Beatlesリラックスセレクション10選~ビートルズの魅力~

Beatlesリラックスセレクション10選~ビートルズの魅力~

<1>ビートルズの概要 

サイコセラピー研究所 研究員の音楽療法担当のDr.Chikaです。

私は音楽活動も行っていますが、本業は精神科医として認知症専門の老人保健施設での診療を行っています。

サイコセラピー研究所TVのBGMを担当させていただいていますが、

今回は「Beatles リラックスセレクション10選」

ということで、ビートルズの曲の中から、リラックスにふさわしい10曲を選んでカバーアレンジ・編曲をさせていただきました。

ビートルズは私が音楽活動を始めた原点であり、最近ではKORG Liverpoolというレノンマッカートニーの曲が100曲収録されたキーボードのデモンストレーターのお仕事もさせていただいておりました。

 

そんなビートルズの魅力について、私なりの考えを少しお話させていただきます。

 

○奥が深いビートルズ:概要

はまりだすと奥が深いビートルズですが、まずは概要について、見て行きましょう。

イギリス・リバプール出身の4人組ロックバンド。

1962年10月に「Love Me Do」でデビューしてから1970年4月の解散までの間にオリジナルアルバム12枚、213曲を発表しました。

メンバーはリンゴスター(1940.7.7生まれ)が最年長で、ジョンレノン(1940.10.9生まれ)、ポールマッカートニー(1942.6.18生まれ)、ジョージハリスン(1943.2.25生まれ)と続きます。

ビートルズの魅力の一つは、8年間の中でBeatlesというグループ自体が大きく変化していき、それに伴って楽曲の音楽性も変化していくことだと思いますが、

どのように変化をしていったのでしょう..以下がかなりおおざっぱな概要です。

デビュー前はリバプールのライブハウス・キャバンクラブなどで連日演奏を行い、デビュー後は2枚目のシングルの「Please Please Me」の大ヒット(英国チャートで30週連続1位)を皮切りに、「From Me To You」「She Loves You」「I Want To Hold Your Hand(抱きしめたい)」..と次々と前代未聞の大ヒットをとばしていきます。

アメリカや世界へ進出しコンサートを行い、斬新な音楽の魅力にとどまらず当時の若者の価値観・ファッションなどあらゆる面で大きな影響を与え、社会現象となります。

1965年8月には史上初の野球場でのコンサートをニューヨークのシェイ・スタジアムで行い、現代の野球場での演奏のパイオニアとなりました。

世界各国で、大勢の熱狂的なファンに囲まれた中でのコンサートを続けますが、1966.8.29のサンフランシスコ・キャンドルスティック・パークでのコンサートを最後に、演奏活動を休止。その後レコーディングバンドへと変貌をとげます。4人の風貌も大きく変わります。

Beatles自身が架空のバンドを演じた初めてのコンセプト・アルバム「サージェントペパーズ・ロンリーハーツクラブ・バンド」から、多様な演奏形態の曲を2枚組にまとめた白一色のジャケットの「ホワイトアルバム」まで、スタジオの中で様々な演奏形態で多くの曲をレコーディングしました。コンサートを休止した代わりに、シングル曲の公開とともにプロモーションビデオを撮影。現代のPVの先駆けとなったのも、ビートルズです。1967年6月には、3億人が試聴した世界同時衛生中継番組「アワー・ワールド」に出演し、「愛こそはすべて」を披露しました。

解散を前にした1969年に再び「ゲット・バック・セッション」と言われる以前のビートルズの演奏形態に戻る(ゲット・バック)形で4人での演奏を行い、「レット・イット・ビー」を収録。そして、横断歩道を渡っているジャケットで有名な「アビーロード」を、最後に録音したアルバムとして発表し、1970年4月に解散。8年間のビートルズストーリーは幕を閉じました。

 

<2>ビートルズの魅力 

以下、私なりに、ビートルズの魅力をまとめさせていただきます。

 

○曲作りの魅力

ビートルズの曲は1曲2,3分のものがほとんどです。4人とも曲を書きます。

レノン=マッカートニーの曲が圧倒的に多いですが、ジョージの曲も名曲ぞろいです。リンゴの曲(ドント・パス・ミー・バイ/オクトパス・ガーデン)もすごくいい味出してます。

