副作用が多いです。副作用が起きずにうつ病が改善する方もいますが、副作用が起きる方も中にはいますので、薬の副作用でなかなか自分に合う薬が見つからない方や、薬での治療に効果が不十分であった方は選択の余地があるかもしれません。

効果が出るまでが早いかもしれない

 薬物療法は効果が出るまで早くでも2週間から4週間程度かかります。これは医療者から見ての効果であり、本人が効果を自覚するという意味では6週間から8週間ともいわれています。つまり薬物療法によるうつ病の治療には時間がかかるのです。しかしTMS治療では4週間程度で効果を自覚することもあり、薬物療法よりも早く効果が出る可能性があります。

妊娠や授乳中の方にはいいかもしれない

 妊娠や授乳中の薬物療法はやはり気になりますよね。勿論、薬物療法をしているからといって妊娠や授乳ができないというわけではありませんが、研究で明らかになっていない(大丈夫とも大丈夫じゃないとも言われていない)分、不安が募りますよね。そんな方には一時的に切り替えるのも良いかもしれません。ただし、薬物療法を中止して悪化する可能性もないわけではないので、必ずしもメリットとは言えないですね。また、妊娠中は受けられないという制限がある場合もあります。

TMS治療のデメリットは?

週に何度も治療を受けなくてはいけない

 基本的に毎日やる治療なので、多くの場合は週5回の通院が必要になります。1回20~40分程度ですが、週5回を数週間持続することは、なかなかできるものではありませんよね。薬物療法の月1回や2回の受診とはワケが違いますね。

物理的に受けられない方もいる(禁忌)

 人工内耳や、ペースメーカー、DBS(体内刺激装置)、投薬ポンプなど、刺激部位の近くに金属のある方は、この治療を受けられません。また副作用としてけいれんを起こす可能性もあるため、けいれんのリスクの高い患者も受けられません。全身状態の悪い方、例えば重い身体疾患をかかえている方も受けられません。

治療費が高い

後述の「保険は適応?」の項目を参照してください。

入院は必要?

 外来で受ける治療になりますので、入院は不要です。一通り調べたところ、入院して治療を受ける医療機関は今のところ、見当たりませんでした。今後出てくる可能性はありますが、今のところクリニックの外来治療として受けるしか方法はなさそうです。

どんな病気に適応があるの?

 先述した通り、主にうつ病治療に用いられます。特に難治性(薬の効きにくい)うつ病にも効果があると期待されています。

適応外の疾患は?

 すべてのうつ病に効果があるとされているわけではなく、気分障害の中でも双極性感情障害(躁うつ病)や、軽度のうつ病、精神病症状を伴う(幻覚や妄想)うつ病や、切迫した希死念慮(死にたい気持ち)のあるうつ病は適応外と言われています。

 他にも“日本精神神経学会 新医療機器使用要件等基準策定事業”の報告によると、以下のものが適応すべきではないとしています。

  • 18歳未満
  • 認知症やその他の病気によるうつ症状
  • 適応障害、人格障害、発達障害のうち、中等度以上のうつ病症状がない場合
  • 改善してきているうつ病
  • 明らかに抗うつ薬に対する拒絶(顕著な副作用によるものは除く)
  • アルコールやドラッグなどの精神作用物質によるうつ病症状

保険は適応?

保険適応外治療

 TMS治療は、まだ日本では認可されていない治療なので、もちろん保険は適応されません。全額自己負担になります。

自立支援医療適応外

 保険が適応されないということは自立支援医療も使えないということです。精神科の外来治療に関するものがすべて適応とされるわけではなく、保険適応外治療は、この枠に入りません。つまり、金銭に余裕がある方でないと受けられない治療の一つとなります。

実際の費用の差は?

 正直なところ外来治療よりも安いと提示している医療機関もありますが、TMS治療を受けようと考えている方であれば、薬物療法が効きにくい(重度のうつ病)方であることが予測されますので、ほぼ間違いなく自立支援医療の適応です。自立支援医療とTMS治療を比べると一概にTMS治療の方が安いというわけではありません。その理由を見てみましょう。

費用はどれくらい?

治療費を計算してみましょう

 一般的なご家庭では自立支援医療の上限額は1万円になります。今回も1万円で計算してみます。

 仮に1万円MAXで治療を受けている方と比較すると、1年の治療費は12万円です。しかしよほど高級な薬を使用しない限り、上限まではいきません。通常の外来治療だけであれば大体が数千円程度で済みます。

  一方でTMS治療では合計20回~40回の治療を受け、1回4000円~8000円、高い場合だと15000円のところがあります。最安でも4000円×20回で8万円、最高だと15000円×40回で60万円です。ふり幅は大きいですが、多くは15万円から30万円程の治療となるでしょう。

 再発する可能性もありますので、再発するたびにTMS治療を受けていたら、かなりの金額になるはずです。これが一概に薬物療法よりも安いと言えない理由です。

 ちなみに、維持療法・再発予防に関して、TMSが有効であるといわれるエビデンス(根拠)はありません。つまり再発しないかもしれないし、するかもしれないということです。

東京ではどこで受けられるの?

たわらクリニック

今回の記事も、こちらのHPの情報を一部参考にさせて頂いています。
東京、蒲田、横浜の3つのクリニックがあります。

東京:〒103-0028 東京都中央区八重洲1丁目5−9八重洲アメレックスビル9F
蒲田:〒103-0028 東京都大田区蒲田5-11-7栄月ビル4階
横浜:〒221-0835 神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町2-10-5YT10ビル5階

https://www.tawara-clinic.com/treatment/tms/

つのおクリニック

こちらのHPも参考にさせて頂いています。渋谷駅より徒歩3分のクリニックです。
東京都渋谷区渋谷3-9-9東京建物渋谷ビル1F

http://www.tsunoo.net/

ベスリクリニック

神田駅から徒歩1分にあるクリニックです。
東京都千代田区神田鍛冶町3-2 神田サンミビル8F

http://besli.jp/

新宿ストレスクリニック

新宿アイランドタワーにあるクリニックで、西新宿駅から徒歩30秒です。
〒163-1325 東京都新宿区西新宿6-5-1 新宿アイランドタワー25F

https://www.shinjuku-stress.com/