就学前というのは、段々と言葉の種類も増え自己主張が豊富になってくる頃です。また、幼稚園や保育園で集団生活をすることで、グループを作り、自分の意思表示や感情表現をストレートに出さず、少しずつ調節し社会性を身につけてくる時期になります。しかし、その社会性や感情コントロールは当然ながら完全ではありません。この時期のお子さんの感情コントロールについて以下書いていきたいと思います。
子どもが上手に気持ちをコントロールできない
思い通りにならず、感情をコントロールすることが難しいといっても、幾つかのパターンがあります。例えば30分から1時間くらい激しく泣いてしまうお子さんもいます。それは、自己表現やその子の元来の性格、あるいは発達の程度、寝不足等の体調不良が影響している場合もあります。
具体的な例で考えてみましょう。
(具体例)
・買って欲しいものが買ってもらえず、その場で泣いて寝転がってしまう。
・自分のやりたいことが、その場でやれない場合泣き叫ぶ。
・やりたくないことをやるように言われ、泣いて地団駄を踏む
・自分のやっている事や、見て欲しいものを見て欲しいと上手く伝えられず、叩いてしまう
等です。
こうした状況になったら、まずはお子さんがどんな理由で泣いたり怒ったりしているのかを考えてみると良いでしょう。
感情コントロールが難しく、泣いたり怒ったりする理由には、幾つかあります。例えば、
(理由)
・自分がやりたいことがわかっており、それが上手く伝わらない
・その場に合った言葉が上手く出ずに伝わらない
・親からの関心をもらいたい
等です。
発達面から見た場合、3歳ごろから言葉が増え、自己主張も多くなってきます。一方、感情コントロールについては、脳の発達からすぐにできるようになるわけではなく、8歳頃までに緩やかに出来るようになっていきます。社会性や感情のコントロールをする力が未完成な状態であるために、怒ったり泣いたりといった感情の調整することが難しいのです。
大人の関わり方
子どもが、怒ったり泣いたりして、感情のコントロールが効かないと、大人も戸惑ってしまい、どのように対処していいのかわからなくなってしまいます。
そんな時は、以下の点を心掛けると良いでしょう。
まず自分が落ち着き、怒鳴らず冷静に対応する。
大人が叱るときに怒鳴ってしまうと、何がいけないのか理解せず、怖いから止めるとい
理解になり、効果は一時的な物になってしまいます。
感情的になった原因を代弁する
例えば、競争やゲームなどで、1番が取れず悔しくて泣いてしまい、気持ちが落ち着かない場合、「1番じゃなくてくやしかったね。でも仕方ないね。」等の様に、お子さんがどんな気持ちになっているかを代弁して繰り返すと良いでしょう。
クールダウンさせる
感情がたかぶっていて子どもに何か言っても伝わらない場合は、落ち着かせる方法として、クールダウンをすると良いでしょう。具体的には、イライラやかんしゃくのきっかけになったものから距離を取ったり、クッションや柔らかいものを触ったり叩いたり、新聞を破いたりして発散させるか、水を飲んだり深呼吸したりして落ち着かせます。
落ち着くことが出来たら、褒めてあげる
言葉がけや、クールダウンの方法で、落ち着くことが出来たら「自分で落ち着くことが出来たね」と褒めてあげると良いでしょう。良い行動を取った場合は、その都度褒めてあげることで、その行動が増えていき、自分で対処できるようになっていきます。
本人の気持ちの表現の仕方を教えてあげる
感情的になったことは、子どもなりに、自分を表現した結果なので、「こういう時は~な風にすると良いよ」と正しい表現方法を教えてあげると良いでしょう。
まずはこれらを実践してみましょう。言葉がけやクールダウンの方法のどれがその子どもに合うかについては、子どもによってそれぞれですので、“これはどうかな?”と声を掛けたりしていろいろと試してみると良いでしょう。
(子どもにあった方法)
その子どもにあった気持ちの切り替え方を使うことで効果は高まります。②でご紹介したクールダウンのやり方で本人のあったものを使うと良いかもしれません。言葉で話すことが得意な子であれば、その時の気持ちを説明してもらうことが気持ちの切り替えに有効かも知れません。
くり返しになりますが、気持ちを切り替えることが出来たら、そのことについてすぐに褒めてあげましょう。また、普段からスキンシップをするなどして、交流を多く持っておくことで、子どもは安心でき、落ち着きやすくなるでしょう。
上記の対応をしてみても、お子さんが落ち着かず、難しいと感じることが頻繁にあるようであれば、一度専門機関に相談すると良いかもしれません。地域の子育て支援センターや保健所・保健センターなどではお子さんの気持ちのコントロールの相談にも乗ってくれます。
参考・引用文献
相原正男(2016).「社会脳の成長と発達」『認知神経』18(3・4),101-107.
(2009).「よくわかる発達心理学[第二版]」無藤隆.岡本祐子.大坪治彦(編).ミネルヴァ書房.pp
62-81.
篠真希.長縄史子(2015)「子どものアンガーマネジメント-怒りをコントロールする43のスキル」.合同出版株式会社.
井上雅彦(2015).「家庭で無理なく対応できる困った行動Q&A」.株式会社学研教育出版.
厚生労働相.「『軽度発達障害児に対する気づきと支援のマニュアル』第三章 健診・発達相談等の実際」https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-hoken07/h7_03a.html(閲覧日:2018年9月3日).
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