因みにジョンレノンが作曲しても、ポールマッカートニーが作曲しても、合作でも、表記はレノン=マッカートニーです。有名な曲では、「イエスタディ」や「ヘイ・ジュード」や「レット・イット・ビー」などはポールの作曲です。ポールとジョンの作曲したメロディを組み合わせて合作したものもあり、「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」「We Can Work It Out(恋を抱きしめよう)」などに見られるように、2人が作曲した異なるメロディの組み合わせは、途中で雰囲気がガラッと変わりながら、絶妙にマッチしています。

 

 

4人のソングライターが切磋琢磨して、さらに5人目のビートルズといわれる音楽プロデューサー、ジョージ・マーティンに見守られながら、完成した213曲には、駄作がありません。そして、1曲1曲の世界観に合わせて、誰が歌うか、どんなコーラスを入れるか、どの楽器を使うか、どんな風に弾くのか、試行錯誤の後、各曲の完成作品が仕上がっています。

解散後のソロ曲を聴くと、各メンバーの音楽の指向性の違いが明らかです。ポールは歌詞よりもメロディやアレンジを優先し、ジョンはメッセージ性のある歌詞で聴かせます。ビートルズでは各メンバーの強みが掛け合わされ、ジョージ・マーティンの力が加わり、唯一無二のビートルズ・サウンドとなります。

そして、そのわずか2,3分の中で、キャッチーでセンス溢れるメロディやアレンジやコーラスや歌が一体となって、各曲ごとに、ビートルズの音楽の世界が繰り広げられます。

 

○人柄の魅力

4人ともリバプール訛りのままで、飾らない上、発言は実に率直で、心を打たれます。物質的なものや既存の価値観に左右されないかっこよさがあります。多様な価値観が認められてきている今ですら、そう感じるのですから、60年代におけるビートルズの存在は自由を求める若者の象徴だったのではないかと思います。

私たちは時にお金や肩書きなど、表面的なものに左右されがちですが、ビートルズの価値基準はそういった物質的なものではなく、成功して富を得てからも、真に価値あるものを追求し続けます。

ポールの言葉に「We’re no more and no less..」(等身大以上でも以下でもない)というものがあったように思いますが、傲慢でなく、謙虚な中に自信もあり、持っているものを語らずして示す、ビートルズはそんな真のかっこよさの模範でもあります。

 

○歌とコーラスの魅力

ビートルズの声質は4人とも特徴的かつ異なっていて、とくに(鼻腔周囲に集音されて)鋭く響くジョンの声と、広く(鼻腔・副鼻腔に)響くスウィート・ボイスのポールの声は全く異なります。

ジョンが歌うか、ポールが歌うかで曲のイメージは全く変わります。

それをメンバー自身もよくわかっていて、曲のイメージに合わせて、この曲はだれがリード・ボーカルをとるのか、が決められます。

基本的には、自分が書いた曲は自分で歌う、というスタンスですが、例えばリンゴがリード・ボーカルの「イエロー・サブマリン」のように作曲者(レノン=マッカートニー)とボーカルが異なる場合もあります。

そして、ビートルズの最大の魅力の一つであるコーラスの美しさも歌の魅力として欠かせません。

コーラスの種類も実にいろいろです。コーラスラインの多彩さと、絶妙な使い方が大きな魅力です。

そしてポール・ジョン・ジョージの3人で同時にハモった時の声質の美しい融合、、についてはメジャー曲ではありませんが、「アビイ・ロード」に収録される「ビコーズ」を是非聴いていただければと思います。

 

(声質について、医学的観点も少し踏まえて補足をしてみたいと思います。

最近、美容外科・美容皮膚科などで医療的な処置によって病気を治すのではなく外見を変える、ということが広くビジネスになってきているようです。

あるいは運動や食事制限をしてダイエットをして外見を変えよう、というビジネスもあります。

どう捉えるか、は個々人に委ねられるとしても、少なくともそういったことが技術的に可能、ということなのだと思います。

では、外見ではなく、声を変える、ということは可能でしょうか?

声質というものは生まれつきのもので、男性の場合は声変わりがあって声域が低くなる変化はありますが、個々の声の特徴は生涯、その人特有のものです。発声のしくみや声質の違いについて、体を楽器のように考えて検討してみましょう。

肺からの空気が喉の奥にある声帯を振動させ、声のもとになる「音」が、口腔や鼻腔・副鼻腔と言われる頭蓋内の空洞に響く事によって、声は発せられています。例えば管弦楽器の場合、大きな楽器ほど、低い音が出るように、響かせる空間の違いでも音は変わります。少し飛躍してしまいますが、個々人によって声を響かせる頭蓋内の空間の形態の違いがその人特有の声質に影響しています。そう考えると、声質というのは簡単に変えられるものではなさそうです。

本題に戻ると、とくにロック・ポップの歌において歌う人の生まれ持った声質が特徴的であり、かつ曲のイメージに合っている事は大変貴重です。)

 

○演奏の魅力

ビートルズは、演奏が上手いです。それは、デビュー前に連日キャバン・クラブなどで演奏を重ねていた下積み時代があるから、ということもありますが、ビートルズに限らず、昔の時代のアーティストは今よりもずっと厳しい技術的な環境下で演奏をしていたことも理由に挙げられるかと推測します。

音楽というものは演奏によって音が空気を振動させて感動を与えますが、演奏するだけでは音はどこかに消えてしまいます。

芸術作品として残る音楽という媒体は、「オーディオ・データ」であり、データの制作過程にはその時代の科学技術の進歩が大きく影響してきました。

技術が進歩した現代では、音楽データはパソコンのソフトを使用して制作され、リズムや音程や音量も簡単に修正することが可能です。

歌に関する加工も可能で、その人の声のまま、音程を修正できます。

また、1曲通して録音しなくても、一小節ずつ録音してつなげることも可能です。

全ての楽器を同時に演奏して録音(一発録り)するのではなく、それぞれのパートで別々に録音して合わせるのが一般的です。音や声に対して、色々なエフェクトをかけることも幅広く行う事ができます。(同じ音でもエフェクトのかけ方ひとつで、聞こえ方は全く変わってきます)

そんな高度な技術は、当然ビートルズの時代にはありませんでした。想像すらもつかなかったかもしれません。

1963年に発売されたビートルズの最初のアルバム「Please Please Me」は、わずか10時間で収録曲のほとんどを一発録りしたと言われます。まさにビートルズのその時の演奏がそのまま、録音され、CDになっているのです。

一発録りの緊張感の中でのビートルズの初々しい「Please Please Me」をそういった視点で、是非あらためて聴いてみていただければと思います。

○アレンジ・アイディアの魅力

ファッションや髪型のアレンジ、フラワーアレンジメント、、色々なアレンジがありますが音楽におけるアレンジとは何でしょうか。

音楽におけるクレジットには、よく作詞・作曲・編曲とありますが、アレンジは主に編曲にあたる部分です。

ひとつの曲にはその曲のメロディーがあります。もとになるメロディーなど曲の中心(曲の存在とも言えるかもしれません)をつくるのは作曲です。

ではその曲をどう生かすのか?どう聞かせるのか?どんな作品にするのか?

について決めるのはアレンジになります。

例えば同じ曲を弾き語りにするのかバンドの演奏にするのか、でも全然違いますし、バンドだとしても、ギターやベースやキーボードはどんな音色にするのか、どんなフレーズを弾くのか、ドラムはどんな風に叩くか、あるいは効果音を入れたり、管弦楽器の音を入れたり、何でもできるわけで、同じ曲でもアレンジは無限大に存在しうると言えます。

その中で、その曲のイメージを定めて、そのイメージに合った楽器を用いて、各楽器の弾き方を決めて、その曲の完成作品としてのアレンジをする作業、そしてそれを録音して音源に編集する作業は編曲です。

本題に戻りますと、、ビートルズのアレンジは実に多彩で完成度の高いものです。その曲のイメージに合う楽器や音なら、リコーダーでもオーケストラでも、インドの民族楽器でも、雑踏のざわめき声でも鳥の鳴き声でも、、何でも取り入れて的確に使用する音を採用します。あるいは、よりテクニカルな楽器のフレーズが合う曲があれば、メンバー以外のプレイヤーも受け入れます。「ドント・レット・ミー・ダウン」や「ゲット・バック」などの鍵盤はビリー・プレストンに、「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」のギター・ソロはエリック・クラプトンに任せています。

ビートルズのアレンジは、どの音のタイミングも音色も曲のイメージにどんぴしゃりです。

それはメンバーのアイディアや発想力と、それをうまく引き出してまとめるジョージ・マーティンの力と、両方が不可欠であったのだと思います。

ビートルズの曲は何回聞いても、「あれ?こんなところにこんな音が。。!」という発見があったりします。その度に、ビートルズの事細かいセンスの深さには驚かされます。

 

 

◯ファッションの魅力

ビートルズはデビュー前はジーンズに革ジャンで演奏していましたが、ビートルズのマネージャーのブライアン・エプスタインが、スーツにネクタイを着用させ演奏後に一礼をさせるという、初期のビートルズのスタイルで礼節あるイメージ作りをしました。

時々、一昔前のファッションや髪型を見ると、その時代にはかっこよかったのに、トレンドが変化して今現在には受け入れがたいセンス、、となってしまうこともありますが、ビートルズや60年代のファッションや髪型は、現代の感覚でも許容され、ビートルズ初期のマッシュルームカットもブーツもスーツも、あるいは中期以降のサイケデリックな色使いも今でもひとつのファッションとして受け入れられています。

 

最後にまとめとして、、

○なぜ、ビートルズが奇跡的で唯一無二なのか。。

・世界的アイドルかつ歴史的アーティスト

・駄作がない

・4人とも主役になれる。4人とも歌い、曲を書く。

・ロック・ポップソングの華となるボーカルが曲ごとに変わる。

・変幻自在な演奏スタイル(ポールはギターもベースもピアノもドラムもできる。)

・飾らない人柄の魅力

・アレンジ・アイディアの豊富さ

・様々な現代の常識の先駆けとなった(野球場での演奏・プロモーションビデオ・コンセプトアルバム等..)

こんなことが全てそろうのは、空前絶後なのではないでしょうか。。

 

(コンセプト・アルバムとはアルバム全体で一つのテーマに沿って仕上げられたアルバムのことで、8作目のアルバムである1967年の「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」ではアルバム全体が「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」という架空のバンドの演奏曲として収録されています。アルバムの中でビートルズ自身が架空のバンドを演じており、ジャケットは過去の(ファンに囲まれコンサートを行っていた初期の時代の)ビートルズを埋葬する葬儀に、多くの著名人が参列しているデザインで仕上がっています。)

 

以上、私なりに感じたビートルズの魅力について、お伝えをさせていただきました。

<3>今回選んだ曲の紹介:Beatlesリラックス10曲セレクション

そんなわけで、一人のファンとしての思いも込めながら、

今回私が選んだリラックスに選んだ10曲をご紹介いたしましょう。

[Beatlesリラックス10曲セレクション]

[1]Michelle「ミッシェル」

1965年発売の6作目のアルバム「ラバー・ソウル」7曲目に収録されています。

レノン=マッカートニーの作品でリード・ボーカルはポール。ビートルズの曲で唯一歌詞にフランス語が含まれ、メロディ・ラインもシャンソンに似ているとされます。

特にポールの声色は曲によって様々に変化しますが、この曲では強めで太い声で歌っています。

(私が勤務する認知症専門老人保健施設で、布団の横にビートルズの写真を飾っている女性の利用者さんがいます。「何の曲が好きなの?」と聞くと、「ミッシェル」と言っていました。)

[2]Norwegian Wood(This Bird Has Flown)「ノルウェーの森」

こちらも「ラバーソウル」(2曲目)に収録されるレノン=マッカートニーの作品で、リード・ボーカルはジョンです。シタールはジョージが演奏しています。

イントロ・アウトロのみ、シタールの音色を入れて編曲してみました。

[3]Black Bird「ブラック・バード」

1968年の「ザ・ビートルズ」(通称ホワイトアルバム・2枚組)の1枚目LPのB面3曲目(CDでは11曲目)の曲です。曲のイメージに合わせて声色を変えるポールが、この曲では脚色をつけない「そのまま」の声で歌います。

この曲はアコースティック・ギターの曲ですが、ピアノでカバーしてみました。

コード進行が複雑で、一音ごとにコードが切り替わっていきます。

コードの流れは音が半音ずつ上がって行き、また下がって行くラインがあります。

空を飛ぶことを学んでいるブラック・バードが、飛べそうで、飛べない..でももう飛べそうだ(最後には、きっと飛べた..)という様子をコード進行でも表現しているように感じます。

ビートルズの曲では、歌詞の中で、実社会の様々な比喩が使われている場合が多くあります。この曲は、ポールの意図では、「黒人女性の人権解放について歌った」ということです。

[4]Strawberry Fields Forever「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」

1967年の14枚目のオリジナル・シングル曲です。「ペニー・レイン」とともに、両A面シングルとなっています。両曲とも、1967年のアルバム「マジカル・ミステリー・ツアー」に収録されています。

「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」はジョンが、「ペニー・レイン」はポールが、故郷のリバプールにまつわる場所を曲にしました。

「ストロベリー・フィールド」は、リバプール郊外にある、戦争孤児院で、現在は閉鎖されています。

イントロ部分に使われるフワフワした感じの特徴的な音色の楽器は「メロトロン」と言われる鍵盤楽器でポールが弾いていますが、当時の最新のテクノロジーを取り入れた背景があったそうです。

この曲もイントロのみ、メロトロンを意識して音色を変えて編曲してみました。

 

[5]Something

今回の10曲の中では、唯一ジョージ・ハリスンの作品です。リード・ボーカルもジョージです。ジョージの作品でビートルズのシングルA面となった唯一の曲で、

1969年に発表されたビートルズが最後に録音したアルバム「アビイ・ロード」の2曲目に収録されています。ビートルズの中でもジョン・ポールともにこの曲を大変評価しているそうです。

ジョージは歌もギターもとても味のある演奏をします。

カバーに際しては、味のあるギター・ソロを意識して、、ギター・ソロの部分だけはギターの音色で編曲してみました。

 

 [6]Here There And Everywhere

1966年のアルバム「リボルバー」に収録されるポールの曲です。

ポールの自信作ともされており、ジョンも「リボルバーの中で一番好きな曲」と語っていたそうです。ビートルズ自身も誇りをもつメロディ・ラインを、お楽しみください。

[7]If I fell「恋におちたら」

1964年のアルバム「A Hard Day’s Night」(ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!)に収録される、レノン=マッカートニーの曲です。イントロなしで、ジョンのボーカルで始まり、出だしの部分を除いて、ジョンとボールが2人でハモったり、ユニゾンしたりして歌います。同じ歌詞でハモっていますが、ハモりのラインは2人のメロディが上下に同じように動く訳ではなく、一筋縄ではいかない絶妙さがあります。カバーでは、ハモりのラインをピアノでも強調してみました。

 

[8]For No One「フォー・ノー・ワン」

Here There And Everywhereと同様に、1966年のアルバム「リボルバー」に収録されるポールの曲です。こちらもジョンが「ポールの曲で一番好きな曲のひとつ」と絶賛するほどの、ポールのセンス溢れる曲ですが、レコーディングはポールとリンゴとフレンチ・ホルンのソロ奏者の3人で行ったそうです。後の「ホワイトアルバム」ではより顕著な特徴となっていきますが、このあたりからも、ビートルズの曲だからといっていつも4人がみんなで演奏しているわけではなく、曲のアレンジに必要がなければ参加しない、曲の音作りやイメージ優先の姿勢が伺えます。アレンジ面ではピアノが全面的に使われ、4分打ちでズン(左手)・チャッ・チャッ・

チャー(右手)というコードの弾き方が特徴的です。今回の編曲では、ホルンでのソロ部分のみ、リコーダーの音色で合わせてみました。

[9]And I love Her

If I fell「恋におちたら」同様に、1964年のアルバム「A Hard Day’s Night」(ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!)に収録される、レノン=マッカートニーの曲です。実質的にはポールの曲で、演奏時もこの曲ではポールが真ん中に立って主役となります。リンゴが叩いているのは、ドラムセットではなく、ボンゴとクラベスです。曲調のバラエティ豊富なビートルズの曲ですが、誰もが知っている曲..となるとやはり「イエスタデー」とか「レット・イット・ビー」「ヘイ・ジュード」など、ポールのバラード系の曲があがることが多いです。この「And I Love Her」は、「イエスタデー」よりももっと前のビートルズ初期の時代に、ポールが書いたバラードです。

[10]Yesterday

最後は言わずと知れた名曲、「イエスタデー」です。1965年のアルバム「ヘルプ」に収録されています。

この曲は実質はポールが単独でかいた作品で、ポールが夢の中で浮かんだメロディをもとにコードを探り、完成させたそうです。

ビートルズのコンサートでも、「イエスタデー」は一度他の3人はステージ脇にはけて、ポールがアコースティックギター弾き語りで演奏しています。

中後期以降のビートルズの曲はアレンジがより多彩化しますが、「ヘルプ」までは、ライブでも再現可能な、4人のバンドスタイルでの演奏をもとにした曲がほとんどで、この「イエスタデー」で始めて弦楽四重奏を取り入れました。

この曲をきっかけに、若者の文化だったビートルズの音楽が、広く一般に評価され受け入れられるようになったと言われています。

 

○リラックスカバーアレンジに際して

これまで書かせていただいたようなビートルズサウンドの魅力の中で、

ピアノのカバーアレンジで再現できることはごく一部です。

しかしここで、たくさんあるビートルズの音楽の魅力でもっとも不可欠なものは何か、、考えてみると、素晴らしいアレンジは洗練されたメロディがあって初めて加えられるものであることに気づきます。

そこで、主旋律がよく聞こえるシンプルな流れにしながら、その曲の要となるアレンジはできるだけ再現する形で、鍵盤で可能な範囲で、カバーしてみました。

編曲にあたっては、主旋律を3オクターブに分けてユニゾンさせ、聞き取りやすくしました。また、曲によってはイントロやソロでの特徴的な音色に関しては、ピアノ以外の音色も含めて再現してみました。

また、テンポに関しては、曲の雰囲気を保つため、原曲に近い形で再現しています。

そのため選曲に際しては、リラックスのためのテンポということで、ミドルテンポの楽曲の中から、比較的知名度が高いものを選びました。

改めて、ビートルズの曲の核となるメロディを聴いたり、あっさりしたアレンジのBGMとして流したいときなどに、ご活用いただければ幸いです。

 

<4>あとがき

○いい曲・素晴らしい音楽とは

もちろん、音楽には正解はありません。好みは多様な上、変化もします。

では普遍的に、良い音楽とは、どのように証明されるのでしょうか。

ひとつの考え方ですが、私は長い時間をかけて証明されるものなのではないかと思っています。

好きで聴いていた曲ならばどんなものであっても、遠い将来でも、昔好きだった曲として一人一人の記憶に残ります。

それはとても大切なことで、私が認知症専門老人保健施設で研究を行っているPersonalized Music Listening(PML) という個々人の思い出の曲で認知症の症状改善を試みる方法でも、一人一人の好みに合わせた個別の音楽であるほど、効果は高いとされています。

しかし一方で、ある曲を音楽の歴史の中での一つの作品、として見た時に、50年後、100年後..にも多くの人にコンスタントに聞き継がれ、影響を与え続けることができる曲はどれほどあるでしょうか。その長い時間の中では、おそらく、その時代限りのトレンドや小手先の細工は、淘汰されてしまいます。

真に聞き継がれる価値がある作品だけが残っていきます。

ビートルズは解散後48年たった今も、多くの人に影響を与え続け、評価され続けています。

その意味で、改めて真に価値があるビートルズの音楽に触れることは、決して無駄ではないでしょう。

 

以上、ビートルズについて私なりの考えを、述べさせていただきました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

 

Dr.ChikaのBGMカテゴリの最新記事